第6話 この先にあるのは

 湖を眺める一人の少年がいた。少年の名はミッド。かつて怪物にバラバラにされ殺された人物だ。


「はぁー、ティノ遅いなー」


 いつもぐらいなら来てくれる時間のはずだ。

 なにかあったのだろうか。


 胸がソワソワする。

 でも、この場所から離れることはできない。


 なぜなのかはわからない。

 ただ、邪魔のように縛り付けるこの鎖が邪魔で仕方がない。

 胸の中心からのびる鎖が大きな樹の下に向かって伸びている。鎖は地面の底に潜るようにして沈んでいた。


 鎖を引っ張っても動く様子はなかった。


「はやく、来てくれないかなー」


 ぼんやりと空を見上げながらティノが来るのを待ち遠しかった。



***


 そのころ、ティノと親友は怪物の行方を追っていた。

 学校から降りたさきには設備されていない道があり、その先に検問がある。


 血の斑点がないことから、怪物はこの道を使っていなかった。


「怪物はどこに行ったんだ!?」


 気は焦ってばかり。

 怪物の行方は途方に暮れていた。あれだけのでかい化け物で二足歩行の緑色の怪物だ。見分けがつかないわけじゃない。

 姿を消すにしても、血痕の跡は必ずどこかに残されているはずだ。


 4年前は嵐でかき消されてしまっていたが、今回は違う。晴れている。風もそんなに吹いていない。どこか、見落としている。


「あった!」


 親友が手を振って教えてくれた。

 血痕の跡が点々と続いている。この後は怪物のものじゃないことは知っている。怪物が行儀悪く持ち出した餌から垂れたものだ。


 怪物は消す暇もないほど知能は低いようだ。


「この先って――」


 親友がある一点に指す方向の先は、ミッドとよく遊んでいた湖がある場所だった。


(ミッドが危ない…!)


 親友とともにミッドがいる湖へ急いで走っていった。

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