--- 波紋 [ 再録/2005年 ]

おおよその目測で

空の遠さを計って 僕らは投げた

足元の石ころは

まるで無駄のない翼のカーブを描いて水面を撃った

僕らは空を撃ちたかったが

揺らせたのは 水面の幻だけだった


しかしその間だけ確かに

世界は壊れた、僕らの手で

空を歪め、光を曲げ

映る幾つかの人影は知らない顔ばかりになった

世界とは

僕らは知った、世界とは


きっと鏡は優しさのようなもので

僕ら子供を安心させる光景しか返してはくれない

毎夜 悪夢を見ずにすむように

いつか一人で薄暗い道も歩けるように


大人は何を見ているのか

ここは 本当はどんな世界なのか


僕らは石を投げた

足元の石を次々と拾い

それでも空を狙って投げた

信じていることを 信じたかった

誰も壊せなくなるまで 鏡を壊したかった


悪いものなど見ずにすむように

僕らの後を来る子供が泣かないように


それが儀式で僕らの目は潰れてしまった。




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