18話:Kiki視点…主の敵は私の敵!

私の名は『キキ』。

私の名前は主殿が付けて下さった大切なものです。

今、私は主殿のSkillによって魔物であった体は主と同じ人の姿に変化している。

元の姿は【メデュール】と呼ばれる三つ目の小さな体の吸血蝙蝠でした。

元の姿の時にも色んな魔法を得意とし扱えていましたが、主と同じ人になれたことで思考能力の向上、魔力や能力が伸びました。魔物の姿では出来ない事も出来る様になりました。

主に感謝ですね。はい。


さて、この人間の身体となっての初めての実戦です。

相手は盗賊と言う身分に落ちた人間達です。

私の相手は4人の男。

愚かにも我が契約せし主に仇なす愚物共に油断なく裁きの鉄槌を下して行きましょう。


「おうおう、あっちの金髪ちゃんもレベルたけえけど、こっちもそれに負けてねえなぁ」

「そうだなぁ、あんな冴えなそうなガキンチョにはもったいないぜ」

「おう、銀髪のネエチャンよ。あんなガキ捨てて俺たちのもんになれ。いい夢見れるぜ」

「それはいいな。ガハハっ」


とまあ、好き勝手言ってますね。

はい。即刻処断決定です。

主殿に対しての無礼な発言をした時点で連中の裁定は決しているのです。

もとより殲滅は決定事項ですが。


(Skill発動…)


主殿と眷属契約によって得たSkill”主への忠誠”が発動した。

これにより私のStatus値が数倍に上昇するのが分かった。特に魔力が大幅に上昇していく。

Skillによって高まる自分の魔力が、相手の人間共が地を這うアリの様な小さな存在に見える。それだけの自分と連中との力量の差が理解できた。

そう圧倒的な差を理解した時だった。


「キキ、そいつらも大した事ないよ!」


とファン殿からの声が届いた。

そのファン殿の声に自分の気が高揚して高ぶり少し冷静でなかったと思った。

軽く深呼吸した後、ファン殿に答える。


「分かっています。ですが油断大敵と言う事もあります。ファン殿も気を付けて」


どこかファン殿も先程の自分の様に相手に対して軽く見過ぎているように感じたので油断しない様にと告げた。

ファン殿も「分かった!」と答えてくれた。

そのあとファン殿は主殿にも声を掛けていた。


「ああ、分かっている。俺達の事よりファンは自分の獲物を逃さず始末することを優先しろ」


と主殿がファン殿に返していた。

その際に主殿からこちらに視線が向けられた。

その視線からは『お前も自分の相手を優先しろ』と言ってるように感じた。

そして主からの信頼がその視線から感じ取れた。

ではその主からの信頼に応えないと。

ファン殿の方もどうやら動く様なので、私もファン殿に遅れない様にとこれから発動する魔法の魔法陣を自分の足元に展開する。

すると相手にする連中は全員が驚いた表情を浮かべた。


「あぁ!?なんだ、魔法って確か、詠唱して発動するもんじゃないのか!?」

「そんなの知らねえよ!?」

「た、確か、そうだった気がするぜ。以前、奪った戦利品の本に載っていたのを見た事ある気がするぞ」


人間の間では通常は魔法発動に際して使用する魔法の詠唱してから魔法を発動するのが一般的らしい。

けど私は魔法行使において詠唱なんて必要ない。

元より今は人の身であれど、私の元来の種族は魔物なのである。

魔物には人間で言う心臓の役割である【魔心核】の機能の一つで魔力を魔法エネルギーに変換する事で詠唱無しで行使できる。

普段使っている”口鏡”とか”索敵”能力はこの魔法エネルギーを応用して発動しているのである。


動揺している愚者共に私は右手を向ける。

連中が慌てて警戒するように武器を構える。だが動かない。迂闊に動けないように見える。

何の魔法を使うのか分からない以上無暗に攻めるのは得策ではないと考えているのだろう。

愚かです。

魔法タイプである私は接近されると不利となる。

魔法使いは接近される前に詠唱し魔法を発動し攻める。だから魔法発動の鍵でもある詠唱を相手は狙う。詠唱を邪魔すれば魔法を発動出来ないから。それに無防備な状態になることが多い。

