1-6

 それで……ああ、まだ本題に入れない。ATG(アフェクションシンキングギャラクティカ)が銀河系の殆どでレンジャー網を構築した頃、大戦が起こった最初の惑星ノラである事件が起こった。それは当時のレンジャー、「フォーミラレンジャー」の一人、レッドが殺されたことだった。誰にって? そりゃあ、奴、正確には奴の土人形にだ。土人形はまだ経験が幼いレッドを殺害した。しかも上半身と下半身を永久にバイバイさせてな。おまけに伸び出た腸を弄って俺が着いた時にゃ腸で蝶々結びと洒落込んでいやがった。ま、そいつは対処法を知ってる俺が倒したんだが。現場は辺り一面血の海でかなり凄惨だった。足の踏み場もないくらいにな。


 俺は若い血を踏み散らしながら土人形と戦う羽目になった。土人形は乾いた腕を血に濡らして俺を捉え、可哀想なレッドの様に引き千切ろうとしてきた。俺はデジリボルバー(※(1))を抜き、口径を四四から五〇に変えた。で、二、三発撃ちながら牽制してみた。腕の体表が何枚か禿げたがそれだけで有効な攻撃にはならない。そこで俺は腰からアーキテクトウィップ(※(2))を取り出した。奴の動きはかなり遅いからウィップを巻きつけるのは至極簡単なことだった。そこから奴の体を上下左右におもちゃみたく揺らしまくり何度か壁に叩きつけた。動けなくなるまでな。


「くたばれ。この野郎」


 俺は静かな怒りを覚えていた。若い青年だぞ。どれだけ捻くれていようと育て甲斐は十二分にあるはずだったんだ。もう動かないのを確認してウィップを解き、……解かなきゃよかった。次の瞬間、俺は土野郎にあえなく捕まっていた。



  で、立派なモノを持った下半身が無くなって機械仕掛けの水飲み鳥になったのかって? いや、もちろんまだある。


                                  続く



 ※(1)デジリボルバー=口径を二二から五〇まで自由自在に変更可能な可変金属(モブメタル)を使用した特殊回転式拳銃。荒久佐の愛銃。常に二丁持ってる。


 ※(2)アーキテクトウィップ=誰も知らない惑星ノヴ(ノヴァじゃない)より回収した鞭。使用者に反応して自由自在に動く。最大九〇〇kgまでなら持ち上げられる。リボルバーと同じく荒久佐が愛用している。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る