第58話 僕たちは何故創作を続けるのか

 僕たちは何故創作をするのだろうか。そんな疑問がいつも定期的な周期で頭上に飛来する。


 最近、長年の友人と手の込んだ作品を作って完成に至った。歳のせいか分からないが出来上がった作品を見直していた時、何故かふと涙が出てしまった。


 苦労して完成に漕ぎ着けたからとかではなく、単純に自分の作品の中にいつかの郷愁めいたものを感じて思わず泣いてしまったのだと思う。いつの間にか自己投影が上手くなった。それだけは上手くなった。


 友人と若い頃の情熱を思い出し、熱くなって語った。これはウケるぞ、良いものを作った。そう口々に語った。


 しかし、評価は月並みだった。


 故にこの結果が、自分が今の自分たる所以なのだが。それでも僕たちが創作を続けるのは何故なのかと疑問が浮かぶ。浮かび続ける。


 何故、ろくに評価もされないものを生み出し続けるのか。


 砂漠で遭難しているのに誰に読まれるとも知れない詩を書き続ける詩人。


 海で船が難破してるのに聞き手のいない場所で歌い続ける歌い手。


 誰も聴いてくれない、読んでくれないものの為に、何故僕らは人生の貴重な時間を削り、物思いに耽り、娯楽を遠ざけ、寝る間を惜しんで創作をし続けるのか。


 疑問である。


 生まれながらに持ち合わせた才能は既に見切っている。


 中途半端に捧げた青春はとうの昔に色あせている。


 世間で活躍する人々を尻目に「自分もああなっていた未来があっただろうか」と妄想するのが関の山だ。


 それでも、諦めをつけたフリをしながら、僕たちは創作をし続ける。


 それはなぜか。


 僕にもよく分からない。明確な答えはないのだが、答えに近いものは既に手に入れている。


 僕の場合、創作とは生活なのだと思う。


 人生なんて大袈裟なものじゃない。目立った才能のない僕は仕事や家庭の合間に、自己の器を満たす為にひたすら創作を続ける。無駄だと思っていながら、しかし無駄ではないのだ。何故なら創作は僕自身を救ってくれる。そういうものだから。


 ただ傍らによりそって、あり続けるものなのだ。優先順位は年々低くなっていってしまうが、それでも欠かせないものなのだ。食事や睡眠、家庭や仕事の下にいつまでもこっそりと確かにあり続ける。それが僕にとっての創作である。


 だから僕は、死ぬまでコレを手放さないだろう。


 誰がなんと言おうと。僕は絶対に創作を止めない。それはイコール、僕の人生が終わる時だと思うので。


 いつもこんなことを書いたり言ったりしては自らを鼓舞し、創作を続ける。しかしそれは評価欲しさや金銭的な目的ではない。それらは仕事で得ればいいのだから。もちろん欲しくないとは言わないけれど。


 僕は続けたいのだ。創作を。ずっと。


 昨日の夜、ふと思い立ってコレを寝る前に書き殴った。朝起きて見直した時に恥ずかしい散文だと思ったら消そうと思っていた。しかしそうはならなかった。


 やりたいことが山ほどある人生で、僕は変わらず欲深く生きていきたい。


 こうして日々書き殴った自分を、いつかこっそり開けて楽しむ日がくる。書くのを止め歌うのを止めた時、いつかの自分が残した創作を愛でる日がくる。


日がな一日、特にすることもなく思うことも少なくなる。世間のあれこれが遠くなり、あれほどあった意欲も薄れ、足りなかった時間は膨大に余る。


 悲しいけど、多分そんな日がいつかくる。


 だからその日のために、僕はせいぜい色々やってみようと思う。その時の自分を退屈させない為に僕は今、創作を続けている。



 若さや輝きが薄まってしまっても、また別の何かがきっと創作に深みを出してくれる。歳と共に世界の色は変わり、人が変わり、自分が変わっていく。


 それが面白いと思えるうちは僕は創作に向かい続けられると確信している。


 嫌いなものが多い世界より、好きなもの興味のあるものが多い世界の方が楽しいし、意欲も終わらない。


 僕の中にこの意欲があり続ける限り、創作への気持ちが色褪せない限り、僕はせいぜいやってみたいと思う。


 こんなこと、恥ずかしげも無く書いてしまって明後日くらいにはきっと後悔しているにだがそれでもいい。


 作品は元来、恥ずかしいものでもあるのだから。だが同時に自分にとっては愛おしいものでもある。まる子供のようであり、自分自身そのもののようであり、まるで違うなにかでもある。分からないからこそ愛おしいのかもしれない。



 ロイヤルティプログラムで稼ぎたい!と普段から大声で叫んでいるものの、僕はきっとお金より創作を続ける理由が欲しいのだと思う。稼げるようになればそれが続ける理由になる。プロでなくとも、小銭にでもなるのなら。そう思ったのだろう。


 今は少し違うかもしれない。


 続ける理由はもっとシンプルで奥深いものだった。僕は創作と共に生きていきたいのだ。それだけ書いているし歌っている。



 もちろん小銭は欲しいのだけど。


 もちろん評価も欲しいのだけれど。


 だがそれ以上に続けたいのだと思う。恥ずかしくても、格好悪くても、僕は創作を続けたい。




 そんなわけで、まだまだ頑張っていきます。


 長々と、自分語り失礼しました。


 それではまた!


続く

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