第8話 諦めの嘘と終わり無き無限土下座の物語

「何言っとるんや! 世界を救って話は嘘だったんか! 諦めとるやん!」

「それはごめん……タイムマシンで私の世界が修復出来たということは、貴方の世界も修復出来るからって思って」

「結局何も治っとらんやん! いずれ空は割れてワイの地球も滅ぶんやろ?」

「……提案があるのだけど」

「何や?」

「貴方確か一人暮らしだったでしょ? もしツルハシが望み、家族とかに未練がなければ地球が割れる前の時系列の時代に戻して上げるわ」

「何やて!?」

「そうすれば、地球が割れる前に貴方は寿命を全うする。ツルハシが言っていたマトリョーシカの地球と貴方は関係が無くなるわ。これが私達してあげられるお礼よ」


 結局、シャベル達の技術力を持ってしても地球が割れる現象は止められないということ。世界の理からは逃れられず、人類は各々の力で逃げるしかなかった。

 これがこのマトリョーシカの地球の真実だった。

 ツルハシはうつむき顔を伏せ、それにシャベルは申し訳ないとうっすら涙を浮かべた。


「ツルハシ、本当にごめんなさい。勝手に巻き込んで、しかも嘘までついてて本当に酷いことを……」

「そんなの構わへん。ならシャベルちゃん。ワイにええ考えがあるで」

「……え?」


 シャベルを含め彼女の家族は目を丸くする。


「タイムマシンはまた作れるんか? 作れるんなら、もっと昔に戻るんや!」

「もっと昔って?」

「ここの空が割れてるってことは、ここより上層世界があったんやろ? そこの人達にこのマトリョーシカの地球が起きないように協力してもらうんや!」

「あ、貴方馬鹿じゃないの!? 私達の高度な技術があって無理だったのよ!」

「でも、ここより上の階層の奴らは、もっと高度な技術があるんやろ。お願いしに行くんや!」


 そこまで言うと、シャベルが口ごもる。


「で、でも、私達より優れた存在ということは私達よりプライドが高いかもしれない……」

「何言っとるん! 皆命かかっとるんや! そんなんどうでもええわ!」

「でもでも! 真っ当な正論で馬鹿にされて、哀れみの目で私達の人種を差別されるなんて……私は耐えられない!」

「はぁ? 何アホなこと言っとるんや! まさか今までワイに言ったことは出来るけど、プライドが邪魔して、それをやらなかったか?」


 ツルハシがシャベル達を問いただすと、皆目を反らした。彼は思わず溜め息を漏らす。


「しゃあない、ワイが行ったる。はよタイムマシンを用意お願いするわ」

「い、行くって、貴方みたいなのが行ってどうするのよ!」

「世界の誰もがやらんからワイが交渉しに行ったる!」

「どうやって交渉するのよ! 対価を要求されたら貴方どうする気なの?」

「対価を求められたら知らん! 結局やることは変わらへんからな!」

「じゃあ、どうするのよ!」

「そんなん決まってるやろ」


 彼女の質問に、ツルハシはニヤリと笑いグッと親指を立てた。



「土下座や!」



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