第46話 派閥の登録をするのです


 ハンキチ爺さんが持ってきた、聖域展開のシステムが内蔵された、携帯型のゲーム機。


 これと同じ物が、各地の派閥の長に、一つずつ送りつけられているのだという。それは関野さんもタツネさんも同様で、テーブルの上には飲み物や、湧音とセブラスが散らかしたお菓子と共に、三台のゲーム機が置かれていた。


「これが危険な物なのかどうか……つまり使用者に害を及ぼしたり、盗聴されてたりだとか、悪影響を及ぼす機能が備わっていないことは、理道君とウィラルヴァちゃんが調査して、すでに判明しています」


「言い出しっぺはあのタコじじぃだけど、実際に提案することになるのは俺達だからね。何かあったら困るんで、特に念入りに調べさせて頂きましたとも」


 少なくとも俺に渡されたゲーム機には、怪しい機能は何一つ備わってはいなかった。例えば展開した聖域に封じ込められるだとか、外から操作して爆発させられるだとか、そういった危険な機能は、何一つ搭載されてはいない。


 但しそれが俺以外の、各派閥に届けられたゲーム機まで同じとは限らない。そこでウィラルヴァと相談し、使い捨ての簡易魔法を利用し、このゲーム機専用の感知魔法を作成させてもらった。


 ロードリングから大量のカードを取り出し、テーブルの上に積み重ねる。


 カードそのものは、予めロードリングの中に無尽蔵に保管されている、空っぽのシィルスティングだ。中身の入っているシィルスティングと一緒に、俺が向こうの世界に訪れたときのために、ウィラルヴァが用意していた創造主用の装備である。


 その空っぽのカードの中に、ゲーム機の内容を脳で、直接的に把握できる感知魔法を一回分、封印させてある。使い終わった後は、一回分の魔法の理も失われ、魔法を行使するために貯蔵させた神力も空になる。見た目は、魔獣の姿も映し出されておらずに、表も裏も銀色のカードだ。精神魔法の一種である感知魔法の色が、カードと同系色の白銀色であるからだ。仮にロードならば、その中身が空っぽでないことは、手に取った瞬間に把握できるだろう。


 一般的な簡易魔法と同じ造りだ。魔法そのものをシィルスティングから発動させるためには、この世界の一般人がヘトヘトになっちゃうくらいの神力は必要だが、派閥の長くらいの神力の持ち主ならば、どうということはないだろう。


「ふむふむ。中々に興味深い。理道さんのシィルスティングを、我々も体験できるというわけですか」関野さんが興味津々に、カードの一枚を手に取って、表と裏とを交互に見比べた。


「これは、俺でも使用できるものなのか?」と、真樹さんも一枚を手に取り、カード越しに正面の俺の方に視線を向ける。どこか懐疑心を含んだような、意味ありげな表情だ。


 ……うん。まぁ、言いたいことは分かる。


「それは簡易魔法というもので、一回切りの使い捨ての魔法だよ。普通のシィルスティングとは違って、俺じゃなくても、使用できる」


「つまり、まともに魔獣の封印されたシィルスティングは、秀一君しか使用できないということか。……それを聞いて安心したよ」安堵の息を吐いた。


「では、早速使ってみましょうか」


 タツネさんが自分の持ってきたゲーム機に向けて、感知魔法を発動させた。少し遅れて関野さんも、それに続く。


「ほう。呪文の詠唱や、儀式の手順も何も必要なく、発動させるだけで目的の効果が期待できるとは……。簡易魔法とは、よく言ったものですね」


 おそらくゲーム機内に秘められた機能の、その全てが一瞬で頭の中で把握できているだろう関野さんが、細い目を見開き感嘆の声を上げた。


「素晴らしいですわ。この魔法を応用すれば、厄介な悪霊の正体も、一発で看破できることでしょう。秀一君の断罪者としての才能も、これ一つで確証されるというものです」タツネさんが柔らかな目つきで、俺にニコリと笑いかける。


