第6話 高価で高画質なビデオカメラ

 紗美が私と女月のアイドル活動に加わってから次の日の放課後、この日からは新たに紗美も加わっての投稿の為のダンスの練習が始まった。


「私達のアイドル活動で最も大事なのは、ダンス。桜森さんはダンスは出来る?」


「わたくしは、こう見えてクラッシックバレーを習っていた事がありますから、きっとダンスも踊れますわ」


「そう。ならきっとダンスも踊れるわね。じゃあ、今から私がダンスの簡単な踊りを見せるから、それを真似してくれる」


「わかりましたわ」


 そう言って、女月は紗美にダンスの手本を見せる為、簡単なダンスを踊り出した。そんな女月の簡単なダンスは、意外と早く、音楽もかける事もなくすぐに終わった。


「まずは手始めに、さっきの踊りを踊ってみてくれる?」


「わかりましたわ。こうですわね」


 そして紗美は、先程女月が踊った簡単な踊りを、踊り始めた。さすがは、クラシックバレーの経験者とも言える。簡単な踊りとは言えども、見事なまでのステップを華麗にこなし、女月が手本に踊ったダンスを見事に踊りきった。


 その紗美のダンスを見た女月は、あまりの上手さに驚いた様子でいた。


「思ったよりも、凄いわね……」


「でしょ! まぁ、さっきのは簡単でしたから、すぐに踊れましたけれども」


「なるほどね。でも、さっきのが踊れるのなら、これからやって行くアイドル活動でのダンスはバッチリね!」


「ありがとうございます!!」


 ダンスの評価を女月から褒められた紗美は、嬉しそうに喜んだ。





 その後、ダンスの練習の休憩中に、紗美はこれからのアイドル活動で使う予定のビデオカメラを、私達に見せてくれた。


「ところで、動画撮影に使おうと思っているビデオカメラは、これにしようかと思うのですが、どうかしら?」


「ホントに、これで撮影をするの?」


「良すぎるよ!!」


 紗美が見せてくれたビデオカメラを見た私と女月は、凄く驚いた。なぜなら、紗美が持って来てくれたビデオカメラは、当初の私が予想していた10万円前後のビデオカメラとは異なり、明らかにもっと値段が高い、いや、まるでテレビ局の番組スタッフが使っているビデオカメラの様である。


 そんな本格的なビデオカメラで、私達の疑似体験としか呼べないアイドルごっこの動画を映してくれるのであるのなら、大歓迎だよ!!


「ところで、このビデオカメラは、紗美さんが買ったの?」


「こちらにあるビデオカメラは、家にあるモノですわ」


「桜森さん、家にあるモノを、私達の動画撮影の為に、勝手に持って来てもいいの?」


「勝手に持って来たものではなくて、このビデオカメラは、親から貰ったモノなの」


「親から貰ったモノ!?」


「紗美さんの親って、凄いビデオカメラを持っているね」


 さすがに高そうなビデオカメラは、紗美が自分で買った物ではなく、親から貰った物であると言った。とは言うものの、こんなビデオカメラなんて、テレビ局の番組スタッフしか使っているところを見た事がないよ…… 紗美の家って、もしかして……


「ところで、紗美さん。この親から貰ったと言っているビデオカメラって、いくらぐらいのヤツなの?」


 私は、ホントは聞いてはいけないだろうと思いながらでも、紗美の持っているビデオカメラの値段を見いてみる事にした。紗美は親から貰ったビデオカメラであると言っているのだから、もしかしたらビデオカメラの値段は知らないかも知れないけれども…… これから私達のアイドル活動のパートナーとなるかも知れないビデオカメラなのだから、値段ぐらいは知っておかないと思い、私は思い切って紗美にビデオカメラの値段を聞く事にした。 


「確か…… 50万円くらいのモノですわ」


「ごっ、ごじゅうまん!?」


 紗美はあっさりと持って来たビデオカメラの値段を言ったが、このビデオカメラの値段を聞いた私と女月は、目が飛び出そうなくらい驚いた。もしも、こんな高価なビデオカメラを壊してしまったら、タダじゃ済まなさそうだ……


