6. 復讐の準備 (セドリック.ザック.エレミア )

バウルは王に自分の息子が神罰を受けること。

そして、親子の縁を切ったことを伝える。

アズーナ王国国王ベルン・ノース・アズーナは、それを聞くと驚いた表情をした。

続けて、バウルが 女神様と精霊王様が 王とお会いしたいそうです。

と告げると、国王ベルンは 何だと...?!と声を上げ驚いた。

それもそのはず。アズーナ王国は大昔から女神と精霊を信仰しているのだから。

信仰している存在が自分と会いたいと言っているなど想像もつかない。

宰相 ダーウィ・ストーム と 摂政 グレイ・ノワール も目をこれでもかと見開いている。

それを見たバウルは、


「女神様は、ダーウィ殿、グレイ殿にもお会いしたいそうです。」


と付け加える。

それを聞いた三人は驚き過ぎて声も出ないようであった。

しばらく沈黙が続いていたが、そんな空気にそぐわない明るい声があたりに響き渡る。


「やあやあ、この国の王よ!突然押し掛けて悪いねぇ~~話したいことがあるんだよ~okしてくれて良かったぁ~~」


「それ、何をイメージして話してるんですか?」


空中に突如現れた女性二人に な?! と驚く国王達。


「バウル、伝達ありがとう。」


「いいえ、女神様の頼みですので......今回の件、元息子が大変ご迷惑を...」


「めっ...!女神様...?!」


「バウル!こんなに早く来られるとは聞いていないぞ!!」


「女神様と精霊王様をもてなす準備の時間が必要であったのだぞ?!」


ベルン王、ダーウィ、グレイはバウルとエリザの会話に悲鳴にも似た叫び声を上げ 慌てる。


「そこの三人、バウルを責めるのではない。

これは、“私達がお前達にだけ”話しておきたい内容を話しに来ただけだ。もてなしなど望んでいない...」


三人の叫び声を聞き、落ち着いた声音で話し始めたのは精霊王ビビアン。


「フフフ...そうね、もてなそうとしてくれてありがとう。でも、今日は必要ないわ。」


ビビアンのちょっとキツイ言い方にエリザは いつも通りね!! とクスクス笑いながら言う。

ビビアンが優しいのはセレナーデだけだ。


「そうですか...分かりました。騒いでしまい申し訳ありません......」


ベルン王は今の状況にだいぶ理解が追い付いてきたようで、声が出るようになったらしい。


「それで...女神様が我々だけに話しておきたいこととは?」


「ああ、そうそう。」


落ち着いてきたベルン王に問われたエリザは本題に入ることにした。


「ベルン、ダーウィ、グレイ!あなたたちの子供が、我が愛し子であるセレナーデに酷い行いをしてきたことについてよ。こんなこと、国民に知られたら大変でしょ?」


「「「......っ?!」」」


エリザの放った言葉に三人は息を飲む。

確かに、国民に知られれば、王家への信頼は間違いなく大きく下がってしまう。


「セドリック、ザックは共にセレナーデを奴隷のように扱った。

エレミアはセレナーデの学校生活に支障が出るような行いをした。」


そう言って自分の息子、娘の行いを次々と詳しくのべていくビビアン。


「セドリックもザックも、人を奴隷のように扱って良いなんて教育させていたのかしらね?」


「「いっ!いいえ!!」」


ベルンとダーウィは顔を青くする。


「セレナーデを無理やり押さえつけて虫を食べさせた時なんて私、顔面をグッチャグチャに切り裂いてやろうかと思ったわ♪」


エリザは明るい声に反して目は全く笑っていない。

ビビアンは目で射殺せるくらい三人を睨み付けている。


エレミアがエリックの指示で動いていたのは三人に伏せているが、いじめていたのは確かだ。それにエレミア自身がセレナーデをいじめることを楽しんでいたのだから、許すつもりはない。


「エレミアは取り巻き(お友達)と一緒にセレナーデの“噂”を周囲に吹聴していたわ。ええと、噂の内容は“セレナーデ・シュターナは体を売ってお金を稼いでいる”だっけ?あとは、セドリックのためにセレナーデを押さえつけたりね?」


三人はどんどん顔が白くなっていく......

顔面蒼白とはまさにこういうこと。

そんな姿をエリザは 冷たく見下ろすと、

ビビアンの方を向く。

ビビアンはそれにコクりと頷くと、


「セドリック、ザック、エレミアに罰を下す。

あなたたちは巻き込まれないように今から出す指示通り動いてちょうだい。

まず、ベルン王はセドリックの王位継承権を剥奪しなさい。ダーウィはザックと縁を切りなさい。グレイもエレミアとの縁を切りなさい。」


淡々と三人に指示する。

三人は今にも倒れそうなほど血の気が引いている...


「あなたたちは、良い人間だけれど子供はそうは

いかなかったようね。

どうしてあんなクズになっちゃったのかしら?」


エリザのそんな呟きは誰の耳にも届いていないようだったが、隣にいたビビアンは 同じことを思っていた。

誰もが見習うべき素晴らしい人間。

国民と王国のことを第一に考える王と宰相と摂政。

その子供が何であんな奴になってしまったのか.....

エリザとビビアンは ため息をつくのだった。


「では、宜しく頼みますよ。」


今まで黙って隅の方で話しを聞いていたバウルは、そんなエリザの言葉に 礼 をする。

バウルが視線を前に戻すといつの間にかエリザとビビアンはいなくなっていた。






夜、家に帰った三人はビビアンに指示された通り動いた。


ベルンはセドリックの王位継承権を剥奪。ダーウィとグレイはザックとエレミアとの親子の縁を切った。

セドリックもザックもエレミアも必死に弁解しようとしたが、信じてもらえることはない。

この国で女神の言うことは絶対なのだから。


だが、これが罰ではない。

これは、罰を受けるための準備である......



セドリックとザック、そしてエレミアは、突然現れたビビアンに精霊城の地下牢へ転移、拘束され神罰を待つこととなった。









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