蹴り

何を言っている?打撃で沈める……?

「笑止!」

剣を振るう。

矢張り小娘。魔法という存在を知らないで自分の非力な細腕で全てを如何にか出来ると思い込んでいる。

この鎧には、小娘の世界には無い物理攻撃を完全に無効化する効果が有る。

それは、力がどれだけ強かろうが関係無い遮断効果。

こちらが一切傷付かなければ、たとえ相手に針一本分ずつしか手傷を与えられずとも、最後は確実に私が勝つ!

「小娘!貴様は魔法の力を舐めた!」

大剣を横薙ぎに振るう。

小娘は素早く体を反らして回避する。

横薙ぎを途中で止め、剣を振り上げ、叩き落とす。

またしても避けられた。


ガキン!


足元で金属が捩り曲がる音がする。

小娘の回し蹴りが膝側面の鎧を捻り曲げていた。

しかし、私の膝には傷一つ無い。


あれだけの大剣をあの速さで振り回す膂力はある。

大剣をよくもあれだけ使えるものね。

でも、そんなに速くないから避けるのはラク。

横薙ぎをブリッジして避け、強引に降り下ろされた大剣をブリッジから戻りながら右側に回り込む。

左足を蹴り上げつつ体を捻る。

ガキン!


回し蹴りが金属を砕く音がするも、相手は立っている。

本来なら膝の皿が爆散する筈なのに立っている。

更に言えば、捻れ曲がった鎧が巻き戻したかの様に勝手に直っていく。

ここら辺が魔法の世界とか異世界っぽいなぁ。

鎧を隈無く蹴り砕いて鎧をスクラップ……は無理か。


ブン


……よし、一度で駄目なら…だ。

大振りな一撃を避けて同じ場所を狙う。


左足を蹴り上げつつ体を捻る。

ガキン!


膝側面の鎧を砕く。

しかし、今回はそれで終わらない。

蹴った反動で左足を戻し、地面を再度蹴りつけて同じ場所を蹴る。


ガキャン!


音が変わった。

でも、未だ未だ!

更に蹴った反動でまた左足を戻し、地面を蹴りつけて三度同じ場所を蹴る。


ガギィ!!


ミリ単位で同じ場所を同じ角度で三度蹴る。

本来生身で喰らえば、良くて骨折。

悪ければ、骨の一部が粉砕されてレントゲン写真に映らなくなる。

さぁ、どうかな?


ブン


慌てたように大剣が飛んできた。

効いてない訳じゃないけど………って所かな?

よし、発想の転換をしよう。

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