第6話 思いやり。義理と人情のしょうもない裏話がいまここから始まる

「私達よりも下の階層、貴方よりも上の階層である第1第地底階層人の奴らにタイムマシンを作る協力をさせてあげようと、私が直々にお願いしてやったのに誰も相手にしない奴ばっかりだったわ」

「……何てお願いしたんや?」

「ちゃんと丁寧にお願いしたのよ? 貴方達の世界を救って欲しければ、這いつくばり私の足にキスをしながら頭を垂れなさい愚かな地底人の愚民ども! 私は天才発明家IQが5兆4……」

「なるほど、それはあかんわ」


 ツルハシは納得したように頷く。

 シャベルは納得出来ない様子で続ける。


「何でよ!」

「上から目線だからや。見ず知らずの奴からいきなり命令されたらそりゃ嫌やろ?」

「だって当然じゃない? 上の階層に住んでる人間の方が頭が良いからよ」

「何でや?」

「上層に行くほど歴史が長いってことよ。つまり技術も知識も発展し優れた存在であるの。つまり上位階層人である私に敬意を示し、崇め奉ることがーー」

「はぁ……それがダメなんやて」

「何よ! 文句あるの!」


 怒るシャベルにツルハシは答える。


「人っちゅーのは、人情の生き物や。傲慢な奴何かに誰も着いてこうへん。シャベルちゃうやて、自分より偉いって言っとる者が命令したらムカつくやろ?」

「……ムカつくわね」

「で、ちゃんとお願いするんが正解やな! 見栄繕ったハッタリなんかよりも自分の素直な気持ち。そして相手を尊重する思いやりが、一番大切なんやで!」


 ツルハシの言葉に呆然とするシャベル。

 しかし、彼女は気を取り直して反論する。


「そ、そんな絵空事を考えている生き物なんているわけないでしょ! 生物は利己的で自分の利益だけを追求するように出来てるのよ!」

「なら、ワイはそれに該当しないクールヒューマンってことやな!」


 グッと親指を立てニッと笑うツルハシ。

 困惑と呆れを混ぜ合わせた表情を浮かべるシャベルに彼は問いかける。


「そうやシャベルちゃん。聞きたかったんやけどさっき日本橋にっぽんばしであってるかって聞いとったやろ?」

「そ、そうよ! 確か大阪って場所の日本橋にっぽんばしでしょ? 貴方みたいな関西弁っていう特徴的な言葉遣いをする人類が住むエリア。そこで、私は自転車の大きい工場があるって調べて、貴方の所に着陸した訳よ! それが何だって言うの?」

「やっぱりな……そんじゃシャベルちゃん。今まで黙っててすまんかったけれど、着陸地点間違ったんやな」

「……へ?」


 間の抜けた声を上げるシャベル。

 ツルハシは続けた。


「ワイがいたあそこは大阪の日本橋にっぽんばしやないで、東京の日本橋にほんばしや!」

「……はぁ!? な、ななな何言ってるの!? 私が座標を間違えるなんてあり得ない! だ、だって貴方は関西弁を使っているじゃない!」

「ああ、これはワイが大阪に憧れて真似してるだけ何や。人はこれを西と言うんやで! あ、因みに僕はこうやって標準語もいけるので意味が解りづらかったりしたら、言って頂ければ対応致します。自分でも解らなくなったら標準語に切り替えさせて頂きます」

「!?……」


 混乱してシャベルの口の塞がらない。

 それを見たツルハシはグッと親指を立てニッと笑う。


「最初に必要な部品を聞いたのも大阪の場所を教える前にこっちである程度揃えてから行ってもらおうと思ったんやけど、意外にも全部揃っておったし、本当に作ってしもうたから、まあええかと思っていたんや。こんな所で話すことになって、すまんなシャベルちゃん」


 また硬直しながら震えるシャベル。


「じゃあ……貴方、それをわかってて私に協力したの?」

「せやで! 困ってる人を頬ってはおけへん! それがワイの家系のモットーや!」

「もう! 貴方って意味わからな過ぎ!」


 ツルハシは満面の笑みを浮かべ、シャベルも怒鳴りながらも連れて笑っていた。

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