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 これだ。こいつは俺のことをわかっちゃいない。もう二十年以上の付き合いがあるはずなんだが、例え俺が敵対してる組織の人間だとしてもヒラは殺せとは命令しないだろう。どうしてか。友達だからだ。食って掛かろうとしたらまだ続けた。


「二人を殺した動画。実に見事だったわ。本当に。でも、だからこそ、余計に怪しいのよ。あなたは部屋の前にいた二人に気づいていたんじゃないの?」


「……そりゃ、あれだ。勘で気づいたんだよ」


 本当に勘だ。俺は勘で攻撃し、勘で避ける。勘で銃の狙いも定めるし、鞭を動かすのも勘だ。咄嗟に嘘がつけないのは俺の欠点だろうな。


 ズワイはまたさらに目を細めて俺を見た。あれ以上細める余地がまだあるらしい。今更上手い言い訳を思いつき、言ったところで通じないだろう。代わりに俺はズワイを睨み返した。嘘は言ってないって具合にな。また膠着があってズワイは「わかった」と言った。どうやら通じたらしい。だが、その代わりに奴はこうも言った。


「出航は許可するわ。ただし条件がある。あなたの後ろにいるフォーミュラピンク、いいえ、フォーミュラレンジャーを連れて行きなさい。あなたの監視役兼あなたの護衛役」


「はあ? 護衛なんかいらない」


「じゃあ、あなたが彼女らを護衛して。外惑星研修って名目しとくから」


 俺は後ろを向いて、行き場の無い憎悪と向き合った。こいつと一緒に旅をした日には俺が撃ち殺される未来しか見えない。しかも後三人もいる。


「言っとくけど、彼女らの自制心はざっとあなたの三倍はあるわよ。安心することね」


 安心なんかできやしない。


続く

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