「この簡易魔法を、各派閥のリーダーに届けて欲しいんです。ゲーム機自体が安全なものだと分かれば、聖域戦争の提案に乗ってくれる神々も増えることでしょう」


「それは構いませんが……我々も含めて、すでに各派閥の長も、このゲーム機に関しては調査済みではありますよ。とはいえ、この感知魔法ほど、機能の隅々まで把握できる術は、誰も使っていないとは思いますが」


 ああ……なるほど。そりゃそうか。あのハンキチ爺さん、よっぽど神々の間で評判が悪いみたいだし、誰だって警戒して調べるわな。


「まぁでも、せっかく作ったんだし一応、送りつけておいて。もしかしたら、調査できるだけの財力や能力のない神も、いるかも知れないし」


 言った途端、タツネさんと奈々枝さんの顔が、恥ずかしそうに赤くなった。


 ああ……はい。了解です。やっぱり全部の派閥に送りつけといてください。作っといて良かった。


「ちなみにですけど……すでにこのゲーム機を使った方っているんでしょうか? 理道君もまだ、使ってはいないんだよね?」と、気を利かせたのか店長が、そう話を切り替えた。


 関野さんは僅かに首を振り、


「我々もまだ、実証実験はしていません。おそらくほとんどの……いや全ての神が、使うことを躊躇っている段階でしょう。あるいは武闘派閥筆頭の毘沙門天の派閥ならば、眷族に命じて試しているかも知れませんが……何か話は聞いていますか、湧牙真神殿?」


 問われた湧音が、「んっ?」と小首を傾げた。


「あー……最近俺、家に帰ってないんだよね。帰ると爺ちゃんの小言が煩いんだもん」ニカッと笑って、ボリボリとポテチを頬張る。


 隣では同じくセブラスが、新しい味のポテチの袋を、バリっと開けたところだった。


 お前らどんだけ食えば……ああもう、ほら、食べこぼすんじゃありません!


「家に帰ってないって……湧音? 貴方、一体どこで寝泊りしているのですか?」話を聞いた慎司が、叱りつけるかのように顔を厳しくさせる。


「どこって…その辺で適当に寝てるよ? 橋の下とか、公園のベンチとか」


 おい。そりゃお前、野宿っていうんだよ。ていうか浮浪者か? 家なき子か? 丸っ切り野良犬生活してんじゃないの!


「……頭が痛い」慎司が重いため息を吐きつつ、自分の顔を掴むようにしてこめかみを押さえた。


 俺も同じ思いだ慎司。気が合うじゃないか。


「湧音……お前も一応は、神の一柱なんだぞ? そんな野良神みたいな生活してたら、知らずに負の神力を溜め込んで、悪神に成り果てちゃうぞ」


 窘めるように言ってみせると、湧音はツンと口を尖らせ、


「俺は霊力も呪力も使えるから平気だよぅ。その辺の雑魚と一緒にすんなって」ポリポリとポテチを口元に運ぶ。


 おー。負の神力…呪力の使い方も知ってるってことね。要は正の神力…霊力と混ぜちゃいけないってことなんだけど……それができるなら、負に染まって悪神となる心配はないわな。


 でも野宿はいけません! ちゃんとおうちに帰りなさい!


「提出の際には、私とタツネ殿も同席させて頂くつもりです。ですので我々には、事前にこのゲーム機をテストしておく必要があります」


 言いながら関野さんが、ゲーム機の一つを手に取り、ポチッと電源を入れた。


 起動にも、所持者の神力が微量ながら消耗され、継続するのにも神力が吸い取られていくが……まぁそれは、大した消耗ではない。一般人なら無理だろうが。


 ちなみに使用者が神力不足で失神した場合などは、強制的にゲームがストップされ、ゲーム機内に展開された聖域から、退室ログアウトされる造りになっている。その場合、先に退室されたプレイヤー側の方が、敗北扱いになるようだ。


 つまりゲーム機の使用者……ゲームマスターとでも言うべきだろうか。そのゲームマスターは、味方のうちで最も神力が高い者である必要があると。まぁそれは、俺かウィラルヴァのどちらかが、担当すれば問題ないわけだが。


