第3話 正しい侵略の進め方

オレの机の上で人形のような変な物が小さなティーカップでお茶している。


宇宙大元帥「紅茶がおいしいわ」


おもちゃ屋で買ってきたティーカップとティーポットは、気に入ってもらえたようだ。

登場時に言っていた地球侵略とか良いのだろうか? 紅茶も言いかけていたが。


宇宙大元帥「でも、そろそろ侵略りょ!」


やる気らしい。


オレ「地球は大きいのですよ。侵略なんて無理だから止めましょうよ」

宇宙大元帥「ダメ!絶対にやりゅ! タイトルを見た読者も期待してりゅはず」

オレ「そうですか? 雰囲気的に無いと思いますけど・・。だいたい、どうやって侵略するんですか?」

宇宙大元帥「・・・・・」


オレ「考えて無いのですね」


よし! とりあえず紅茶で大丈夫みたいだぞ!


<りょりょりょりょーーん、りょりょりょりょーーん、>


突然、机の上の電話が鳴り出した。大元帥も少し驚いてる。

内線の電話だな。え~と番号は・・・。


げっ。社長からだよ!


社長「どうかね。明後日は取材の日だが、順調かね?」


そ、そういえば、そんな話だった! すっかり忘れてたぞ!

ど、ど、どうしよう。


オレ「は、は、はい。まあまあ」

社長「じゃあ、明日、ちょっと見させてくれ」

オレ「いや、あの」

社長「明日の11時にそっちへ行くぞ」

オレ「でも、その」

ガチャン


死んだ! オレ死んだ!


宇宙大元帥「どうしたりょ?」

オレ「いや。あの実は、」


誰かに話す事で、少しでも気を紛らわしたかったのかもしれない。

オレは、社長に言われたAI開発とか取材の事とかを宇宙大元帥に話した。


宇宙大元帥「それよ! 取材りょ!それで侵略できりゃ!」

オレ「はぁ?」

宇宙大元帥「TVよね?」

オレ「ローカル番組ですけど。TVらしいです」

宇宙大元帥「放送を通じて地球人を洗脳すりゅ! そんなのが、おまえのPCの動画にもあったわ」


またアニメ?


オレ「ありましたっけ?」

宇宙大元帥「あったわ!」


特に思い当たらないし、いろいろ混ざってるかもしれない。


オレ「でも、動画ならYouTubeにでもアップすれば世界中に・・」

宇宙大元帥「バカね! 一般人がYouTubeに動画をアップしたって誰も見てくれないりょ」

オレ「なるほど。ユーチューバーへの道は険しいですね」

宇宙大元帥「当然りょ!」

オレ「でも取材があるってだけで、そもそも肝心のAI活用は出来て無いし。大元帥さんを出すとか無理すぎて」

宇宙大元帥「ネタね!放送してもらえるようなネタにすれば良いのりょ」

オレ「何か方法があるのですか?」

宇宙大元帥「・・・・・」


あのぉ。こおりついてますが・・・


宇宙大元帥「・・・考えてみりゅ。・・明日までに」


だめかもしれない。



翌朝、かな~りくらい気持で出社した。

いろいろ、やばすぎて・・。


宇宙大元帥「マスコットよ! イメージキャラね!」

オレ「はぁ?」

宇宙大元帥「調べたけど、あんたの会社ってお菓子屋でしょ?」

オレ「はい。”うさぎっこ”というのが主力商品で、この県の帰省時の定番みやげになってます」

宇宙大元帥「田舎ね」

オレ「田舎です」

宇宙大元帥・オレ「・・・」


こういう間は悲しいから止めて欲しい!


宇宙大元帥「で、私がその”うさぎっこ”のAIマスコットになりゅのよ!」

オレ「AIマスコット?」

宇宙大元帥「しゃべるマスコットよ。良いでしょ」

オレ「なるほど。   でも、あの。そのカッコでは、ちょっと」

宇宙大元帥「私を誰だと思ってりゅの?へんしんすれば良いだけだわ」

オレ「魔法のステッキで?」

宇宙大元帥「おもちゃ屋がスポンサーになってアニメ化するならステッキも考えるわ」

オレ「ありえないですね」

宇宙大元帥「でしょうね。」

宇宙大元帥・オレ「・・・」


だから、こういう変な間は止めよう!


オレ「それで、どうやってへんしんを?」

宇宙大元帥「あんたは部屋の外に出ていて」

オレ「へ?」

宇宙大元帥「着替え、、へんしんすりゅから外に出て!」

オレ「だからなん 、。イテ、イタイ」


なんか蹴られた。暴力反対だぞ!


宇宙大元帥「スマホを忘れないでね」


しょうがないので、部屋の外でスマホを握りしめて待機。

一瞬、ドアの隙間が光ったような。


「りゃいん」数分後、スマホが鳴った。

見るとメッセージ。


宇宙大元帥<もう、いいわよ>


部屋に戻ると、宇宙大元帥が変身(?)していた。

うさぎの着ぐるみ?

