#2.ワイルドなゆでたまご

 ちょっと待ってよ。



「お願いしますよ。そこをなんとか」


「君ねえ」


「じゃあ、あんたがたは目障りな人間すべてを排斥してそれで通るんですか」


 世の中どうしても、感謝の気持ちとか、あってもいくらでも助かる、正直に生きられる方法があるでしょうよ。


「ほう、ようするに、私たちがやっていることはネクロノミコンであると……秘術はお見せできませんなあ。それですと、厄介です」


 けち。


「なんとか。そこをなんとか、お願いします」






「キックかまそうかと思った。こいつら、今更隠し事なんてできねぇって。証明する前に、なんとしてもキックしてぇ」



 実在が証明される前に、と言いたいわけね。


 ピーターソンの死体が暴かれる前に。


 なるほど、なるほど。



「ばれてるようだ。いくらなんでも、あそこまで強堅とは」


「あんな感じでひよわな私を演出すれば、なんとかなるだろうって感づもりだったけど……」


「変わんねぇ……」



 ばれてる線で発想の転換をした方が早そうだわ。


「ちきしょう。なんとかしなければ。どうやって解決すればいいか、わからねぇ」


 ぼちぼち行きますかね……。



 冗談でも一般人には見られない、霊ってやつが見られるのは、彼女たちの特技だ。



「見えるぜ。素人がよびさました、悪霊が」


 いきいきしてるな。


「おもしれぇもの、見た」



 待機していた姿勢から、ラピッドソンがやや身を乗り出そうとしている。


 止めたけど。



「感づくなよ……棺桶の存在を見抜かれないよう、この間から肚づもりを決めてたようだ」


 必要ない情報を与えれば、どうあっても動き出さずにはいられない相手が悪い。


「どうせ、何もわからん子供とかが、魔術道具の使い方を読んで、試したんだろう」


 まさにゆでたまごのようにプリンプリンの4歳児が犯人だ。


「プリンプリンね。皮もついていそうな、赤ん坊じゃねーか」


 その前に、いつものやつ。



 ラピッドソンは不遜な顔をあげ、車の天井を見上げ、唱える。



「ほいほい。……アーメン」


 気色悪いけど、神様の名前を唱える。


「ああ、落ち着いた。叫びだしたくなるところだったぜ」


「これから、犯人に接触する」


「気をつけろよ」


 まかせとけって。







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