7 白い壁

 二人はひたすら歩いた。不思議と空腹にはならなかった。


 歩き始めて2週間後、壁に突き当たった。


 出口がないか確かめるため、触ったり、叩いたりしてみたが、びくともせず、壁づたいに右側へ歩いてみても、左側に歩いてみても、ただただ白く巨大な壁が続くばかりだった。


 康太郎は天井を見上げ叫んだ。

「ここから出してくれ!」

 康太郎は拳を握り締め、白い巨大な壁を殴り続けた。

 血が壁に着き、鈍い痛みが康太郎の拳に走った。


 2週間後、もはや康太郎の右手と前腕部は、原形をとどめていなかったが、ようやく小さなヒビが白い壁に入った。

 リアが涙で目を赤くして、頭を壁に打ち付けると、小さなヒビは、その筋を細く長く彼方まで伸ばしていった。


 轟音が響き渡り、ガラガラと壁は崩れ落ちた。


「現実が終わった。リアリティーが崩壊した」

「どういう意味?」

 リアが康太郎の呟きに質問した。

 康太郎は溜息をつくと、意味はないと答えた。


 二人の目の前には暗黒の空間が広がっていた。背後にはまだ白亜の空間が残っている。二人の目の前を境に、白い空間と黒い空間がはっきりと別れ、その境目もどこまで続いているのかわからない。


 二人は黒い空間へと足を踏み入れていった。

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