正しく無いAIの作り方 ~宇宙大元帥の地球侵略記~

世界征服支援機構

第1話 正しく無いAIの作り方

お昼ぐらいになると眠くなる。省エネだか知らんが冷房の温度が高めで微妙に暑い。

だから、なおさら眠い。

いつものように机の上のPCからサーバーにアクセスして、サーバーのお守りをしてるわけだが特に異常は無いし。適当にログを見て、バックアップを取るだけ。眠すぎる。

眠すぎてヤバイかもしれない・・・


と、突然、課長に後ろから話しかけられた!もしかして寝そうになっていたのがバレた?


「すまんが、社長のご指名だ。キミ、すぐに上の階の社長室へ行ってくれ。」


寝そうになっていた件、、では無いらしいが。

意味が分からない。


「へっ? 私が?なぜ?」

「オレも良く分からんのだが、社長がおまえの履歴書を社内のデータベースで検索して指名してきたらしい。」

「はぁ~?。・・・・、まあ、社長が呼んでるなら行くしかないですね。」

「そういう事だ」

うちの会社の社長はワンマンで有名だ。このジイさんに逆らうと後が無い。

取りあえず眠気は一気に失せた。

Gパンに半袖シャツという恰好だが、そういう部署だし、急に呼ばれたのだから、かんべんしてもらうしかないだろう。


と言う事で、エレベータで最上階に上がって社長室の扉をノックする


「入れ」

ハゲ頭の社長が大きな椅子に座っている。いつもは社員の集団の中に混じって遠く眺めている社長のハゲ頭が目の前に。

「君が加藤くんかね」

「はい。加藤です。」

「ふむ。キミの履歴書を見せてもらったのだが大学時代にAIをやっていたそうだね。」

「へ?」

「いや、ここにそう書いてある。」

そういえば、入社時の履歴書にそう書いたかもしれない。そんな風に書けば採用される、そう思っていた時期がありましたよ。

でも実際は、ほとんどAIなんか、やってなかったし・・。

ちょっと、ヤバイかも・・

「そ、そうですね。そうかもしれません。」

「そうかもって、キミ。キミ自身の事だよ!?」


ちょっと、いぶかしげな社長ではあるが、話しは続けるつもりらしい


社長「G社のAIが、囲碁で最強のプロに勝ったらしいね」

オレ「はあ。ニュースでやってましたね。」

「ついに人間以上のAIが出来たわけだ!」

「まあ。ゲームの話しですけど」

「AIスピーカーとか売れてるみたいじゃないか」

「おもちゃ以上の役にはたたないと思いますよ」

「飛ぶ鳥を落とす勢いのあのIT企業S社の社長が、イチにもニにもAIと言ってるとか・・」

「投資屋だし株価を吊り上げるためでしょ。」

「これからはAIの時代だな!」

「流行りですね」


オレの受け答えに、まゆをひそめる社長。

どうも本音を言ってしまうクセをなんとかしないと・・ヤバイかもしれない。


「きみはAIをやっていたくせに、AIを否定するのかね?」

「いや、まあ、5年も前の学生時代ですし。最近のAIは良く分からないというか・・」


「まあ、良い。 実はわが社でもAIをやりたいと思っておる。それをキミにやって欲しい。」


流れ的に、そうなるのじゃないかと思っていたが・・


「む、無理ですよ。そ、そ、そういうのは、もっと、高度で専門的な知識をもった人を雇って、ですね」


できない!断らないとヤバイ!


「実は雇う予定だった技術者に逃げられた。高い金で別の会社に釣られたらしい。」


なるほど。その代わりですか。オレは安月給ですけどね。


「自分で言っちゃいますが私は三流の○○大学で5年前も前に少しかじっただけなんですよ。その頃と今のAIでは・・」

「マスコミにわが社もAIをやると発表してしまった。いまさら引けない。」


な、ん、ですと!


