第6話 香織さん

とんかつを食べて、お腹一杯になったところで少しゲーセンで時間を潰し香織さんのBarへ

『お、開いてる』

時間は20:15。地下に降りる階段入り口の控えめな看板に電気がついている。


「こんばんわ~」

「あ、広木さんいらっしゃい!」


開店間際ということもあり、まだ他のお客さんも居ない(元々混雑するような店でもないらしいけど)とりあえず、いつものジントニックを頼み喉を潤す。


「そういえば、香織さんって1Fのブティックでも働いてるんですか?」

「あれ、話ししたことなかったっけ?

  ここのビルうちのお父さんの所有で、日中は1Fの店舗借りてブティックやっ

  てるんだ。

  これでも大学は被服科出てて、自分でも服とか作ってるんだよ。

  で、この店は元々お母さんがカラオケスナックやってたんだけど歳だし店閉

  めるって話が出たとき

  もったいないから譲ってもらって改装したの」

「すごいですね。この店も結構遅くまで営業してるのに昼間も働いてるんですね」

「まぁどちらも半分趣味入ってるからね。

  それに私このビルの上の階に住んでるのよ。だから疲れたらすぐ休めるし出

  勤時間も0分だからねw」


歌舞伎町在住でBarとブティック経営って何気に凄くないか?

ついでにビルオーナーって。。。


「歌いに来ましたよ~ お、広木さん早いねぇ」

「こんばんわ」


と仕事帰りらしき司君と達也さん。

司君は先週ライブで会ったけど達也さんはオフ会依頼で久々だ。


「二人で一緒に来たんですか?」

「いや、店の前の通りで偶然一緒になったんだ。

  それよりさ、美樹さんの件どうなった?仕事で毎週会うんだろ?」

「え、何それ?広木さんって美樹さんと一緒に仕事してるの?」

  そういえば達也さんは前回のライブ来てなかったからなぁ


というかこの人たち店に来るなりこの話って、人の恋話好きすぎだろ。。。


「そうらしいんだよね。この間のライブの時の美樹さんの反応見る限りお互いま

  んざらでもないみたいだし、新たなカラオケ仲間と我らが歌姫の恋路を応援

  しようかとねw」


いやいや絶対楽しんるだろ。。。


「今日打合せだったんだけど、仕事中だしお互い仕事の話しかしなかったよ」

「そうなの?つまんないなぁ」

「う~ん 美樹さんも真面目な人だからなぁ~

  広木さんも付き合い浅いけど真面目そうだし、俺としてはお似合いだと思う

  よw」


『つまらないって』やっぱり楽しんでるだろw

それに達也さんまで乗り気になってきたぞ。。。

とりあえず、話題を変えなくては。


「まぁ しばらく定例会で会うし何かあったら相談させてもらうよ。

   それより久々に会ったんだし歌おうぜ!」

「だね。人数少ないし香織さんも歌おう」


ということで何とか話題を変えてガボールカラオケ開始!


今日は登録されている楽曲をア行から司→広木→達也→香織の順で歌うという縛りのカラオケにした

まぁ皆マニアだから、上手い下手を別に考えれば大体の楽曲は歌えるんだよね。

普通のカラオケじゃ経験できないコーラスやハモリなんかも司君がいい感じに入れてくれるし、ここでのカラオケに慣れちゃうと普通のカラオケだと少し寂しく感じてしまうかも。


ちなみに香織さんの歌声は今回初めて聞いたんだけど、美樹さんが綺麗なソプラノボイスだとしたら、香織さんはアルト。音域も広くて落ち着く歌声。流石カラオケBarやってるだけはあるね。


そんな感じで3時間ほど歌いタ行まで到達したところで今日はお開き。

そろそろ終電が気になる時間です。


週末ならオールしたかもしれないけど今日はまだ水曜日だし、明日も仕事あるので店を出て駅に向かう。司君は明日休みらしく閉店まで飲むらしい。。


駅に向かう途中のファーストフード店。

『そういえば ここのマッ○で早瀬さんに初めて会ったんだったよなぁ』

カラオケオフの帰り、この店に寄らなかったら、忘れ物に気が付かなかったら、早瀬さんとの出会いも変わってたかもしれない。

少なくとも仕事先の担当者に好意を持つことななかったはず。

『とりあえず 次会ったら何話そうかな』


******************

Side 早瀬さん


時間は戻って18:00

広木がとんかつを食べていた頃、香織のブティック。


「香織先輩!!」

「ん? 美樹ちゃんじゃない。どうかしたの?」

「あの、先輩。IT業界の真面目そうな男性が好きそうな服ってどんなのですか?」

『何というかストレートな質問してきたな。。。』

「IT業界の真面目そうな男性?って広木さんが好きそうなのってことでよい?」

『お、顔真っ赤w 私の2個下なだけなのに乙女だねぇ~』

「IT業界の真面目そうな男性の趣味はわからないけど、前に広木さんが店に来た

  時に美樹ちゃんのスーツ姿素敵だったとか言ってたし、割とキャリアウーマ

  ン的なのが好きなのかもよ」

「ほ、ほんとですか!!」

「うん。だから仕事で会うときは、今みたいなスーツか、スーツっぽい感じのが

  いいんじゃないかな少し気崩して着るだけでもおしゃれに見えるだろうし、

  ずいぶん違うと思うよ。

  後は、外でデートする時ならうちの店で売ってるようなゆるふわ系の服なら

  はずれは無いと思う。

  美樹ちゃんの雰囲気にも合うしね」

「ありがとうございます。私会社と香織さんのお店とライブ以外はほとんど外に出

  ないし、スーツ以外の私服は香織さんの店のがほとんどで。。。」

「とりあえず、広木さんも美樹ちゃんに好意は持ってると思うから上手くやんな応

  援してるよ!

  今日はこの後どうする?店(Bar)に顔出してく?」

「あっ今日はこの後かなめと約束があって」

「了解。じゃ次は来週のカラオケオフかな? 広木さんも来るみたいだから頑張

  んなよ!」


物覚えもいいし、仕事は出来るんだけど恋愛事は不器用なんだよねぇ~

まぁ可愛い妹分の思いが成就できる様、一肌脱ぎますかねw

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る