第41話

「で! 返事はどうするの?」


「え……あぁ……えっと……どうしようかな」


「付き合っちゃえば良いじゃ~ん!」


「そ、そうだね……」


 僕は白戸さんと話しながら、適当に返事を返す。

 なんだか、こんな反応をされると……正直どうでも良くなってきた……。


「僕が誰かと付き合ったら……もうこうして白戸さんとは帰れないね……」


「え……」


 なんとなくそんな言葉を僕は口にした。

 はぁ……脈無しかな……。

 僕がそう思っていると電車がやってきた。


「あ、電車来たね」


「……え? あ、そ……そうね……」


「どうかした?」


「べ、別に何でもないよ!」


 白戸さんはそう言いながら、僕の後に続いて電車に乗る。

 さて……この手紙の返事をどう断るか……いや、僕こそ新しい恋に一歩踏み出すべきなのかな?

 僕はそんな事を考えながら、自宅に帰宅した。





「じゃあ、またね」


「うん、バイバイ」


 私、白戸芽生は同級生の栗原君と駅で別れ、自宅に向かって歩いていた。

 私は電車に乗っている最中、電車に乗る前に栗原君が言った言葉が引っかかり、その事についてずっと考えていた。


「……まぁそうよね……一緒に帰る訳には行かないわよね……」


 先程栗原君がラブレターを貰っている事を目の当たりにし、少しからかう感じであんな事を言ったけど、実際そうよね。

 彼女が居るのに他の女と一緒に下校する訳にはいかないわよね?


「……そしたら一人か……」


 私はそう考えると少し寂しく思えてきてしまった。

 下校する時、最近はずっと栗原君と一緒だった。

 栗原君は顔立ちも良いし、性格も優しいから女子にモテる。

 だから、最初は『付き合ってるの?』なんて何回も聞かれたり、一部の女子から良く思われて無かったけど、今はそんなことは無い。

「あれ? なんで私……寂しいなんて思ってるんだろ?」


 別に一緒に帰る相手なんて、他の女子の友達でも良いはずなのに……。

 きっとあれね……私の周りが最近告白されたりしたりが多いからよね?

 なんか置いていかれた感じするもんなぁ~。

「はぁ~私も彼氏とか作った方良いのかな?」


 まぁ、そんな事言っても相手が居ないし……。

 なんて事を私が考えると、私の頭の中にふと栗原君の顔が浮かぶ。

 いやいや、なんで栗原君の顔が浮かぶのよ!

 全然そんなんじゃないから!

 栗原君とは……ただの友達だし!

 

「いやなんで私一人でこんな焦ってるのよ……」


 はぁ……疲れてるのかな?

 とりあえず早く家に帰ってベッドに横になろう。

 明日からゴールデンウイークだし……。

 




 ゴールデンウイーク初日。

 天気は最高に良かった。

 雲一つ内青い空が広がっていた。

 俺は朝早くに起きて朝食を食べ、出かける準備をしていた。


「よし、これで良いか……」


「女ね」


「うぉっ! ビックリしたぁ……だから音も無く俺の部屋を覗かないでくれよ!」


 俺が鏡の前で自分の服装をチェックしていると、母さんがドアの隙間からこちらを見てそう言った。

 なんでどっかの家政婦みたいな覗き方をしてくるんだよ……。


「何? あんた今日はデート?」


「ま、まぁ……」


「ふぅ~ん……じゃあ、これ持って行きなさい」


「え? 何これ?」


 そう言って母さんが渡してきたのは、茶色い紙袋だった。

 俺は中身が気になり中を覗く、そして母さんに叫んだ。


「いるかっ!!」


「何を言ってるの! 間違いは起きてからじゃ遅いのよ! 責めてちゃんと準備をしていかないと!」


「だからって親からこんな物貰いたくねーよ!! 色々気まずいわ!!」


「大丈夫よ、もう母さん達は使わないから」


「そう言う事じゃねーんだよ!! しかもなんで朝から親のそんな事情を聞かされなきゃいけねーんだ!!」


「お父さんは若い頃も全然誘ってくれなかったわ、仕方なく母さんが襲ってたけど」


「いい! 話さんで良い!! 聞きたく無い!」


「まぁ、なんでも良いけど、子供は作るなって言いたいのよ、まだ高校生なんだから」


「心配しなくても、そんな事にはなんねーって、じゃあ俺もう行くから」


「はいはい、気を付けて行ってらっしゃい」


 俺は母さんに見送られて自宅を後にした。

 なんだか少し緊張してきたな……清瀬さんと学校以外で会うの初めてだし……。

 自宅から映画館までは電車で20分くらい、少し早めに出てきたので時間遅れること無く、待ち合わせ場所の映画館に到着した。


「うわっ……結構人居るな……」


 ゴールデンウイーク初日とあってか、朝から映画館の中は混雑していた。

 

「清瀬さんはまだ来てないか?」


 約束の場所に行ったが、清瀬さんはまだ居なかった。

 俺はスマホを弄りながら清瀬さんが来るのを待った。

 少しして俺の視線は急に暗くなった。


「え? な、なに?」


「だ~れだ?」


 そう尋ねてきた声に俺は聞き覚えがあった。 俺は笑みを浮かべながら、その人の質問に答える。


「清瀬さん?」


「おぉ~当たったねぇ~」


 そう言って清瀬さんは俺の背後から俺の正面に出てきた。

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