壮絶(いや爆笑?)出産記


アメリカは陽気で、フレンドリーな医者が多い。


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(今日は途中から出産の時の出来事を書いています。苦手な方はご注意下さい)


。。。。。。。。。。。。。。


アメリカの医者は上から目線の威張った医者が少ないように思う。威厳の塊のような医者も少ない。もちろん中にはいやーな奴もいるけれど、


「院長先生のぉ~~~総回診~」もない。


大病をして多くの医者を見てきた。忘れられない嫌な医者もいたけれど、面白くフレンドリーな医者もとても多い。


25年以上前に軍の中で最初にアメリカ人の医者に会った。


そのドクターは「ハーイ」と言いニーっと笑い握手を求めてきた。


えええ?普通の事なの?と当時驚いた。


普通の事だった。


そしてこちらに顔を向けて目を見つめる。びっくりした。当時の日本の医者とあまりにも違い、ドギマギした記憶がある。


今はわからないが、20年以上前の日本の医者は不愛想な人が多かった。


「あ~……どうしました?」


なにがあったら、そんなに機嫌の悪い声がでるのか?奥さんと喧嘩したの?便秘なの? むっつりとしたまま、そんな声で言いカルテを見つめ、患者の顔を見てくれないことも多かった。


そういうものと思っていたのに「ハーイ」だ。驚いた。


白衣を着ていないこともある。なんだかおもしろい模様のついたうわっぱりを着ていたりする。スーパー温泉で貸してくれるような、あれだ。特に小児科の先生や看護師はマンガのキャラがたくさんついたのを着ていることが多い。これはいいアイディアだと思う。


それから軍の中だとあの迷彩の軍服のままの場合もある。この場合ちょっと当時は威圧的に感じたけれど、それでも「ハーイ」は変わらず、ちょっとジョークを言ってくれたりして気持ちが落ち着く。


だいぶ前の話になるけれど、妊娠中の診察と出産はアメリカの病院だった。


出産のときの医者はフィリピン系のアメリカ人医師だった。


その日はもう一人妊婦が隣の部屋にいた。産婦人科医はたった一人。パタパタとあっちこっち走り回って忙しい。


ものすごい痛みを何十時間もこらえた。


「もう生ませてくれー」と思った。いや多分言った……と思う。


「うんうん、でも隣の方が先かな?」と行ってしまう医者に「待って!!Wait行かないでえ~~」と叫んだ。


数時間経っただろうか(実際はわからないけど、そう感じた)やっと隣が先に生まれて戻ってきた。足の間にどんっと座り、股間を覗き込み


「お!プッシュプッシュ」いきんで、と言う。


「今頃プッシュじゃねえと」と思った。これはたぶん言ってない……と思う。


日本では大声を出すと怒られるという。アメリカでは「痛いなら痛い」と言わなければわからないと怒られる。なので大いに「痛い痛い」と連発した。


「はいはい、痛いよねーしょうがないね~」 


なにもしてくれなかった。


今では無痛分娩が主流だと思うが、当時はまだあまりなかったし、必要な場合だけだったかもしれない。当時はラマーズ方が主流でヒッヒフー、プッシュだ。


「ヒッヒー……ヒイイ~!なにかが~~はさまってるうううう」


「挟まってるのは、ベイビーだからね!ははは」


わろてる場合か。


体の大きい赤ちゃんで、ちっとも頭が出てこない。


「あなた、小さい。旦那さん、大きい。赤ちゃんも、大きい」とまたワハハハと笑う先生


フザケテイル


そんなこと言ってと怒りたいが、それどころではなく「ウウ~~~」といきむ。


何回「プッシュ」しても生まれない。


「は!本当に挟まっているんじゃないの??骨盤より頭大きいんじゃないの?」と思った。当時の病院では超音波写真は1回しかしてくれなかったから大きすぎたってギリギリまでわからない。心配し始めた時に先生はこう言った。


「出ないね~あれ持ってきて。


「スプーンてなに?? NO!  NOスプーン!」


スプーンは当時のというか、医療関係者のスラングで、赤ちゃんの頭を引っ張って出す大きな鉗子かんしのことだった。


スプーンって!!なんてデリカシーがないネーミングなのだろうか。サラダスプーンに似てるからと言っていた。日本の場合だったら、トング。確かに似てるけど。


「切るよ~」ついにあれだ、恐怖の会陰切開だ。出産前の全ての女性が、その話が出るたび震え上がる(会陰を切開)だ。


あんなデリケートなところを切る!!いやじゃいやじゃ。と生む前は思っていた。


しかし、そんなことどうでもよくなる。それどころか、早く切って出してくれ~という心境だ。


これから先、2000文字くらいの阿鼻叫喚描写があったが、あまりに壮絶なので自己規制で削除することにする。


簡単なあらすじは


 ―― 切った 鉗子 引っ張った ←ナウ!


ものすごい痛みと共についに誕生した。


ドラマでよくある生まれた瞬間にマイベイビーと頬を寄せて泣くなどという余裕は全然なかった。


体力限界突破でボロボロの私。赤ちゃんも挟まった時間が長かったため紫色になっていた。


すぐに検査と処置をしに別の所へ連れていかれる。泣き声が聞こえてきた。ほっとした。


処置が終わってどのくらいか忘れたが、ナースの一人が「ああ!かわいい」と息子の頬にキスをした。


その人は他のナースに「新生児にキスなんて!!」とものすごく怒られていたが、私はとても嬉しかった。


優しい人たちに囲まれて生まれたね。良かったね。


偶然にもドクターと看護師さんたちの名前も神々しく縁起の良い名前ばかりだった。祝福されているようでうれしかった。


人生で一番うれしい日。親にしてもらった日。ありがとう。


病院の人は皆優しかったけれど、退院は2日後だった。体力なんか戻っていない。


アメリカの病院は明るく、医者も含め楽しい人が多いけれど、こういうところは絶対に納得いかないのだった。














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