「目的は?AIで何をやるのですか?この会社にそんな用途ってありましたっけ?」

「え~と・・。商品開発・・?だっけかな?」

「なんで、そこが疑問形なんですか?! それ、重要じゃないですか!」

「わが社でもAIを活用する! それが重要なんだ」

「そんなぁ・・」

「うるさい!とにかくヤレ!業務命令だ!」


業務命令は拒否できない・・かな

どうしたものやら


「分かりました。やりますが、結果は期待しないでくださいね。」

「いや、だめだ。結果を出せ。1か月間後にマスコミの取材がある。それまでに結果を出せ!」

「むちゃ言わないでくださいよ」

「むちゃでもヤレ!設備や金はいくらでも使って良いぞ」


話してるだけで胃が痛くなってきた。会社、辞めたいかも。


「話は以上だ。必要な物は総務部の部長に言ってくれ。」


翌日から、サーバールームの隣に専用の部屋を設けてもらった。

と言っても昨日まで倉庫だった所なので、部屋の半分は使われなくなった古いサーバーが積み上がっている。

社長直轄のAI推進室と言えば聞こえは良いが、オレ一人で室長兼室員。他にだれもいない。

取りあえず予算だけは潤沢なので、お高いサーバーと、お高いGPUコンピューティングボードを沢山注文した。

サーバーをくみ上げてGPUコンピューティングボードを刺しまくる。

ちょっとしたスーパーコンピュータだ!

全部に電源を入れて負荷をかけるとファンの轟音が部屋中に響き渡る。

なかなか壮観である。ただし少し暑い。

どうやら、この部屋の冷房の能力を超えてるっぽい。


ソフトは良くわからないので、社長もご執心のG社様が出してるオープンソースのTなんとかをぶちこんでみた。

データは、社内のデータベースから引っ張ってきた売り上げ関連のデータ。

オレには良く分からん内容だったが、とにかくぶちこむ。

売れた商品、売れない商品で学習させて・・、とにかくぶちこむ。


で。


まともな結果がでない。

データの前処理、学習方式の変更、パラメタをいろいろいじって・・

偶然それっぽい結果が出る事もあったが、少しデータを変えると逆の結果に。


暑い部屋で学習とシュミレーションを繰り返して、いろいろとがんばってはみた。

それでも、まともな結果が出ないまま3週間が過ぎた。

来週は社長が約束したマスコミの取材の日


なんだかもう辞職したい・・


藁にもすがる思いで学生時代の友人に、AIで評判とか言う先輩を紹介してもらった。

ずっとAIをやっていて勤め先で活躍している、という評判の先輩。


紹介してもらったアドレスでメールとメッセージのやり取り

できるだけオレがやった事を説明したのだが・・


先輩<ゴミデータをいくらいれてもゴミ結果しかでないよ。意味のあるデータを入れないとね。>

オレ<前処理も工夫したのですが。意味のあるデータって、どんなのですか?>


しばらく応答が無かった。

まあ、ただで教えてくれるわけないよな。先輩としてはめんどうなだけだし。

と思っていたら、突然、応答が来た。


先輩<暇だから、教えてやるか・・。>

先輩<目的は売れるかどうかの判断だっけ?ならば人間が見て売れる原因になっている要素見つける。そして、それを含んだデータを入れれば良い。>


ん?それって?なんか違うような?


オレ<人間が見て分かる原因なら人間が判断すれば良いだけでAIにやらせる意味なんか無いのじゃないですか?>

先輩<そこはあれだ。いままでは熟練なんとかしか出来なかった事をAIが、、てな説明を付ける>

オレ<素人や新人にはできないと?>

先輩<実際は簡単に分かる・・かもしれないが、そうは言わないのよ。>

オレ<なんだか詐欺くさいですね>

先輩<オレはおまえの3倍の給料をもらっている。わかるな>


先輩、凄いわ。いろんな意味で。

でも、そんな感じで行くしか無いかなぁ


そんなやりとりを先輩とやっていると、突然、サーバからビープ音が鳴り響き、ディスプレイに大きな文字でメッセージが表示された


[宇宙大元帥より]<オイ! これが読めるか? おまえはワシの地球侵略の手先となるのだ!>


突然、わけの分からないメッセージという事は、。

やられた!マシンがハッキングされた!

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