「ここにいる者はすでに、把握していることかも知れませんが……一応、説明させて頂きますね。いいかな、理道君?」と、店長がポッケから一枚の紙切れを取り出した。


 会議に先駆け、店長に渡しておいたものだ。


「お願いします、議長」


「了解。ええーと、まず大まかな説明から。

 このゲーム機は、ゲーム内に展開された領域に、プレイヤーが召喚され、設定されたルールに基づいて競い合うゲームです。それにより、派閥間に生じた諍い事に決着をつけようというわけですね。僕らで言えば……奪われたタマちゃんとこの聖魂を、国乃樹魅富くにのきみとさんから取り戻すために、決闘を挑むことができると。

 展開される領域というのは、関野さんやタツネさんなら良くご存知であろう、この世界から隔離された、聖域、と同様のものであるそうです。その場所は、ゲーム内に作られた仮想空間のようなもので、この世界のあらゆる場所に該当しません。なので聖域内でどれだけ暴れても、現実世界までに影響が及ぶ心配もありません」


「ちなみにだけど、聖域に施された結界も、かなりの強度があるみたいです。数値を見る限りは……多分、俺が焦砲黒炎弾ダークフレアバレットを全力でぶちかましても、結界を維持できるくらいの強度かなー。さすがに黒煌双滅破弾オスクリタバレットなんかをぶちかましたら、跡形もなく吹っ飛んじゃうだろうけど」


「シュウイチ。その説明では私しか理解できないぞ」ウィラルヴァがやれやれと肩を竦めた。


 ああ、そうですね。ええーと、どう言えばいいかな。


「ミサイル乱射しても構いません。核爆弾は使わないでください」


「そ、それもまた極端な例えな気がしますが……と、とりあえず話を続けてください」と、関野さんが苦笑気味に、店長に話の続きを促す。


「仮に領域が破壊された場合、プレイヤーは自動的に退出扱いになり、ノーゲーム扱いになります。あと、ゲーム内で死亡した場合ですが、退出時には蘇生されるみたいです。またゲーム開始前の設定次第では、死んでもゲーム内にリポップされて、何度でも戦うことができるみたいですね。その場合は、撃破数が勝敗を分けることになるのかな。まぁ、お互いのゲームマスターの承認次第ですが」


「ゲームのルールは、互いの了承次第で、多彩に設定できるみたいですよ。狭いエリアで一対一のタイマンもできれば、一都市分の広大なエリアで、複数での撃破数を競ったサバゲーもできるし。

 武器設定もあります。狙撃銃やロケットランチャーなんかも持たせられるし、相手の位置が分かるようになる特殊能力を付与できたり。

 ただしどの場合も、ゲームマスターの神力が消耗されます。狙撃銃一個につき百ポイント、みたいに。ゲーム内のプレイヤーも、自前の能力は問題なく使用できるし」


「つまりは結局、武力の高い眷族が居り、高い神力を持つゲームマスターがいる派閥が、絶対的に有利ということですね?」タツネさんが神妙な面持ちで口を挟む。「うちは……不利ですね。どちらも当て嵌まらない」深刻そうにため息を吐いた。


 ううむ。そういう派閥、結構多そうな気がするなぁ。


「今現在の神々のバランスを、大きく崩すものではない……ということですね」腕組みをした慎司が静かに呟く。


 うん。そこは結構、大事な部分だね。


「神々の間でも、対戦する際のルール決めを提唱した方がいいですね。つまり、領地を賭けた対戦は禁止だとか、眷族の引き抜きに当たる対戦、または聖魂を賭けた……いや、聖魂のやり取りまで禁止してしまえば、秀一さんらが困るのですね」腕組みしたまま、難しそうに目を伏せる。


「その辺りの交渉は任せてください。まずは話の初めに、奪われた聖魂を取り戻す方法を得るために、この提案をするという件から入ります。なぜ聖魂のやり取りだけは許可しなければならないのか、最初に提示してしまいましょう」関野さんが自信あり気に笑顔を浮かべた。


 複数の企業を抱える関野グループの会長さんですからね。そういった交渉術はお手の物、ってやつか。頼もしい限りです。


「あと説明しておいた方がいいものは……ああ、ゲームの参加料として、まず初めに一定量の神力が吸収されるようです。これはまぁ、領域を維持したり、死んだ者を蘇生させたりなど、ゲームを構成するための神力に当たるそうです。

