61st / 乳飲み児の思いで

 おくるみを縫ったことが二度ある。ダブルガーゼの布製で、姪たちのものだ。もし冬だったなら極細ウールで編んでいただろう。考えると少しうっとりする。私は子を生まないが、手芸が好きだ。たぶん、乳児も幼児も好きだ。おくるみなんて手作りしても、ほんの一年使うくらい。若しくは白い繊細なレース編みのベビードレス。それを手編みして母になったひとを知っている。そんな苦労する編み物を着られるのもつかのま。

 私の母が「これだけは捨てられない」と小さな黄色い長靴を見せたことがある。きっと私が履いたもの。それもつかのま。

 母が子を愛するのとは別の心で、母たちは赤ん坊と過ごした日々を大切に抱き続けているような気がする。


(Tw300字ss第六十一回お題「包」)

 2020/02/01

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る