1-29


 後ろから奇襲をかけるのは比較的簡単だった。ただ、もう被害は多くに渡っていて、居住区エリアは火の海かつ死体の山になっていた。女と老人と、子供。流石にこの時は吐き気を催した。奇襲の途中、奴らの死に掛けの一人が俺に助けを求めてきた。俺は報復の様にそいつを撃ち抜き、最後の一人まで生かしちゃおかなかった。この居住区にはレンジャーの家族がいた。レンジャーの親族は敵対組織に狙われる。だから、ここに隔離していた。ここの住民たちはみんな優しく、身の内にある優しい正義を信じていた。偏屈な爺さんもいたが、概ね、暴力と強さの違いを理解している人達だった。


 俺は思ったね。つくづくレンジャーは、クソさ。


 このヨシキリ襲撃事件はこうして幕を閉じた。ああ、思い出したくない光景が浮かんできやがる。家族の死は到底乗り越えられるものじゃない。泣き叫び、すすり泣き、声を出さずに涙を流し、慰めに互いを抱いた。そんなことじゃ悲しみは癒えるわけもない。しかも、この事件は決して公表されなかった。銀河を守るヒーローが、その家族を敵性勢力の手で失った。こんなことを言える組織は恐らく存在しないだろう。


 外っつらには新兵器の暴発だと発表した。


 俺はどうなったかといえば、俺がマドゥーム兵を殺すところが監視カメラにバッチリだったってことと、生き残った住民の証言で無罪放免になった。疑いは残ったが。艦長の執務室にはカメラが無く、誰がヒラを殺したのかは知る由もない。あのフォーミラレッドを殺したのもだ。だが、そんなことをして逃げない奴はいないってことと、逃げる足を自分から壊す奴はいないってことが決め手になった。


 俺は自分の部屋でベッドに横になり、ヒラが残したデータパッドを自分の端末に差し込んだ。



                                  続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る