えぴそーど2♡やばい場所

未来部?ミライブ?未来部……。

「未来部って、なに??」

これ、誰かのイタズラ?未来部なんて聞いた事もないし見た事もないよ。そもそも何をする部活?運動系?文化系?なんなの〜??

あまりのインパクトに目が回る。私はずり落ちた眼鏡を定位置に戻して、そのポスターにずいっと顔を近付けた。

「なになに……」


『✡お悩み相談募集!✡

人にはなかなか言えない悩みを抱えている人は多いんじゃないでしょうか?♪悩み多き思春期、友人関係、恋愛、上下関係、勉強、家庭の問題、なんでも未来部にご相談下さい☆親身になって話を聞き、責任を持って最後まで解決します☪︎

どんなに些細な悩みでも、まずは二階西側階段隣未来部部室まで★

未来部はあなたの輝かしい未来を守ります♡

未来部一同』


「は、はぁ……」

何か意外とまともな部活かも?いちいち語尾に記号が付くのが気になるけど……。

「お悩み相談、かぁ」

何だか面白そうな部活だし、潤ちゃんは今日も部活で一緒に帰れないし、行ってみようかな?

でも「何の取り柄もない」事が悩みだなんて笑われちゃうかな。何か取り柄を見付けようとしてくれて、見付からなくて、未来部の人達が自信を失っちゃったら可哀想だよね。でも「どんなに些細な悩みでも」って書いてあるし……。

「悩んだらまず行動!」

謎の名言(?)を自分に言い聞かせて、私は二階への階段へ走った。

「えっ!?」

そこで気付く。


「な、何かそこら中に貼ってある!?」

未来部のポスターは、壁に空いてるスペースがあればそこを埋めるように何枚も貼られていた。しかも一枚一枚手描きっぽかった。

未来部って何者なの……!?





二階に上がってすぐ隣にある空き教室には、確かに「未来部♡」と書かれた張り紙があった。

「へえ、ここよく通ってたけど気付かなかったな……ん?」

何やら背後から殺気が……ひっ!

後ろを振り返ると、そこには目を真ん丸に開いた女の人が立っていた。背が高くてショートボブのその人は、瞳孔の開いた大きな瞳で私を見下ろす。ひぃい!

「未来部に何か用ですか?」

低い声で尋ねられる。

「ひぃい!そうですけども!」

あまりの恐怖に目がぐるぐる回る。怖い、怖いよー!

「なら早く入りなさいよ。偵察に来た不審者かと思ったじゃない」

そう言って、その女の人はがらがらと戸を開けて中に入っていった。薄暗い部室の中には、一人の女子生徒が居る。イヤホンをしてスマホを弄っていたせいか、女の人が入っていってもしばらく気付かない。

「遅くなったわ。それから一人、お客さんよ」

女の人が目の前に座って話し掛けるとやっと気付いたらしく、何故か机の上に立ち上がり出した。

「え〜☆まっじ〜!?

ようこそようこそ!ごめんね〜この子怖かったでしょ??大丈夫!!未来部は明るくてカワイイ部活だから☆早く入ってきな〜〜☆」

やけにハイテンションだった。私は圧倒されて、二、三歩後ずさる。

な、何か来てはいけない場所に足を踏み入れてしまったかも???

「あ、ありがとうございます、失礼します〜……」

後ろ手で戸の取っ手を探る。あれ、さっきまで半開きだったからここにあるはず……あれ!?

「ここまで来て帰る気?」

「ひぃいいっっ!!!」

背後に女の人が立ちはだかっていた!

いつの間に!?


「ちょ、暴れないでよ!」

「怖いー!怖いー!殺さないで〜!」

「泣くな!あと静かにしなさい!」

「これ以上問題起こしたら廃部になっちゃうよ〜泣泣っっ☆」

「あ、そうなんですか……ごめんなさい」

「うわ、急に大人しくならないでよ」

「あー!そこ、そこに蛾が止まってる!!」

「嘘でしょどこ!?」

「発射!」

ビョオオオオ。私と女の人に掛けられる大量の白い煙……これ何?

「ゴキ●リジェット!」

「私達に向けてやるのやめてくれる?」

そんなこんなで、部室が揺れてるんじゃないかってくらいの大騒ぎになり……。


ここに来てからかれこれ二十分くらい経っただろうか。

やっと二人と向き合い椅子に腰掛けられた。

うう、私、悩みを聞いてもらいに来たんだよね?

「ごめんね??この子虫めっっちゃ苦手なんだよ〜☆こんな怖い顔してるのにねっ☆

あたしは内空閑(うちくが)、二年二組!!みんなからはオードリーヘップバーンって呼ばれてます☆よろしくね〜☆」

「呼ばれてる所なんて見た事ないけど。

私は保科(ほしな)。三年一組。よろしく。」

「うっ、クラスでは呼ばれてるもん!!」

内空閑さんが保科さんの背中をバシッと叩く。やっぱり二人とも先輩なんだなぁ……。それに保科さんって制服着てないから気付かなかったけど生徒だったんだ……。

「君の名前を教えてくれないかな??」

急に「先輩」という実感が湧いてきて少しだけ緊張していると、内空閑さんが笑いかけてくる。

「あ、私は月宮モナカです、突然来ちゃって騒いじゃってごめんなさい」

「いいのいいの、みんなの悩みはいつでも募集中で大歓迎だから!!☆」

「ふっ、意外としっかりしてるのね」

内空閑さんが頭の後ろで手を組んで更に笑う。保科さんもくすりと笑う。

あれ?何だか……。

変な部活だと思ってたけど、すごくいい部活じゃない?


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