2番目に好きな人と結婚しました。〜2019 Dec.〜
ゆず 柚子湯
第0章 ただいま⇔おかえり
お風呂にする?ご飯にする?それとも・・・
「ただいま」
「おかえり」
無機質で淡白な挨拶が、少し狭いダイニングに響いた。
寒風で冷え切った身体がだんだんと沁みるように温まっていく。
ダッフルコートをハンガーに掛け、テーブルを挟んで向かい合って座った。
出迎えてくれた彼女は
夫婦でもある。
「ご飯にする? お風呂にする? そ──」
「いや、もう用意されてるんだからメシ以外の選択肢はないだろ」
「用意されてなかったら別のを選ぶのね?」
「そんな反実仮想には付き合わないぞ」
「妻の〝たられば〟くらいは付き合うのが夫ってものでしょう?」
「そうか、そうだな。じゃあ最後のオプションを」
「え、え?」
「ん、どうした? ご飯か風呂かしか言ってなかっただろ。食事が用意されていないなら俺は風呂に入る」
「はぁ……。二択なら最後じゃなくて後者って言うべきだと思いますけど」
「おい、メシ冷めるぞ」
「もう」
そう、既にテーブルには彼女が用意した美味しそうな和食が並んでいるのだ。
白米に味噌汁、生姜焼きにキャベツと玉ねぎのサラダ、それにきめ細やかなお豆腐。
しっかりとした一汁三菜だ。湯気と匂いが鼻孔をくすぐり、食欲を掻き立てる。
「じゃあ、食べるか」
「ええ……」
「というわけで」
「「いただきます」」
まだ
しかも別に俺たちは、お互いのことを愛している訳ではない。
静かに口と皿とを往復させる彼女の箸を見ながら、俺は事の発端を思い出していた。
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