 ゲーム内の状況は、ゲームマスターは画面から把握できますが、理道君とウィラルヴァちゃんみたいに、独自の能力で視界を共有できたり、音を聞いたりできる能力者は、聖域内外でも使用可能です。また画面は、別の画面に……例えばテレビに映したりなども可能で、複数人での観戦もできます。

 加えて、ネット回線とも繋がっていて、日本中の神々が試合を観戦することもできます。なんか知らないけど、投げ銭なる機能もありまして、応援するプレイヤーに神力を援助することもできるみたいです」


「それもまた、大きな派閥ほど有利に働く機能ですね。提案を通りやすくするために、半吉が考えた小細工でしょう」と、慎司がフンと鼻を鳴らした。


 ああ……純粋に観戦を楽しむための機能かと思っていたけど、なるほどねそういうことか。


 まぁ、見てる方からしたら、面白い機能だとは思うけどね。押しのキャラ……じゃなくて、プレイヤーがいれば、後先考えずに注ぎ込んじゃう奴もいそうだし。仮に湧音君が試合に出てたら、俺なら間違いなく投げ銭ボタン連打してるわ。


「あとゲームには、日別、週別、月別、年間、総合と、派閥別と個人別に分かれて、ランキングもあるみたいです。勝敗や撃破数などによりポイントが加算され、派閥ごとに競い合わせようという目論見が見えます」


「おそらく、それが一番の狙いでしょうね。そのハンキチってお爺ちゃん、自分さえ楽しめればいいっていう世捨人なんでしょ。うちの世界にもいたわ、たまに俗世に関わっては、好き勝手に世の中を乱していく害悪が」シズカが何かを思い出したのか、顔を顰めてギリギリと歯軋りをした。


 ふむ。うちの世界にはいたかなぁ、そういう奴……ああ、そういえば、思い当たらないこともないな。どこの世界でも、似たような奴はいるもんだ。


「質問ですけど……派閥の登録は、どのような扱いになるのでしょう? 今の状態だと、個人派閥である私の一族は、私がリーダー扱いになって、一個の派閥として登録されているようですが……」


 タツネさんが慣れない手つきでゲームの画面を操作しながら、ふと顔を上げて俺を見た。


「どういう扱いって……どういう意味です?」


 何を言いたいのかが分からずに聞き返すと、タツネさんはちょっとおずおずとした顔つきで、


「私の眷族でまともに戦える者は、私自身と、ここにいる奈々枝くらいのものです。本当はもう一人、戦闘能力には飛び抜けた眷族がいるのですが、現在は普通の人間として転生している状態でして、今の彼では戦力にならないでしょう。

 なのでできれば私の派閥も、秀一君の派閥と共闘する、という形を取らせて頂きたいのですが……」ゲーム機を膝の上に置き、真っ直ぐ座ってこちらを見る。


 と、それを聞いた関野さんがポンと手を叩き、


「それはいい。是非うちの派閥も、理道さんの傘下に入れて頂きたい。どの道これから先、私の派閥もタツネ殿の派閥も、理道さんの理道一家と、同系列に見られてしまうでしょう。ならばこの際、正式に派閥を重ねてしまいましょう」


「タマはもう、シュウお兄ちゃんの妹だって公言してるよ?」タマちゃんがクルリと振り向いて俺を見上げ、かわゆくニッコリと笑った。


 うんうん。タマちゃんはもう無条件だもんねー。かわいいねー。いいこだねー。

 ヨシヨシとタマちゃんの頭を撫でながら破顔していると、ウィラルヴァの槍のような視線が俺を貫いた。


 おっと危ない。会議に戻りましょう。


「ええーと……派閥については、新規登録と同盟登録ができたと思う。すでに今現在の派閥の情勢に基づいて、予め登録されているとは思うけどね。個人登録については、どこの派閥から出場したかによって、参加した者から新規に登録されていくみたいだよ」


