最終戦隊・ファイナルレンジャー ~Termination~

「大変だあ! ワルゴス帝国が攻めてきたぞう!」

繁華街の中心に出現した残虐ロボ・ワルスギールが、所狭しと暴れまわる。


「グッフッフ。今日こそ栃木県とちぎけんを破壊しつくしてやるのだ」

ワルゴス帝国の司令官・ワルプルギスは高笑いを浮かべながら、倒壊するビルの下で逃げ惑う人々を見下ろしている。

絶体絶命。すでに栃木県の命運は尽きたかと思われた。

しかし。



「そうはさせないぞ! ワルプルギス!!」

雄々しき声と共に、ヒーローたちが颯爽と現れる。


「ムムッ、今日もきおったか、小賢しいファイナルレンジャーめ!」

ワルプルギスの前に、最終戦隊・ファイナルレンジャーが立ちはだかった。



「お前たちの野望は、絶対に俺たちが阻止する!」

闘志に燃えるリーダー、レッドレンジャーが叫んだ。


「どうやら今日も、俺の活躍を見せる時がきたようだな」

本職はイケメン俳優の二枚目、ブルーレンジャーが口笛を吹いた。


「油断するなよみんな、今日も勝てるとは限らないぜ」

頼れる先輩肌、グリーンレンジャーがみんなを鼓舞した。


「わたしの魅力で、ワルゴス帝国もメロメロよ!」

Dカップのピンクレンジャーが、扇情的なポーズを取った。


「おいどんのパワーは岩をも砕くでごわす!」

カレーが大好物のイエローレンジャーが、どしんと四股を踏んだ。


「ふっ、今日の悪党どもは少し楽しませてくれそうだ」

シルバーレンジャーが、腕組みをしたままニヤリと笑った。


「今回だけは共闘してやろう。だが明日の俺は味方とは限らんぞ」

ときどき登場するブラックレンジャーが、意味深なセリフを言った。


「悪いが残業はNGなんでね。今日も定時で帰らせてもらうよ」

優良企業に勤めているホワイトレンジャーが、腕時計を見ながら言った。


「さっさと終わらせて、みんなでティータイムに洒落込みたいわねえ」

Eカップのストロベリーレンジャーが、官能的な息を吐いた。


「そうですわねえ、お姉さま」

Aカップのココアブラウンレンジャーが、甘ったるい声で相槌を打った。


「あらあら、元気な悪者たちねえ。今日もアタシが可愛がってあげる♡」

オカマのバイオレットレンジャーが、身をくねらせながら言った。


「今日の勝利をピンクに捧げるぜ!」

ピンクと付き合っているセルリアンブルーレンジャーが恰好をつけた。


「くそっ、どうしてこんな駄目ニート野郎なんかと……」

密かにピンクをストーキングしているラピスラズリレンジャーは嫉妬した。


「疲れを知らない子どものように、時が二人を追い越してゆく……」

シクラメンピンクレンジャーが『シクラメンのかほり』を歌った。


「行っけぇぇぇ、グラードン!」

10歳のルビーレンジャーはポケモンをやっていた。


「負けるなっ、カイオーガ!」

同級生のサファイアレンジャーもポケモンをやっていた。


「オレ、タタカウ。部族ノミンナノタメニ、タタカウ」

インディゴレンジャーは、インディゴとインディアンを混同していた。


「深淵なる宇宙電波が言っている……愚かな者どもを滅せよと……」

グレイに脳を弄られたグレイレンジャーが、昏い瞳をして言った。


「今日の俺は兄貴よりも強いぜ!」

レッドの弟であるワインレッドレンジャーが、兄の方を見ながら言った。


「お前たちの野望は、絶対に俺たちが阻止する!」

レッドのクローンであるカーマインレンジャーが、レッドと同じセリフを言った。


「エネルギー充填率100%……本日ノ戦闘態勢、トテモ良好……」

人造人間メタリックシルバーレンジャーが、機械音声で言った。


「どうだ、明るくなったろう」

大金持ちのゴールデンレンジャーが、札束を燃やしながら言った。


「カアカア」

からす色レンジャーが鳴いた。


「まあ勝てるっちゃあ勝てるかな。でも負けるっちゃあ負ける……」

玉虫色たまむしいろレンジャーが、玉虫色のことを言った。


「もー! 悪いことしちゃダメだよ! プンプン!」

萌葱もえぎ色レンジャーは、かわいかった。


「ふぉっふぉっふぉっ」

檳榔子染びんろうじぞめ色レンジャーは、どんな色なのか分からなかった。


「僕は勝つぞ! でも私は……わしは……わらわは……拙者の主人格は一体……」

多重人格のカメレオンレンジャーは、すでに心の平衡を失っていた。


「蟲が! 俺のスーツに大量の蟲が蠢いている!」

ペイズリーレンジャーも心の平衡を失っていた。


「…………」

セピアレンジャーの遺影は、ただ静かに笑っていた。


幻のインビジブルレンジャーは、今日も現れなかった。



「行くぜ、みんな! 世界を守るんだ!」

「おおっ!!」


30人のヒーローたちが巨悪に向けて走り出したところで、アイキャッチが入った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「メンバーの登場シーンだけでAパートが終わるのはいかがなものか」という苦情が殺到し、『最終戦隊ファイナルレンジャー』は1クール打ち切りとなった。

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