part7 えるとガブのサバイバル生活


「えるちゃん元気になった?」

「うん」

「動けそう?」

「動けるよ」

「じゃあこれより、サバイバルを開始したいと思います」


 おー! とガブちゃん。

 おー。 とあたし。


「こほん」

 とガブちゃんはあらためるように咳払い。「サバイバルに必要なのは『水』『食料』『火』『基地』……この四つです」

「うん」

「いちばん大切なのは『水』ですが、ココナッツが取れるのでしばらくはなんとかなりそうです」

「せやね」

 ……急にまじめやな。

「えるちゃん、この島に来てから雨降ったことある?」

「一回もないかな」

「ふむふむ。じゃあ雨で身体が濡れてしまうリスクと焚火が消されてしまうリスクは少なそうなので、『基地』作りについては今のところ優先度が低めということになります」

「なるほど」

「なので、今日の目標としては『火』を確保することと、『食料』を手に入れることになると思われるのですが——えるちゃん隊員としてはいかがでしょうか!」ピシッ。

「それで問題ないと思われます! ガブちゃん隊長!」ピシッ。

「あ、そうだ」

 とガブちゃん。

「どうしたん?」

 とあたし。

「先に必要な道具を手に入れちゃおう」

「道具?」


 あたしとえるちゃんの二人は海岸沿いを歩きました。ガブちゃんは何かを探しているようすでしたが、しばらく歩いていると、「あ」と言って何かを拾い上げました。

 貝殻です。

 二枚貝の一種で、形としてはムール貝的な楕円形をしています。でもサイズ的にはムール貝よりも断然大きく、縦の長さは十五センチくらいはあるでしょうか——あたしの手のひらよりも大きいです。外側は牡蠣のようにごつごつした見た目ですが、中は真珠できたミラーボールのように複雑な光りの反射の仕方をしています。

「それどうすんの?」

「当然、割るっ」

 と言ってガブちゃんは——何が「当然」なのかはわかりませんが——近くにあった岩のうえにその貝殻を置き、手頃な岩で叩きました。「おりゃー!」……掛け声の気合いの入りかたのわりには遅い腕のスイングでしたが、それでも無事、貝殻はふたつに割れ、ガブちゃんはそのふたつの切断面をこんどはシャカシャカシャカシャカとしばらくの間こすり合わせて、あるタイミングで「できたー!」と言いました。

「何ができたん?」

「ナイフのぉー………………完、成、です!」

 とガブちゃんはため気味に宣言して、貝殻を見せてくれます。「星二つです!」

「おぉー」

 とあたしはそれを見て唸りました。

 貝殻の割れた部分が、物を切れそうなほど鋭く尖っているのです。これならばたしかにある程度の物なら切ることができそうです。

「えるちゃんに一個あげる」

「ありがとー」


 この〈貝殻のナイフ〉はその後、あらゆる場面で役立つことになりました。


     ***

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