第43話

「お待たせ」


「そんなに待ってないよ、じゃあはい」


「え?」


 清瀬さんはそう言うと、再び俺の手を握ってきた。

 俺は再び顔が熱くなるのを感じた。

 

「あ、あの……清瀬さん?」


「ん? 何?」


「ず、ずっとこれで行くの?」


「ダメ?」


「え……あ、いや……い、良いけど……」


「じゃあ、これが良いな~」


「わ、わかった……」


「ありがと! じゃあ次はどこに行こうか!?」


「そうだなぁ……昼も近いし、ご飯でも食べに行こうか」


 俺たちはそんな話しをしながら、映画館を後にした。

 食事をする為に俺たちはファミレスに入った。

 お昼少し前だったので、すんなり入る事が出来たが、店内は少し混雑していた。


「何食べる?」


「私はパスタかな? 春山君は?」


「う~ん……どうしようかな?」


 どうするかな?

 好物のハンバーグにするか……それともグリルチキンにするか……。


「そう言えば、ハンバーグ大好きだったよね? やっぱりハンバーグ?


「あぁ、やっぱり美味そう……え? なんで清瀬さんがその事を? 俺話したっけ?」


「あ……いや、なんかそんな気がしたんだぁ~当たった?」


「あ、そうだったんだ」


 そんなことを言った清瀬さんだったが、本当にそうだろうか?

 清瀬さんなんで俺の好物を?

 考えすぎかな?

 俺と清瀬さんは注文を済ませ、料理が来るのを待った。

 

「ねぇ、清瀬さん」


「何?」


「清瀬さんって、休日は何をしてるの?」


「ん? 本読んだり、友達と買い物に言ったり、遊びに行ったりかな? あ、春山君の事も考えてるよ~」


「それ本当かよ?」


「本当だよぉ~、今頃何してるかな? ってねぇ~」


「その頃俺は、多分直晄とゲーセンに行ってるな」


「へぇー良く行くの?」


「まぁね、格ゲーしたり、クレーンゲームしたりしに行くんだ」


「私はあんまり行ったことないんだよね、ゲームセンターって……ねぇ! この後連れてってよ!」


「え? 良いのか? 洋服見に行ったりした方が楽しいんじゃ……」


「春山君と一緒ならどこでも楽しいよ! ねぇ行こうよ!」


「ま、まぁ……清瀬さんが良いなら良いけど」


「やった! じゃあ行こう!」


 そんな話しをしている間に、俺と清瀬さんの料理が運ばれてきた。

 俺たちはゆっくり昼食を取る。

 そう言えば、女子と食事なんてここ最近では久しうぶりだな……。

 いつもは直晄と一緒に食事をする事が多かったし……。

 やっぱり男と比べて女子は飯を食うのが遅いんだな。

 俺は清瀬さんのスピードに合わせて食事を勧める。


「ごちそうさま」


「ふぅー食った食った……」


「うふふ」


「ん? どうかした?」


「ううん、私の食べるスピードに合わせてくれてたんだなって……ありがとう」


「え? あ、あぁ……バレてた?」


「うん……私、春山君のそう言うとこ好きだよ」


「え!?」


 笑顔で好きと行ってくる清瀬さんに、俺はまた自分の顔が熱くなるのを感じた。

 きっと俺の頬は赤く染まっているのだろう。 清瀬さんは俺の事を良く見てるんだな……。 俺たちは食事を終えて、ファミレスを後にし、近くのゲームセンターに向かった。

 

「やっぱり混んでるな……」


「へぇ~人がいっぱいだねぇ~」


「さて、何する? メダルゲームなら、簡単に遊べるけど?」


「じゃあ、それやってみようかな」


 俺たちはメダルゲームをやることにして、メダルを購入した。

 ゲームは二人で座って出来るプッシャー系のゲームにした。


「タイミングを見計らってメダルを落とすんだ、そうすると落ちたメダルが他のメダルを押して、手前のメダルが落ちて来るんだ」


「へぇ~これを繰り返してメダルを増やすの?」


「うん、後はこのポケットにメダルを入れると、液晶の数字が動き始めるんだ、三つの数字が揃うと大当たりで大量のメダルが貰えるっていうゲームだよ」


「へぇ~結構面白いね……あ! 液晶が動き始めたよ!」


「抽選が始まったんだね……お! いきなり大当たりだ!」


「やったぁ! いきなり200枚だって!」


「こりゃ追加の資金投入は無さそうだな、序盤からラッキーだね」


 俺たちは話しをしながら、メダルゲームを続ける。


「ねぇ、春山君」


「ん? 何?」


「そろそろ、私の事……名前で読んで欲しいなって」


「え? で、でもそれは……」


「呼び方くらい良いじゃん、ダメかな?」


「いや、そう言う訳じゃないけど……」


「春山君も私のことを彩葉って読んでよ」


「で、でも……いきなりは無理だよ……」


「恥ずかしい? 湊斗君」


「ま、まぁね……慣れるまでは時間が掛かりそうだよ……えっと……い、彩葉……さん」


「さんは要らないよ?」


「う……からかわないでくれ」


「うふふ、冗談だよ」


 清瀬さんは俺の方を見て笑みを浮かべながらそう言ってくる。

 清瀬さんが楽しそうで何よりだが、女子を名前で呼ぶなんて今までしたことが無い。

 ん? てか、彩葉って……なんかどこかで最近聞いたような……何だっけ?

 そんなことを俺が考えていると、急にゲームの台から大きな音が鳴り始めた。

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