スーパーヒーローになりたくて

Karasumaru

第1話 僕はスーパーヒーローさ

いじめられっ子が特殊な能力を得て、バッタバッタと悪者を倒し、今まで見向きもされなかった可愛い女の子と付き合うことに成功!


よくあるスーパーヒーロー映画の展開だ。


しかし、スーパーヒーロー稼業の現実は厳しい。


なぜそんなことが言えるのかって?


それは、僕がスーパーヒーローだからだ。


名前を教えろ?どんな能力を持ってるのか?


それは追々説明していこう。


まずは、何がきっかけでスーパーヒーローになったのかを知ってもらいたい。


時計の針を1年前に戻す。


僕はどうしようもない高校生だった。。。


そう、スーパーヒーローとは程遠い、ダメな男だった。


小柄で内気で痩せていて、運動能力は皆無。女子からは総スカン。クラスメートからは空気扱い。教師のストレスのはけ口。


スーパーヒーローどころか、普通の高校生としてもモテる要素ゼロ。。。


しかし、本当だろうか?


本当に当時の僕はスーパーヒーローになる要素が全く無かっただろうか?


そんなことはない。


小さくて、痩せていて、目立たない存在だからこそ、僕はスーパーヒーローになれたんだ。


だから、もし君が、周りと比べて色々な面で劣ると思っていても心配する必要はない。


僕だってスーパーヒーローになれたんだ。


君だって、もし、なりたければ、スーパーヒーローになれるはずだ。


おっと、脱線してしまったな。本題に戻ろう。


つまり、僕は弱者だからこそスーパーヒーローになれたんだ。


考えてもらいたい。筋骨隆々のラガーマンが、女子が三人がかりでも持ち上がらない物を持ち上げたって、そんなに驚くことではないよね。


逆に僕みたいに身長百六十五センチのもやしっ子が、女子にもてはやされている筋骨隆々の男をお嬢様抱っこしたらどうだい?


スゴイだろ。


何?いまいちピンとこないって?


分かった。それならもう一つ例を挙げよう。


公園で小さな子が風船で遊んでいたとする。


強風が吹いて、風船が子供の手を離れてしまったとする。


大泣きする子供。お母さんが思い切りジャンプしても風船にはカスリもしない。


そこに身長百八十センチを超えるモデルみたいな男が颯爽と表れ、背伸びすらせずに風船をつかむ。


大喜びする親子。


感謝される長身の男。


背の高い連中が密かに憧れるシチュエーションだ。


確かに格好いい。正直羨ましい。


しかし、格好いいけど、すごくはない。背が高いのだから、高いところに手が届くのは普通だ。


すごくなければスーパーヒーローではない。


しかし、身長百六十五センチの僕が、先程説明した状況で登場し、身長百八十センチを超える長身の男の背中を垂直に駆け上がり、肩からジャンプして風船を掴んだらどうだろうか?


それは、もう、スゴイを通り越して、ヤバイはずだ。


そう、スーパーヒーローはある意味ヤバイやつなんだ。


世間でモテる高身長の男や彫刻のような筋肉を持つ男どもは、よくてもヒーローにしかなれない。


しかし、僕はどうだ?僕はチビでヤセでネクラだ。そんな僕が、不良どもを次々となぎ倒していったら、どんだけ凄いだろうか?


もう、それはヒーローの域を超えている。だからスーパーヒーローなのだ。


もともと優れている連中と同じことをしても、僕は余計すごく見えてしまう。


それが、僕がスーパーヒーローたる所以だ。


それでは、僕はどのようにしてスーパーヒーローになったのだろうか?


「日々の鍛錬のおかげに決まってるだろ!」

と言ったら、メチャクチャ格好いいだろう。


しかし、実際に僕がスーパーヒーローになったのは、ある「おっさん」との出会いがきっかけであった。


そのオッサンは自らをオッサンと名乗った。


だから、僕もこのおっさんをオッサンと呼ぶことにした。






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