ログインボーナス32日目 ぬいぐるみ

 まだ闇夜の中、そっと目を開ける。

 日本では朝でもここではまだ夜なのだ。

 視界の端に白いものが映った。

 まさかと思い大きく目を開けて見る。

 それはぬいぐるみだった。


 配達員さんと見間違えた両手に収まりそうなぐらいのぬいぐるみは、それはそれは精巧に作られていた。

 白い髪に赤い瞳、いつも着用しているスーツがデフォルメされて、可愛らしく作られている。

 配達ぐるみを両手で持ちながら、これをどうしようか考えていると配達員さんが部屋に戻ってきた。


「おはようございます。どうですか? それ気に入りました?」


 そういつもと違いボーナスの詳細を言葉にしない配達員さんは、中くらいのテディベアを両手で抱えていた。

 そんな配達員さんを見て俺は理解をした。

 元々のログインボーナスはテディベアだったことに。


「ええとっても。今日から一緒に寝たいと思います」


 俺と配達員さんの間に天使が通った。




 朝食は看板を下ろそうとしていたBARに行き、ジュレックとコーヒーを頂いた。はた迷惑な客である。

 それから配達員さんの恒例行事プールである。

 この劇場のような外観をしているは水着を販売していたので、遂にオレンジ色のクソダサい水着を卒業できた。

 プールは以前日本で流行ったナイトプールの様な雰囲気を醸し出していて、昨日一昨日と比べるとダークな感じだ。

 光が映えることをコンセプトとしているらしく、赤、緑、紫、黄色と水の色が変わり中々に楽しかった。

 それに変色する光源によって、配達員さんの雪のように白い髪は表情をコロコロと変えていた。




 プールを終え、俺と配達員さんは町へと繰り出した。

 ポーランドで最も古いこの都市ヴロツワフは200以上の橋が架けられている。

 それはきっとオーデル川との共生が伺える。

 そんな歴史ある淡く彩られた街で、俺と配達員さんはあることをしていた。市庁舎、噴水広場、ヨハネ教会を横目に。


 小人の像探しである。


 この街のあちこちには、人間、鳥、牛、兎、山羊といった動物の像や小人の像がある。

 中でも小人の像は300体に及ぶそうで。

 配達員さんとポンチキを咥えながら街を巡ったが、正午までに見つけられたのは192体と健闘した。


 配達員さんの運転する車で2時間かけて移動したポズナンでは、レストランではなくKUOという店でラーメンを食べた。

 配達員さんがビールを飲みたがっていたが頑張って止めた。

 ホテルに着いた後、俺がシャワー浴び終えると配達員さんは出来上がっており、テディベアと会話していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る