第12話 拠点を襲ってきた

 任務を終えて王都の近くまで帰ってきた時、街のあちこちで黒煙が上がっているのを発見した僕は、後輩たちを引き連れて急いで戦乙女クランの拠点へと戻った。


「ま、待って下さいギル様、ハァハァ……」

「皆、早く!」


 ついてくるのに精一杯な後輩達を急かしながら、王都に入った。大通りを駆け抜けながら街の中を観察してみると、建物が燃えていたり市民が混乱している様子が見えた。


 街の中心部に進むにつれて、場所や建物が荒れていっているように見える。外から襲撃を受けたというよりも、中から襲撃者が溢れ出てきたような感じだった。


 とりあえず、拠点に戻って事情を調べないと。


「ギル! こっちだよ!」


 戦乙女クランの拠点に戻ってきた時、建物の前に居たティナの呼ぶ声に気付いて、彼女に近寄っていく。


 拠点の出入り口付近で武装をして、周りを警戒していたティナ。出入り口付近にはティナ以外にも、武装をして拠点の建物を守っているように見えるクランメンバーが居た。攻撃されるのを厳重警戒している、という感じだ。


 まるで、拠点内に侵入してくる者を拒む様に、ギルドメンバーを立たせて拠点を防衛しているかのような感じでだった。


 しかも、拠点の出入り口の付近には武装をして倒れた男たちが山積みになっていた。わずかに呻く声や身じろぎしているのが見えたので、死体ではないようだった。けれど、あれは何だろうか。


「ティナ、無事かい? 何があったの?」


 僕が走り寄りながら、ティナに向かって呼びかける。ティナは手を降って、反応を返してくれた。


「ギル、任務から戻ってきたんだね。もう気付いてると思うけれど、ちょっと問題が起きててね」

「あぁ。帰ってくる途中に、街の中の様子を見た。建物が燃えていて、煙が上がってるのを見かけたよ」


 やはり街の中で何かが起きているようだった。しかしティナは、辺りを警戒しつつ何時も通りのテンションという感じで、今は慌てた様子が無かった。もしかしたら、既に問題というのは解決された後なのだろうか、と僕は予想する。


「っと、その前に。任務に行っていた皆は、先に中に入って休んでおいで。ティナ、この娘達は先に休憩させても大丈夫かな?」

「あぁ、うん。多分、今の所は拠点の防衛は大丈夫だから、任務遂行で疲れたのなら休んでも問題ないと思うよ。拠点の中は安全だから」


 そう言って私達は、任務で外出していた後輩達に休むよう指示した。だが、彼女達はジッと私の表情を見返してきて、こう言った。


「ハァ、ハァ……い、いえ! 私達もティナ様とギル様を手伝います」

「「「っ、がんばります!」」」


 息を切らしながらも、強い意志を持って手伝いを申し出てくれる後輩達。しかし、疲れているのが見て分かるぐらいに彼女たちは疲労していた。街の中で上がっている黒煙を目撃して急いで拠点に僕が走って戻ってきたから、その後を必死についてきたからだろうな。


「ありがとう。でも今は一旦、休憩を取ってから万全の態勢で戦えるようにしておいて」

「そうだね。拠点の防衛は他のクランメンバーに任せて、君たちは休んでおいで」


 ティナの様子を見てみると、そんなに慌てるような事態じゃないことが判明した。だから彼女たちには戦いに備えるために休むように言う。


「……はい、わかりました」

「私達は、休ませてもらいます」

「次の機会に、必ず役立ちます!」

「ティナ様とギル様も無理をなさらないように」


 僕の指示に渋々だが素直に従って、彼女たちはお疲れ様ですと言って拠点の中へと戻っていった。


 疲れているだろうからと思って、先に帰らせた後輩達を見送る。ティナと僕の2人は拠点の出入り口付近に並んで立ち、会話が再開される。


「それで、一体何が起こったんだい?」

「実は、フレーダーマウスのクランの奴らが私達の拠点を襲ってきたんだよ」


 ティナの口から出てきた言葉に、僕は耳を疑った。


「フレーダーマウスの奴らが!?」

「うん」


 まさか、そんな事があったのかという思いと、やっぱりという考えがあった。

 ティナ達が拠点の出入り口付近で警戒していたのは、襲撃があったからだろうと僕は予想していたが、その考えは当たっていたようだ。だが、まさかフレーダーマウスのクランが、そんな直接的な手段を取るとは思わなかった。


 少し前に、クラン会合であった出来事。フレーダーマウスとドラゴンバスターの、2つのクランが戦乙女クランを侮蔑したような言葉を口にしたり、憎々しげに視線を向けてきていた事から妬む気持ちを向けられている事には気付いていた。


 それに、戦乙女クランのマスターであるレオノールから挑発され、退かされていた事も思い出す。しかしまさか、拠点を襲撃してくるという荒っぽいやり方で報復してくるとは思いもしなかった。

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