しかし私には詠唱が必要なく何時でも魔法発動が可能。

だから邪魔をする事も出来ない。

そしてどんな魔法を使うのか分からないから攻められない。


まあこの連中くらいなら例え詠唱していても、近付かれても余裕で対処可能と思う。

しかし油断せず念を入れて相手が近付かないので、そのまま近づけない様にと私は連中を一か所に纏めて”封じる”ことにした。


魔法の発動と私の右手に警戒する連中。

そんな無駄な警戒をと思いつつ魔法名を告げた。


「…”封陣壁”」


そう告げると私の発動した魔法”封陣壁”の魔法陣が連中4人を包むように円を描いていく。そして無色の筒状の円の壁が出来る。もちろん相手には壁は見えていない。


「な、なんだ!?これ…!?」

「ぐわっ、なんだよ、まるで壁があるみたいに、くっ、集められる!?」

「このっ!ビクともしねぇ!?」

「おい!狭くなるんだ武器を振るなっ!?」


殆ど密着するくらい隙間の無い様に展開した。故に、何だか男共が”封陣壁”で形成された結界内にギュギュウに集められている様子が哀れなものに見えてくる。

何だか結界内に捉えた連中が叫んでいるけど、煩いので”静寂”の防音魔法を使う。


「ッ――!?」

「ッ--!?」


すると”封陣壁”内の連中の声が聞こえなくなる。

”静寂魔法”は意外と人間、特に魔法使いの相手には便利だ。

人間は魔法を駆使するには詠唱工程が必要だから。


さて”封陣壁”内の連中をこの後どうやって始末するのか考える。

相手の持ち物、つまり身包みを奪うと主殿が言っていたので出来る限り形ある様に仕留めたほうが良いだろうと考えた。


「これで全部っと!終わりだよー!」


少し離れた場所から余裕で元気なファン殿の声が聞こえた。


「…おや、ファン殿の方はもう終わったようですね。では私も決着を付けるとしましょう!」


綺麗な状態で倒す方法。

そう思い浮かべて”アレ”にしようと選びある魔法を発動する。


「…”窒息”」


そのままの意味。

結界内の空気を止める魔法。


「「「「ッ!?―ー!?」」」」


”静寂”の効果で中の音は聞こえないけど、結界内の連中が苦悶の表情で悶え苦しんでいる様が見える。結界は無色なのだ。

しかし視覚的に見ていて良いものじゃないと思い、私は結界内を”遮断”の魔法を使って結果内を無色から白色し見えなくする。

見た目では白い円の壁が森の中に立っているようです。

どこからか「エグイ魔法を使うな~」と言う主の声が聞こえて来たけど、聞こえなかったことにしましょう。


そして数秒後。

もういいでしょうと思い”封陣壁”の結界を解く。

結界内に捕らわれていた4人がバタリバタリとその場に倒れた。


……うん。見ないようにしましょう。

それは見るに堪えない顔で息絶えた者達だったとだけ言っておきましょう。



==========

~キキ~

詠唱無しで魔法発動出来ます。本当なら魔法名も告げる必要もないけど、イメージを確定させる意味で告げている。

【人間形態時、習得している魔法】

○空間魔法・”封陣壁”:分類【結界】。…魔法陣を形成し、魔法陣内の存在を封じ捕らえる魔法。魔力消費は維持している分多くなる。

○遠鏡魔法:分類【索敵】。…遠くの場所を映し出す魔法。光景や声なども映せる。

○静寂魔法:分類【防音】。…結界等の密閉空間内や対象の周囲の音を消す事が出来る魔法。魔法詠唱も遮断できる。

○窒息魔法:密閉された空間内の空気をカットする魔法。密閉された空間でのみ可能の魔法。

○遮断魔法:空間内の景色を白く染め見えなくする魔法。他にも自身の周囲の空間内を別の景色として映したりもできる。


~~ちなみに、ファンのケモノに対する感情は『情愛』。キキは『敬愛』である。

ファンはマスター大好きっ子。

キキは主として尊敬している子。

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