ログインボーナス49日目 モンブラン

 朝、目が覚めると「夕方、駅に迎えに行きます」とメールが届いていた。

 配達員さんからだ。

 俺がログインボーナスに慣れてきたからなのか、それとも配達員さんが気遣ってくれているのか、理由は不透明だが有り難い。



 夕方、18時を回ったころ駅前で待っている俺の前に、配達員さんは車を停めた。

 乗り込んだ俺を確認すると配達員さんは車を走らせる。


「今日はどちらへ」

「ここから北へ20分程行ったところに美味しい喫茶店があるんですよ」


 目的地へ向かっている道中、ぎゅるるると俺の腹の虫が鳴き声を上げた。

 その音を聞いた配達員さんがほほ笑む。こっぱずかしい。


「お代出しますので、喫茶店で夕食を取ってもいいですよ」

「お言葉に甘えます」


 目的の喫茶店は大学と隣接していた。

 その為、学生としても雰囲気を身に纏っている客層が多い。


 配達員さんは夕食としてエッグベネディクトを頼んでいた。

 そしてここはこじゃれたメニューが多く訳も分からず、無難にカレーと注文したら蛍光ピンクのカレーが出てきた。

 一瞬ここはアメリカかなと思うほどに。

 食欲低下には向いてそうな一品だ。

 味は甘かった。甘さを感じ取った後にスパイスの刺激が追いかけてくる。


「ひと口食べてみます?」

「ええ」


「いただきます」


 カレーを口にした配達員さんの表情から微妙と伝わって来た。

 決して不味くはないのだ。

 …………微妙なのだ。


 夕食を澄ましたふたりの前に、7号くらいのホールのモンブランが置かれた。そして配達員さんはが告げた。


「今日のログインボーナスはモンブランです」


 ここのメニューにはモンブランがない。

 だからきっと特注なのだろう。


 コーヒー片手に2人で登頂を開始した。

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