「こっ、こんな高価なビデオカメラなんて、本当に持って来ても大丈夫なの!?」


「そっ、そうよ…… 私達の動画撮影の為だと言っても、このビデオカメラはいくらなんでも高価過ぎるわ……」


 その為、私と女月は、たかがUTubeでのアイドル活動の為だけに、高価なビデオカメラを使っても良いのか、確認の為聞いてみた。


「大丈夫ですわ。わたくしも普段から何かを撮影するのに、このビデオカメラを使っていますから」


「普段から、このビデオカメラで!!」


 紗美は、普段の撮影でもこのビデオカメラを使っていると言ったのを聞いた私は、またしても驚いた。


「普段からって、もしも壊れたりでもしたらっていう心配はないの!?」


「確かに、壊れたりでも困りますけれども、壊さない様に使っていますから大丈夫ですわ。それに、壊れる心配をしていましたら、モノなんて使えませんわ」


 確かに壊れる心配をしていたら、ビデオカメラだけでなく、モノなんて使えませんねぇ。


「確かにそうだけど、どうして、親からそんな高価なビデオカメラを貰ったりしたの?」


「どうしたのって、親がいらなくなったとか言いましたので、代わりにわたくしが貰いましたの」


「いらなくなった50万もするビデオカメラを自分の娘にあげるなんて、親も結構凄いわね」


「まぁ、わたくしの親は、私以上にたくさんのビデオカメラを持っていますの」


「親も、ビデオカメラで撮影をするのが趣味だったの!?」


「そうですわ。そのおかげでわたくしにも、ビデオカメラでの撮影の趣味がつきましたの」


 なるほど、紗美のビデオカメラを使っての撮影の趣味は、親譲りであったのか。





 まぁ、とりあえず、紗美のビデオカメラに関する話は少し長く続いたが、ここからは、そんな親から貰った高価なビデオカメラを使って、撮影をされた映像をさっそく観る事になった。


「これから、使うビデオカメラになるのですから、このビデオカメラで撮影をした映像を観てみましょ!!」


 そう、張り切る様に言いながら紗美は、私と女月にビデオカメラで撮影をした映像を見せる為に、タブレットに入れている映像を見せてくれた。


「どんな映像だろ?」


「なんか、ワクワクするわね」


 女月と私は楽しみながら、紗美が観せてくれる映像を観始めた。


 紗美が手に持っているタブレットに映し出される映像は、動物の映像や、山や海などの自然の映像であったり、または、都市や田舎、その他祭にいる人物を映し出した映像である。


 そして、肝心の画質と言うのは、先日に私達が始めて動画投稿に使ったスマホでの映像なんかと比べると、あまりにも綺麗すぎる!! まるで、家電店で売られている最新の高画質な映像そのものだ。


 こんな映像で、これからの私達のアイドル活動の動画撮影が行われると思うと、楽しみ過ぎてテンションが凄く上がる。でも、あまりにも高画質過ぎるが故に、何もかも映ってしまい、少し恥かしいかも?


 そして、動画の映像が終わると、紗美はタブレットをカバンの中にしまった。


「ありがとう、桜森さん。私達の為に、ここまで綺麗に撮れるビデオカメラを用意してくれて」


「ほんとだよ。ありがとう!!」


 高価なビデオカメラで撮影をされた映像を観たあと、女月と私は、高画質で撮れるビデオカメラを持って来てくれた紗美に感謝の気持ちを込めて、お礼を言った。


「良いわよ、これくらい。さっ、休憩もそろそろ終わり、また練習をしましょ!!」


「そうね。高価で高画質なビデオカメラに失礼のないくらいのダンスが出来る様に、私達もダンスを頑張るわよ!!」


「そうだね。私も、もう少しダンスの練習をして、女月ちゃんや紗美ちゃんの様に上手くならないと」


 そして、この日の練習中の休憩は、紗美が持って来たビデオカメラの紹介でほぼ終わり、再び練習へと戻った。同時に、そのビデオカメラの高画質な映像に似合う様になるというひとつの目標も生まれた。

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