SS小説用~テーマ「箱」~

箱の行方

両者、並んで立っている。

 Mはブラウン管テレビの後ろの「箱」が何処に行ってしまったのか気になっていた。


M「箱型テレビは薄型テレビになりました。画面の後ろの箱は何処に行ってしまったのですか」

T「正しくはブラウン管テレビです」

M「答えて下さい、画面の後ろの箱は何処に行ってしまったのですか」

T「時代に呑み込まれたんです!」

M「それじゃあ説明になってないですよぉ! だっておかしいじゃないですか! あの、後ろのごちゃごちゃした配線とか、基盤とか! そういうの、皆時代に吸い込まれたって言うんですかァ! こうやって、しゅごーって! こうやって! こうやって!」

 変顔を使って吸い込むような動作

 それにT、キレる。

T「違ぇよ!」

M「じゃあちゃんと答えて下さいー」

 T、呆れたようなため息をつく。

T「小型化の波だよ」

M「ほう」

T「色々な物が最小限の容量で解決できるようになったからブラウン管テレビの後ろの箱も必要なくなったの」

M「じゃあ箱型電話があんなに薄くなったのも小型化の波?」

T「初期の携帯電話の事か?」

M「そうそう」

T「まあ、そうだな。あらゆる箱型電子機器がどんっどん薄くなってどんっどんぺらぺらになっていく。昔は二つの薄い箱から成り立ってた携帯電話も今や一つの薄い箱だ」

M「へえ」

T「それに、最新の画面は最早箱じゃなくて『紙』らしいぞ」

M「え、ぺらっぺらなの?」

T「ああ。ぺらっぺらだそうだ」

M「へえ、ぺらっぺら」

T「うむ」

M「じゃあその消えた箱は皆画面に吸収されたわけだ」

T「んまあ、そういう事になるな」

M「で、通信販売のお荷物を入れる『箱』として生まれ変わったわけだ」

 それを聞いて少し驚くような顔をするT。

 Mは前を向いてうっとりとするような表情を保つ。

T「……誰が上手い事言えっつった」

M「え?」


 暗転

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