27
目を覚ますとスッキリしている。
あ、また寝てたんだ。
枕元の時計を見ると、針は14時を過ぎたところを指していた。
お腹すいたな。
リビングへ行くとソファーで坪内さんが転がっている。
寝ているのかなと思い覗きこむと、うっすらと目が開いて腕を捕まれて抱き寄せられた。
坪内さんの上にのし掛かる感じになって慌てて起き上がろうとする。
だけど腕の力が強くてほどけない。
「つ、坪内さん~また寝ぼけてるんですか?」
坪内さんの胸からかろうじて顔だけ上げたけど、お構い無しな坪内さんは更に強く抱きしめる。
「寝ぼけてないよ。秋山の熱を計ってるだけ。」
そう言いながら、右手は私の腰に回したまま、左手でおでこを触ったり首筋を触ったりして体温を確かめる。
坪内さんの大きくて少しひんやりした手が私の肌に触れるたび、ぞわぞわと熱を帯びていくようだ。
「熱、下がったっぽいな。よかった。」
本当に安心した声で言うから、胸がきゅんとなる。
いや、それよりも、触れられて熱が上がってしまうのではないかと内心ひやひやしていたよ。
そして、確認が終わったなら私を解放してください。
もがいても呼び掛けても全然解放してくれないし、もしかしたらそのまま寝てしまうのではと思うくらいにあたたかい。
なんだかもう諦めて、私は坪内さんの胸の中で「お腹すいた」と呟いた。
その言葉に、ようやく腕を解いてくれる。
むくりと起き上がると、坪内さんは私をキッチンへ連れていく。
「おかゆ作った。」
「え、本当に作ってくれたんですか?」
びっくりして目を見開いた私の前に出てきたのは、水分を吸いまくったお粥。
いや、お粥にしては色が茶色い。
これはおじや?雑炊?
「うーん、延びた。」
「延びたって、麺じゃないんですから。」
どちらにせよ、私が14時過ぎまで寝ていたからこうなったわけで、ちょっと申し訳なくなる。
「いただいていいですか?」
「いや、延びてるしやめとけって。」
「私、柔らかいご飯好きなんです。いただきまーす。」
呆気に取られたような顔で見てくる。
しっかり味だな。
こりゃお粥じゃなくて雑炊系だ。
でも美味しい。
ネギも卵も入ってる。
本当に柔らかいご飯が好きなので、どんどん食が進む。
「坪内さん、ちゃんと料理できたんですね。」
「惚れ直しただろ?」
パクパク食べる私を満足そうに眺めながら、坪内さんは得意気な王子様スマイルを向ける。
そんな彼に、私は素直に、
「はい。」
と答えていた。
坪内さんはポカンとした顔をしている。
イケメンなんだから、そんな面白い顔しちゃダメだよ。
いや、それもまた貴重だから私の頭のアルバムにしまっておこう。
坪内さんが眉間にシワを寄せる。
「熱のせいか?」
「何がですか?」
尋ねる私に、坪内さんは手を口元にあて考えるようにしてから、
「俺のこと惚れ直しただろ?」
と言った。
とたんに、頬に熱を帯びる。
「はっ?何言ってるんですか!」
私の言葉に、「おいおい、無意識かよ」と、坪内さんはお腹をかかえて笑いだした。
どういうこと?
私、何か言ったっけ?
意味がわからなくてムスっとする私に、「元気になってよかったな」と、また王子様スマイルが降ってきた。
「…ありがとうございます。」
私は一応お礼を言った。
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