第30話 魔法の譲渡

早速、フォゴ島から戻ってきた俺達は映像と写真のコピーを柳沢さんに送る。ドラゴンサイトにもあげる必要があるので小島さんに渡して指示しておいた。


力の譲渡についてドラコから簡単な説明を受けた。

「まず重要なのはお互いが一糸まとわぬ裸の状態で一夜を明かす」

「その時に ピー をしてピーをすると譲渡できる」

ジェーンは真っ赤になりながらその話を聞いて下を向いている。恥ずかしくて顔を上げられないのだろう。


俺はドラコとの付き合いの長さからこれは嘘だと感じていた。

「ドラコはジェーンをからかってないで本当の事言えよ」

「ほほほ本当だぞ。別の方法でもできるって言うだけだけじゃ」

「じゃあその別の方法を教えてくれよ」

その話を聞いていたジェーンはドラコをめっちゃ睨んでた。


「そうか良いか。まずはトオルが魔法を発現させる」

「次にジェーンと手をつなぎながら魔法をジェーンの手に発動できれば譲渡は完成じゃ」


俺は魔法の発現は2度目なので簡単だと思い広場で焚き火用の木を集めて「火よ来い」「燃えろ」などと念じていたが中々上手く行かない。どうやら舐めていたようだ。 確か初回の時はオーラが変換されている感じがしたのでそれをもう一度再現してみようと思う。アレコレと1時間ぐらいしてやっと火をつける事はできた。


続いてジェーンと手を握って発現させるようにする。普通の握手ではなくて恋人にぎりって言えばいいんですかね。指と指を交互に入れて手を繋ぐ。ちょっと恥ずかしいのか俺は顔から汗が出て来た。ジェーンは平気な顔をしている。うーん俺はジェーンがよくわからなくなってきた。


余計なことを考えるのを止めてジェーンの手先に火がつくように念じていくが簡単にはいかない。すでに5時間は経過しただろうか。発現する状況は見当たらない 。一旦中止し翌朝から再開することにした。次の日の午前中にはジェーンの手から火を発動することができた。


「やったわ私やったのよ」

と大喜びで俺に抱きつくジェーン。

「よかったな。じゃあジェーン、一人でやってみな」


うーんと唸って入るものの何も起きなかった。

ドラコが言うにはしばらく修行すればできるようになるじゃろ。譲渡自体は出来ている。との事だった。



しばらくするといつもの男やもめ3人が集まっていた。

「徹さんドラゴンパークに動画と公文書を展示しようと思ってるんですが問題ないですよね」

「ドラゴンサイトで、すでに公開してるから大丈夫だと思うけど、念のために柳沢さんには聞いといてね 」

何やらメモを取り出す山田さん。優秀な人ってメモしてる印象が強いですよね。


「あーあと動画と古文書を展示してもスペースが余ってしまうのでドラゴンの生態とかを展示したいと思うんですが調べてもらえないでしょうか」

「生態ってどんなこと?」

「そうですね食べ物とか繁殖の仕方とか飛び方とかその辺を詳しく解説したものがあると良いと思うんですがどうでしょうか」


「食べ物は肉食なんで肉。特に牛肉大好き。野菜炒めも食べるから雑食かも知れん。繁殖の仕方がちょっとわからんな。飛び方は風魔法で補助してるって言ってた」


そこで加藤さんが口を出してきた。

「そういえば、多分糞とか今までその辺に埋めてましたけど DNA 検査とかされるとまずいんじゃないの」


「確かにそれはそうだ。至急手を打たないとまずい」


一旦話を切り上げた。焦った俺はすぐに柳沢さんに電話した。

「…というわけでドラゴンの糞とかが何者かの手に渡ると DNA とかが解析されてしまう危険性が高いんです」

「私もそれは気付いていませんでした。軍を通じて至急回収するように手配します。我が国が DNA を調べるのはいいんですよね?」

「本音を言えば嫌ですけど他に方法がないのでしょうがないと思ってます」


俺は心の中でドラゴンの鱗とかを IPS 細胞みたいにコピーされるのはちょっと困るなと思った。バイオテクノロジーの分野は注意が必要なのかもしれない。そう思いながら会議の予約を取り付け電話を切った

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る