《依頼完了。そして1人目?》

ゴブリンに捕まっていた3人と別れた俺は南東に飛んでから今度はランドの街に向かっている。


南東に飛んだのは3人にランドにいると知られない為。もし、興味を持たれて街に戻って来られても困るからだ!


ランドの街が近くなってきたから誰もいないのを確認して地面に降り立つ。昼頃に依頼に出てから、もうかなりの時間が経ちもう夕方になっている。


ランドの街に戻った俺はギルドに向かう。


ギルドに入ると中が少し騒がしい。耳を澄ませてみると、


「絶対あの森で何か起きてるって!」「面白そうだから誰か見てこいよ。」「今、森に入ったらヤバそうよ。」


など。他にも色々聞こえてくる。何か嫌な感じがするが俺はクレアさんがいる受付に向かう。何故か表情が少し暗いようだ。


「クレアさん。依頼から戻ったんで処理をお願いします!」


俺が声をかけるとクレアさんは俺に気付き表情を明るくする。


「ケント君!無事だったのね?」


そう言って出迎えてくれる。


「無事、ですか?」


俺が不思議そうに聞くと、


「ケント君が行った森で爆発が起きたでしょ?街からも森の方から煙が上がってるのが見えたし、近くにいた冒険者からも爆発音が聞こえたってギルドに報告が来たのよ!ケント君も森に行ってたから聞いたでしょ?」


そう言ってくる。爆発音が聞こえた奴がいたのか!つまりギルドの騒ぎって俺のせいか!音が聞こえただけみたいだし俺の事はバレてないよな?


「そんな事があったからケント君が心配だったのよ?まあ、本人は普通に帰って来たけど。それよりケント君は森で何か見なかった?」


心配をかけてしまったのか。表情が少し暗かったのもそれが理由みたいだな。それより、なんて答えればいいのか。俺のせいって言うわけにもいかないしな。うん。誤魔化そう。


「確かに何か爆発音は聞こえましたけど特に何も見ませんでしたよ?俺はあまり森の中までは入ってないので。」


俺はそう答えた。すると、


「まあ、そうよね。ゴブリンを倒すだけなら手前の方にいるから奥の方まで入る必要はないしね。まあ、わかったわ。それで?依頼の処理で良いんだっけ?」


そう言って納得してくれた。


「はい。これがゴブリンの耳が入った袋です。」


俺は"収納ストレージ"を唱え、袋を取り出す。


「じゃあ、確認するわね?はい。5体の討伐を確認したわ。これが報酬の金貨10枚よ。これで依頼完了ね!」


確認が終わったクレアさんが金貨が入った袋を渡してくれる。俺は袋を受け取り、気になったので森の事を聞いてみる。


「それで、森の事はどうするんですか?」


俺がそう聞くと、少し面倒そうな顔をして、


「そうなのよね。何かが起きた以上、複数のパーティーによる調査を行わないといけないのよね。ああ、ほんと面倒だわ」


そう言って頭を抱えている。すみません!


クレアさんが頭を抱えているのを見てると聞かないといけない事があるのを思い出した!


「そういえば例の人はまだ戻ってませんか?」


俺が転移者の事を思い出して聞くと、


「え?ああ、探してる人ね。そうね、まだ戻ってきてないわね。何かあったのかしら?」


一瞬、何の事か分からない顔をしたクレアさんだが、すぐに思い出して心配そうな顔をして答えてくれた。まだ戻ってないのか。


「分かりました。じゃあ俺はもう帰りますね」


「ごめんね。帰って来たらすぐに教えるから。じゃあ、さようなら。」


俺が返事をして帰ることを伝えると、探し人の報告が遅くなっていることを謝ってくれてから見送ってくれるクレアさん。


俺は気にしなくて良いと伝え入り口に向かった。するとギルドに誰かが入ってくる所だった。


「やっと着いた!」


「やっとかよ。足手まといのせいで帰るのが遅くなったじゃねえか!」


「ほんとだよ。回復魔法が使えるって言うから仲間に入れてやったのによ。結局、大事なところで魔力切れで足を引っ張るしよ。」


「ご、ごめんなさい。」


人族の男女4人組のパーティーのようだ。4人のうち、女性の1人が入り口にしゃがみこんでしまう。男2人はもう1人の女性に罵声を浴びせている。


「お前、使えないからパーティーから出ていけ。な、頼むから!」


男の1人がそう言うともう1人の男も、


「大体、シルビアが怪我をしたのだってお前が魔物にビビったせいだしな。抜けてくれるよな?」


そう言って女性を責める。しゃがみこんでいる女性は特に何も言わないが視線は責めている。


責められている女性は俯いてしまって何も言い返さないが、足元には涙が落ちる。


結局、さんざん文句をつけた男2人ともう1人の女性は受付で話を済ませギルドを出ていってしまう。


俺はというと目の前でそんなやり取りを行われ気まずくて動けないでいた。すると泣いていた女性が顔をあげる。思ったよりも若い。


「あ!」


顔をあげた女性が俺を見て驚いている。そして、俺に近づいてくる。凄い近い!顔はさっきまでの涙で濡れている。


「え?な、なに?」


俺が戸惑っていると、


「あ、あの。森で助けてくれた獣人の少年だよね?あの時は、お礼も言う暇もなかったから。あの時は助けてくれてありがとう。」


そう言ってくる。ああ、思い出した。確か街に着く2日程前に森でサイクロプスに襲われてたパーティーか。


確かこの人は、魔力が切れたとか言ってた人だな。あの時は、助けた俺に向かって罵声を浴びせてきた男達に呆れて回復だけして飛び去ったんだよな!


それにしても、この人。あの時は俺の事を怖がってたのに今は平気なんだな。


「あの時は怖がってたのに、今は俺の事怖くないのか?」


俺がそう聞くと、


「あ、あの時は突然の事でビックリして。それにあの時、怖がったのは獣人族の人は人族に酷い目に遭わされてる人が多いから何かされるかもって。あなたは強いみたいだから。」


なるほど、仕返しでもされるかと思ったわけだ。俺が女性と話していると後ろからクレアさんが叫んできた。


「ケント君。彼女。彼女よ!アンナさん。その人があなたが探してたはんばーぐを考えたアンナさんよ!」


受付から身を乗りだしこちらの方を指差すクレアさん。この人がハンバーグを作った人?


「「え?」」


俺と彼女の呆けた声が重なった。

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