暗黒の森と深紅の洪水

「どうしてこんなことになるんですか!?」

 あの「戦い」から1日後の部室内で、香帆ちゃんが憤慨を込めて発した言葉である。

 そんな彼女を、僕は、鼻から生暖かいものが流れるのを感じながら見ていた。


 香帆ちゃんが着ていたのは、あの日と同じ戦士服。ただし、ズタズタになっている。スカート部分を大きく裂けて、純真無垢なアクアカラーのソレが見え隠れしていた。一応見せパンなんだろうけど、スカートの破れ目からチラリと見えていることが、僕の男としての性を刺激してしまったようだ。


 お腹の部分も布の部分が無造作に剥ぎ取られ、おへそが顔を出している。


「褒め殺しをする剣士にやられて、闇の世界に落ちたのよ」

「そんな……」

 香帆ちゃんは愕然とした。美里愛ちゃんは「剣士にやられたから」という理由で、その服をハサミでズタズタに切り裂いてしまったんだ。


 香帆ちゃんがこんな末路をたどるなんて、僕は認めないぞ。こうしている間にも、何で鼻からツーッと流れてくるものがあるのかも、わからないぞ。


 次の瞬間、美里愛ちゃんが自らのブラウスを一気にはだけ、ボタンを弾けさせる。ブレザーと一緒にストンと落とすと、ダークグリーンで、レース地を被せたタンクトップが露わになる。こちらも裾があまりにも短くて、へそを隠せていない。背中からは、コウモリのような羽がチラリと見える。


 美里愛ちゃん、あなたは正気ですか?そう思っている間に、彼女は残された制服のリボンをほどき、投げ捨てた。

「私は暗黒の森の案内人。あなたは新しい彷徨い人ね、どうしてここに来たの?」


 彼女はけだるい口調で香帆ちゃんに話しかけながら、スカートのファスナーをおろした。抑止力を失ったスカートが、力なく美里愛ちゃんの足元を滑り落ちた。同じくダークグリーンで、三角気味にモコモコとした見せパンが、堂々と現れた。


 よく見ると、頭には、主張控えめな悪魔の角が……。

 美里愛ちゃんが僕に流し目を向ける。これは、アンタへのメッセージよとでも言わんばかりに。一体何のメッセージだよ。

 そう考えているうちに、僕の鼻は限界を超えてしまった。

 美里愛ちゃんは、深紅の洪水に溺れる気か。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る