すこしだけラブソングのようなおはなし

みなはら

第1話 TRPG日記 -ろーぷれ日記-より、『欄外2』

TRPGろーぷれ日記 きみのいるセカイ


◆月■日 かずまのセカイ



「かずまくん、今日は楽しかったね♪

猫又ちゃんも顔出してくれたし、?」


「…」


「かずまくん、寂しいの?」


「ああ、寂しい。

稲荷ちゃん、慰めてくれよ…」


「だめよ。

かずまくん、猫又ちゃん選んだんでしょう?

わたしおねーさんはそういう付き合いかたはしないの。

「猫又ちゃんだって、かずまくんのこと、良く思わないよ」


「…ずりーよな○○、

好きな子いるくせに、座敷ちゃんにはあんなに惚れられていてさ〜。

「稲荷ちゃんだってそうだろ?」


「だめ、かずまくん、

言いすぎよ。

「○○くんには○○くんの事情があるから。

少しは聞いているでしょう?」


「まあな〜。

だから、俺も○○に手助けしてるつもりだしな」



「あ〜あ。

俺も彼女欲しい。

甘やかしてくれる、お姉さんがいい。

稲荷ちゃん、お願いっ」


「だからぁ、

同級生のGF、何人もいるくせに(笑)」


「同級生なんてだめだって、子どもだよ」


「年上の彼女さんおねえさんは別れたんだっけ?」


「うん、猫又と付き合うようになったから。

俺、一途なんだよ」


「もー、嘘ばっかり(笑)

猫又ちゃん、まだ好きなくせに」

かずまくんが一途で誠実なのは本当。


猫又ちゃんは、別に人間の彼女さんと無理に別れなくてもいいって言っていた。

あの時にも、長続きしないだろうって言っていたし。

たぶん、保険のつもりだったんだろうと私は思っている。


「猫又ちゃん、あんまり甘えさせてくれないからね。

ちょっと不満だろうし、それに不安だよね…」



「かずまくん…。

猫又ちゃん、たぶん、まだかずまくんのこと好きだよ。

いまは上手くいかないかもしれないけど、

お姉さんが良い方法教えてあげる」

かずまくんのことを正面から見据えて、口を開く。しっかりと、言魂をのせるように。



「かずまくん、カッコよくなりなさい。

猫又ちゃんでも、他の女の子でもふり向かせるくらい。

「毎日、いろんな経験して、

失敗してもいいから、繰り返さないように考えて、

上手くいったら喜んで、毎日を元気に楽しく、笑って生きるの」


「困っている人を助けたり、悲しんでいる人をなぐさめたり、

かずまくんがそれを出来る人だってことを私は知ってる。

「あなたは子どもの時、

大変な目にも、悲しい出来事に会っているってこともわかってる」


「今はまだ出来ないかもしれないけど、

かずまくんは将来、猫又ちゃんを振り向かせる男になるって、私は信じている。

「だから、

今は毎日元気に、楽しく過ごしなさい。

元気のないかずまくん、カッコ悪いよ」



「うん…、ありがとな稲荷ちゃん」


「…なぁ、そうすれば、稲荷ちゃんもふり向かせられる?」


「さぁ〜?

わたしはメイドですから、そう簡単に落ちませんから♪」


「ご主人さま以外には(笑)」


「こら!!

…うんっ、その調子♪」



「かずまくん、あなただって普通の子よりは充分カッコいいよ♪」


「ただ、猫又ちゃんは厄介だよ…(ため息)

かずまくん、年上のお姉さんが好きだからって、

よくあの子にちょっかい出したよね。そこは尊敬する(真顔)」



「なあ、稲荷ちゃん…」


「なーに?」


「猫又は、俺のどこが気に入っている…、いや、好きなんだろうな?」


「ん〜、TRPGのセッションがきっかけだったんだろうと思うよ。

「あのダンスしながら地雷原を突っ切るみたいなプレイスタイル(冷汗)」

○○くんのセッション。

モンスターの大群に、笑いながら突撃する猫又ちゃんを追いかけて、

彼女の背中を守ってのコンビネーション。


討伐隊到着タイミングを決めるダイス目が悪かったら死んでたって、○○くん冷や汗かいてたっけ(苦笑)


私のセッションの、飛行船から邪神の背中に飛び降りる猫又ちゃんを追いかけてのダイブもそう。

あの時はふたりとも殺されてたけど(笑)


「あれ、猫又ちゃんのツボだよ…。

かずまくん、あれで猫又ちゃんの相方認定されたんだと思う(笑)」


「あれかぁ!!

俺の価値ってあれなの?」


「なかなかいない人材だよね(笑)

かずまくんなら将来、猫又ちゃんと一緒に、大気圏突入もしてくれそう(笑)」


「しねぇよ!!」



かずまくんと、そんな馬鹿な話をしながら私は思う。


世界は哀しい。


楽しい時間、大切な友人たち。

それらはいつも、ぱちんと弾けてしゃぼん玉みたいに消えてなくなる。


せめて、自分の手のひらの中の小さな世界くらいなんとかしたくて神使になったけれど、

力が大きくなったぶん、出来ないことが、

かえって出来ないと気づいてしまうことが増えたみたいだ。



○○くんはそれが嫌で、日常とそうでない時の自分を切り離して、

普段の学生としての役割を演じて(ロールプレイして)いるけれど、いつか酷いしっぺ返しを喰らいそうな気がする。

神使の予感でないといいけど…。



横目で気づかれないように見ると、

ちょっと背中を丸めているかずまくん。


誰だって、足りないと感じながらも持っているもので勝負していくしかないんだよ。

私もそう。


だから、今もいつものTRPGみたいに、

装備を整えて、情報を集めて、怯える気持ちに鞭打って、自分を信じて飛び出すのだ。


失敗しても、泣いてもいい。

また笑って飛び込んでいくだけだ。


そうやって苦労して、手に入れた成果の爽快なこと♪


それに成功しなくても、いつか振り返ってみた時、

自分が苦労して歩いた道のりを見てみるのは気分がいいものだよ(笑)



-なろう版 あとがき-


かずまと狐に、主人公、座敷わらしのところからの帰り道のシーンを与えてお話させた結果の会話文です。

かずまがキャラとして確立してきたからの成果です。ありがとう、かずま。

でも、おまえキライ。リア充だし猫又ゲットしているし(怒)


それと、狐さんお疲れさまです。モノローグなかなか良かった♪

自分が稲荷狐を創作した時の「頼れるおねえさん」の性格に、

番外5の芋煮会ネタでちょっと気弱なスタンスを演じてくれたおかげで、お話に深みが出ました。ありがとう❤

しかし、狐にはかずまってつくづく対象外なんだね。番外5で主人公相手に緊張していた様子がぜんぜんない(笑)

言っていることはほとんど変わらないのに。


お話が勝手に組上がっていく様子は毎回面白いです。

前回、番外8で主人公が「ああ、だから…探偵なのか!!」と言ったセリフは、書きながら自分も驚いてました。

あやかし探偵ネタの動機がここでわかって、ピースがはまるのかと。

TRPGスタイルでキャラを動かす真骨頂ですよね←野放しとも言いますが(笑)


以上、みなはらの脳内劇場でした(笑)

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