第2話

同日/イベント会場



OPENを間近に会場裏では怒声が飛び交っている。無理も無い、一番手に出る予定のTOY MACHINEが来ていないのだ。若手で勢いがあり、尚且つ地元出身のDEE JAYと言う事もあり、TOYを目当てに来ている客もいるのだ。


何より一番焦っているのは、風林火山SOUNDの、そして山梨のREGGAEのBOSSのPAPA-RATである。

無理は無い、今回はBIG ARTISTで固めようと言う周りのSOUNDの意見を無視して、TOYを起用したのだから。。


リハーサルに来なかった時点で周りのSOUNDから怒りの声が出始めたので、すぐさまRATは下の人間を都内の家に走らせた。

もうすぐ連絡が来る筈なのだが…やきもきしながら待っていると間もなく電話が鳴った。



Trrr… Trrrr…



「どうだっ…」


「RATさん…TOY持って行かれたっぽいです!!さっき着いたんスけどなんかTOYのアパートの周りに野次馬みたいなのが一杯いて、そん中の1人に聞いたら若い子2人が連れてかれたって…どうしま…」


話しを全て聞く前にRATは電話を切った。そして、皆が集まっている楽屋で静かに口を開き始めた。

「たった今TOYから連絡が来て、出れないそうだ。皆のVIBESを下げたくないから事情はこのDANCEが終わった後に話す!取り敢えず今日は山梨県で初のお祭りだ!!皆、宜しく頼む!!」


皆、半信半疑な顔をしながらも、オォー!!と叫んだ。暫くはざわめきもあったが、時間が経つにつれ、1人、また1人と無口になっていった。自分の世界に入っているのだ。それがプロである。



そしていよいよSTART30分前、全国から集まった2万人の熱気で溢れかえる会場の空を、冷たい雨の様に悲しいアナウンスがこだました。








~本日は、山梨レゲエ祭にご来場頂きまして、誠に有り難うございます。

本日出演予定でしたTOY MACHINEは、一身上の都合によりキャンセルとなりました。ここに深くお詫び申し上げます。…繰り返し…~













こうして皆で1から作り上げて来たお祭りは、俺のせいでブーイングと感嘆の声から始まった

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