非常に魅力的な作品

この物語には、残酷、不条理、非共感的な展開が少なくありません。ですが、もしそれが嫌いでない方々には、自信を持っておすすめできる非常に面白い作品です。


この作品は、タグの通りダークファンタジーというジャンルですが、通常のダークファンタジーとは少し趣きが異なっています。

所謂ダークファンタジー作品では、主人公たちが立ち向かう困難や敵が(、ダークでないファンタジー作品に比べて)、とても残酷で、不条理で、悲劇的であることによってその世界観がダークなものになっていることが多いと思います。
しかし、この作品において不条理や残酷として機能しているものは、敵というよりもむしろ主人公となっています。

そしてここで、タグの通りの群像劇という形式が、興味深く活用されています。
この作品には、話の視点人物になったことがある人物が非常に多く、そして理不尽に死ぬ又は悲劇に見舞われるということも少なくありません。これがいわば不条理文学のように気味の悪さやブラックユーモアを演出しているのです。

また、複数主人公による短編集のような形でない場合、複数の視点人物を立てる群像劇では、人物というよりもむしろ起こった事件が「主人公」という言い方をされることがありますが、前述の通りこの作品における理不尽な事件とは、大抵主人公によるものなので、群像劇という形式をとりつつも、主人公をただの一視点人物ではなく唯一の主人公たらしめる効果があるように思えます。

ところでこの作品は、非常に強烈なダークさを持っている一方で、ファンタジーについてもまた魅力的な世界観を持っています。詳しくはネタバレになってしまうので控えますが、ファンタジーの世界といえど、(731話現在、)不可解で謎に満ちた様々な要素があります。これが今後どう明かされていくのか非常に楽しみです!

登場人物たちもまた、とても魅力的です。
上手いなと強く思うのは、700話超えの長い作品において彼らの成長や変化がきちんと分かるというところです。そしてまた、その変化の仕方や理由によって読み手がその人物を理解することを手助けしてくれます。それで彼らがより魅力的に感じられてしまいます。


非常におすすめな作品です。

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