メスガキ

「これはアルファベットのえーだよ! 小文字だとこう書いて、大文字だとこう書くの! ふふん。凄いでしょ」


 ロリ先生が椅子に乗って板書しながら解説した。たしかに凄い。だって授業、進んでいるどころか戻っているんだから。どうして今更アルファベットの説明しているんだよ。


「あははっ! 先生、背ちっさー!」


 メスガキのようにウザく言ったのは、餓鬼がき 雌子めすこ。あだ名はメスガキだ。


「というか今更アルファベットの説明とか〜。バッカみた〜い。そんなんで、英語教師務まるのかなぁ」


 メスガキはここぞとばかりにロリ先生を責め立てる。


「メスガキちゃん、ほんと生意気だね。わからせてやりたい……」


 ザコが言った。しかし先程もまで私もメスガキと同じことを思っていたから、何とも言えない。


「ああ! 餓鬼ちゃんイケナいんだ。授業中はね。静かにしないと、イケナいんだゾ!」


 とロリ先生。


「ロリ先生! 私に任せて!」


 ザコが立ち上がって言った。


「おぉ座湖ちゃん。頼りになるなぁ。がんばえー」


 舌足らずな感じでロリ先生は言う。この人、わざとやってないか?


「えへへ。ロリ先生の応援だぁ。終わったら一杯おギャるんだばぶぅっ!」


 我が親友が幼児の化身となってしまった。


「おいっ! メスガキ!」

「うっさい、ザーコッ!」

「ふえーん、ママぁー!」


 ロリ先生に泣きつくザコ。雑魚過ぎる。


「よしよし。座湖ちゃん。よく頑張ったね。偉いねえ」


 ザコを優しく抱きしめて、よしよしするロリ先生。よく、頑張ったか……?


「私に任せてよ。私、せんせえ、だからっ!」


 ロリ先生がそう言うと、おもむろにメスガキへ近づく。


「餓鬼ちゃん。お願い。ちゃんと授業、受けて……?」


 上目遣いで目をうるうるさせて、ロリ先生は言う。


「がっ!? くぅう……。へ、へっ! そんなの、私は騙されないよーだっ!」


 頬を紅潮させながらも、自身のアイデンティティを崩さないメスガキ。


「うふっ。そんなこと言っちゃめーでしょ?」


 ロリ先生はそう言うと、私やザコにした時の同じように、優しく抱きしめて、そっと頭をよしよしする。


「それでも、自分を貫き通すんだね。偉いねえ」

「ふぇ……あっ……何これ、何これぇ……」


 生意気そうな表情をしていたメスガキは、途端にふやけた表情になった。


「ほら。一緒に頑張ろう? これ、読んでみて」


 ロリ先生が教科書のあるところを指す。


「ば、ばぶぅ」


 そう口にしたメスガキの表情は、完全にわからされていた。


「そう、Bambooバンブー! 竹だねぇ」


 ……なるほど。


「ばぶぅ! ばぶぅ!」

「うんうん。そうだねえ。竹だねえ」


 ばぶばぶ喚くメスガキと、よしよしとそれを宥めるロリ先生。


「ばぶぅ、ばぶばぶぅ! たぁ〜」

「うんうん。よしよし。竹だねえ。偉いねえ」


 今日も授業は進まない。

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