「同盟登録……ああ、これですね。理道一家と関野グループ、登録しても宜しいですか?」


 と関野さんに聞かれたので、関野さんの隣にいる真樹さんに、チラリと確認の視線を向けた。


 無言でフッと苦笑し、頷く真樹さん。


 ……うん。おそらくだけど、予めそうするつもりで話を合わせていたんだろうな。この二人なら間違いなくそうだ。


「……じゃあ、承認しますので、申請を送ってください」


 了解ですと頷いた関野さんから申請が送られてくる。それをクリックして承認ボタンを押すと、僅かに神力が消耗されたのが分かった。


 ふむ。電力の代わりに、神力を消耗するゲーム機だけあって、何をするにも神力が必要なのね。便利なんだか不便なんだか。……まぁ、大した消耗じゃないからいいけど。


 続けて、若干操作に戸惑いながら申請してきたタツネさんの派閥を承認し、名目上、頭となる派閥は理道一家と設定させてもらった。


 どうでもいいけど……派閥の名前は変えれんのかこれ? 理道一家って……まぁ、名前なんてなんでもいいけれども。


 ちなみにタマちゃん一家は、すでに理道一家の配下として登録設定されていた。


 やるじゃないのハンキチ爺さん。そこだけは称賛しよう。


「これ、シュミレーター機能があるみたいなんで、試しに一度使ってみますか」


 関野さんの提案で、シュミレーターの領域を展開し、何人かが中に入ってみることになった。


「俺! 俺が入る! 秀一、中で修行しようぜ!」と、湧音君が両手を上げてニコニコと屈託なく笑う。


「ダメですよ湧音。ここにあるゲーム機を使ってフィールドに入ってしまえば、貴方も理道一家のメンバーとして承認されることになります。貴方の派閥は毘沙門天なのですからね」慎司がピシャリと釘を刺した。


「ええー? じゃあ俺、秀一の派閥から出場するよ」


「は!? 何を馬鹿なことを言っているのです!」


「大丈夫大丈夫。爺ちゃんだって、俺がどこの派閥で戦おうが、強くなれさえすれば文句は言わないさ。それに……どの道俺は、一人だ。最後は一人で戦わなきゃならない」言った湧音の目つきが、スッと鋭くなる。


 ふむ。湧牙真神。かつては栄華を誇った真神の一族も、今は湧音一人しかいないってわけね。文字通りの一匹狼ってやつか。


 俄然応援しちゃうよそんなの。湧音君。この秀一お兄ちゃんにドーンと任せておきなさい!


 最強にしてやる! これでも向こうの世界では、数々の英雄戦士を誕生させてきたんだぜ!


「慎司はどうする? 一緒に入るか?」


 ニヤニヤしながら問いかけると、慎司はジトリとした目つきで俺を見たあと、ハァと軽く息を吐いた。


「……保留させてください」それだけ言って、ツイとそっぽを向く。


 ふむ。てっきり瞬で断られると思っていたんだけど……拒絶はしないのね。まぁその辺りのことは、慎司の派閥の長と話し合ってのことになるか。慎司一人では、拒絶もできないってわけね。なるほど。


「さてさて、それじゃあ、いっちょ使ってみますか」


 ウィラルヴァと関野さん、タツネさんはその場に残り、ゲームマスターとしてゲーム機を操作する役割となった。


 中に入るのは、ウィラルヴァの操作で、俺、湧音、シズカ、セブラス、蛇貴妃、そしてタマちゃん。ハナちゃんは、外側に残って様子を見るとのことだ。


 関野さんの操作で、真樹さん。タツネさんの操作で奈々枝さんと、同時に三つのゲーム機を起動させる。


 フィールド設定は、闘技場。フィールド設定画面の一番上にあったものだ。一応これが、ノーマルフィールドということになるらしい。他のフィールドは、複雑な設定になればなるほど、フィールド設定時に消耗される神力が増えてゆくという構造になっているようだ。


「いいか。開始ボタンを押すぞ?」


 最後に確認の一言を放ったウィラルヴァの声が合図となり、俺や湧音ら、プレイヤーとして設定された者が、店の応接室から忽然とその姿を消した。

 

 

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