中身は変わって無いような・・


宇宙大元帥「どう? このカッコなら、あんたの会社のAIマスコットって事で売れりゅはずよ」

オレ「光ったみたいですが、転送機を使いました?」

宇宙大元帥「服を変換したわ」

オレ「服が変わっただけ?」

宇宙大元帥「へんしんよ!」

オレ「いやだから、服が変わっただけで」

宇宙大元帥「あんたのPCに入っていたアニメでは、これでへんしんって言ってたわよ」

オレ「・・・・。へんしんです」


オレ「いや、でも、どうせなら、もう少し露出が多いバニーガール的な・・、。イタタタ」

宇宙大元帥「エッチィのはだめ!」


なんだか暴力的になってきたなぁ。


宇宙大元帥「どう? 完璧でしょ?」


くるっと回って見せる。たしかに可愛いけど。

いや、でも、こんな人形が話してる時点で怪しすぎてダメだと思うが・・。


時間無いし他に策は無いので、そのAIマスコットというので、いくしかないか。


そうこうしているうちドアがノックされた。11時だし社長だ!


「いいかぁ?入るぞ!」

「ど、どうぞ。ちらかってますが・・。」


いつにもましてまぶしい、お姿!


「うむ。ほんとにちらかっておるな。 なんだぁ!このガラクタの山は!」


それは倉庫だった時からあった古いサーバーの山で。

オレのせいじゃ無いのですけど。


「明日の取材までに片づけておけよ。」


理不尽だ!

いや、でも、ここで逆らうわけにはいかない。ただでさえ、まずい状況なのに。


オレ「は、はい。なんとかします。」


泣きたい。


社長「それでAIは、どうなった。AIは! 出来てるのだろうな!!」

オレ「こ、こちらをごらんください。新しく開発したAIマスコットです」


いつもの机に白い布をかけただけだが、なんとなくステージっぽくしてみた。

その上に宇宙大元帥が立っている。


宇宙大元帥「わたしは ”うさぎっこ”の みゅーちゃん。よろしくね。」


もう、どうなっても知らないぞ!

って言うか、その名前は何処からきた?


社長「・・・・・」


社長がじっと大元帥を見ている。

怪しいよな。どうみても怪しいよな。


見つめられて宇宙大元帥の小さい額に汗がにじんているような。

オレの額にも汗が・・


だから無理だって言ったんだ!!! 何がAIマスコットだよ!!!


社長「か、、かわいいな」

オレ「へ?」


いやまあ、かわいいけど、問題はそこじゃないだろ?

こんなものが立って、しゃべってるのだぞ!? おかしいだろ!


社長「これは、あれか? AIスピーカーみたく会話できる、とかか?」

オレ「は、はい。もちろんです。ぜひ、話しかけてみてください」

社長「うむ。・・ みゅーちゃん、こんにちは!?」


社長のあいそ笑いを初めて見たぞ。

こんなわけの分からんものを相手に、このじいさんは何をやってるのだ?


宇宙大元帥「こんにちは、社長さん。みゅーちゃんは、社長さんのお友達になりちゃいです!」

社長「うぉ~! かわいい! むちゃくちゃかわいいじゃないか!」


社長が両手を広げて叫んでる。

大元帥は、この社長の反応に少し引いてるように見えるが、

もしかして、これが宇宙大元帥の洗脳、、、なのか?

何か超科学的なアレで、社長がアレされたのか?


社長「もちろん、お友達だぞ! おじさんはみゅーちゃんの大親友だ!」


社長が近づくと、大元帥が後づさる。


宇宙大元帥「う、うれしいわ。」


くちもとが引きつってますが。


社長「すごいなぁ。キミ! 良くやった。キミのなまえは」

オレ「加藤です」


おぼえて!


社長「加藤くん。最高だ! わしには技術的な事はさっぱり分からんのだが、皆が求めているAIは、こういう人間的なものなんだよ。」

オレ「はぁ」

社長「キミはこの前、AIスピーカーをおもちゃだと言っていたが、おもちゃで良いのだよ。おもちゃでも良いから、人間のように対応してくれる! それこそが皆がもとめている”AI”という物じゃないかね?」

オレ「あ、はい。」

社長「その点、このみゅーちゃんは最高だ! 完璧だ! 現代における究極のAIだ!」

オレ「いや、それはちょっと」


と言うか宇宙人みたいだし。


社長「明日の取材もぜひたのむぞ!」

オレ「え~と、AIで商品開発の件は・・」

社長「ん?何かね? とにかく、至急、宣伝部に頼んで、みゅーちゃんの写真を用意してくれ。アップのポスターだ。宣伝部の佐々木くんに言えば分かる。それ以外も取材については佐々木くんに相談してくれ」

オレ「わ、わかりました。」

社長「では、この後、会議があるので、わしは失礼するよ。  うむ。実に良くやってくれた!」


みゅーちゃんに向かって。


社長「みゅーちゃん! とってもかわいいよ。 明日はよろしくね!」


ハゲじいさんがウィンク・だ・と!


宇宙大元帥「は、はい」


帰ってしまった。

どっと疲れた感じの宇宙大元帥が膝をついて倒れ込む。

いいのか? これで良いのか?


と言うか、この会社、大丈夫なのか?

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