興味のマネジメント

 前回、私は皆様に「序盤での過剰な説明」がもたらす害についてお話ししました。多くのPBWが、テーブルトークRPGのルールブックよろしく設定の山をドンッ!と冒頭でプレイヤーに叩きつけてしまう過ち。


 これはプレイヤーにとっても、ゲームマスターにとっても。もちろん、設定を踏まえて絵を描くイラストレーターさんにとっても良いことではないと思います。

 理解できなければ、覚えられなければ、そこで脱落ですから。


 数少ない有効な手段として「原作小説」があります。大ヒットした原作小説のあるTRPGやPBWなら、膨大な情報があってもそれを理解した原作ファンがいます。

 けれど、そういった原作の作者や、版権を持つ企業に渡りを付けるのは容易ではありません。過去にそれで痛い目を見たので、ビッグ社長は原作ものに関心が無いようです。

 だから私が、自分で原作小説を書いてやろうってんです。


 もしかすると、四十年余りの歴史を持つTRPGがゲームソフトのRPGに負けた…そして今も、知名度で負け続けている理由のひとつはそこなのかもしれません。一人で遊べないのが、一番大きいでしょうけど。

 ちなみに、元祖RPGのダンジョンズ&ドラゴンズが1974年生まれ。私は翌年の1975年生まれです。何と、ほぼ同い年。


 もちろん、説明不要だからと言って。流行りものの安易な劣化コピーを矢継ぎ早に投入するなど、愚の骨頂です。本当に多くのPBWが、この過ちを繰り返している。

 イラスト商売で辛うじて生き延びてるPBWの運営各社が、イラストの新規需要をあおるために「新世界」を乱発する。それが、自分の首を絞めてるんです。


 本題に入ります。興味のマネジメント。

 読者を小説の世界に引き込むなら、序盤はごく狭い範囲の情報しか分からない方がいい気がします。ちょうど初代ドラクエで、宝箱から鍵を見つけて扉を開かない限り先には進めないように。


 マップ上の分からないところは、探索を進めるに従って判明していく。それがダンジョンRPGの醍醐味。

 1話1話、自分の手で地図を描くように小説を読み進める。そうやって読者の想像力で、世界中のどこにもない地図をつくれ。世界樹の迷宮です。


 PBWとかで最初に世界地図とか、各地の詳細な設定を出しちゃうと。


 オレはA王国に行きたい!

 拙者はB地区を調べる!

 私はC帝国で名を上げる!


 などと興味が分散しちゃいます。そして運営側の人手不足かネタ不足で、大抵ほとんどの地域はおざなり(いい加減)か、なおざり(完全放置)な扱いになります。

 国や地域だけじゃなく。中世ヨーロッパ風、和風、SF風など複数の世界があっても同じです。


 スポットライトが当たらない地域や世界をメインで遊びたいプレイヤーはだんだん不満をつのらせて、やがてゲームからドロップアウトしてしまう。私もそうでした。


 果たして、小説の場合はどうなんでしょうか。光が当たらなければ、自分でお話を書くって手もあるだけ。救いがあるような気もします。


 誰も迷わない、一本道のドラクエは偉大でした。

 でも、旅行気分で行き先を選びたい時もありますね。


 世の中には「スーパーロボット大戦」のように、いくつもの世界観が絡みながらも上手く調和してるケースのシナリオもあります。私はああ言うのが好きです。

 説明不要のヒット作の共演だからこそ、なんでしょうね。


 拙作「勇者になりきれ!」は、∀ガンダムのごとく「すべての異世界ものをひとつにまとめる」狙いがあって。背景設定として、異世界ものがやたら量産される現代の説明不要な状況まで、取り込んでます。


 色々な世界から氷都市にキャラクターが集まりますが、さすがに本編では描かれない世界もあるでしょう。いつか誰かが、二次創作の輪を広げていってくれるような。そんな作品を書きたいものです。


 分散ではなく集約。鍵はそこにあるのかもしれません。

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