第29話 療育教室の終わりが近づいてくる。。

4月から9月までの半年間の市の療育センターの外来療育教室もあと1ヶ月で終わりという頃……


10組の親子はもうすぐ この発達支援が終わるという心細い現実と向き合い始める。

全く見ず知らずのあちこちから集まった親子。。

最初は、みんなどんな悩みを抱えてるんだろう?と、探り合いのような感じだったのが、いつしか周りの誰よりもお互いの悩みを分かり合える同士のような…大切な友になっていた。

週にたった1度の頻度だったけど、その1度を待ち遠しい気持ちでいつも集まりあった。


だからと言って、毎回そんなにゆっくり話せる時間なんてなかった。

だって、親は研修や個別の懇談などでそれぞれが忙しく時間を過ごしていたから。。

でも、その僅かの時間でしっかり交流し、来週再会することを約束して毎回 帰る。

僅かの時間だったからこそ濃いかった。


ねぇ、教室が終わったらみんなどうする?

保育園?無理だよね……

幼稚園…もっと無理だよね……

寂しいね、会えなくなるね…

…………

学校区とかじゃないから、それぞれの家が距離的に離れているし、会いやすい状態ではないもんね。

…………



とても寂しいけど、そんなこれから先の事をお互い考え始めていた。


今が精一杯で、今日を乗り切ることが精一杯だった私たち。。

独特な子育ての悩みを持つ私たちの気持ちを 本当に分かってくれる人なんていなくて…

周りからはいつも躾が出来てないとか、親は何をしてるんだ……という白い目で見られるばかりで……

「すみません、ごめんなさい」と1日に何回も頭を下げて……。

心身共にクタクタで、心に余裕の無かった私たち。


そんな私たちが 今はみんなで一緒にお互いの子どものこれから先を真剣に考え合った。

自分1人ではなく、みんなと一緒に。。


今は、自分はもう1人なんかじゃないんだ。

友達もいるし、相談にのって、助けてくらる先生だっている。。


それを実感できたことは みんなの大きな力になっていた。


「親子」の療育教室。

親と子ども、2人を支援しなくてはいけない意味がよく分かった。


子育ての主役はお母さんなんだ。。


お母さん、あるいはお父さんが元気にならなくては 良い子育てはできないものね。

そしてそれは、子どもに 発送障害があるとかないとか、そんな事は関係ないよね。


どんな子育てにも言える事なんだよね。


少なくとも、、あの教室で出会った仲間は、みんなそこに気づいた。



そして、あるひとつの案が浮かび……

みんなで、それを行動に移してみようと計画を練り始めた。


ヒソヒソ…ヒソヒソ……。


10人のお母さんたちは、最後の日に向けて ひたすら策を練り始めた。


ヒソヒソ……ヒソヒソ……。










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