2020年書いたメモやプロット

瑞闇〈風〉神気烈 2章


妖を操る術のことを師ロイ・アッシュラーグは、妖術と書き、イヅナと読むと教えた。


その不思議な音の響きはニホンという国の音らしい。

私はニホンには行ったことがないから、又聞きだが、怪物が何もかも破壊する前は軍人の総司令官であるショウグンが国を支配し、ミカドという皇帝を傀儡にし、サムライソードマンとイヅナウィザードが支配階級として君臨していたらしい。

妖術使い(イヅナウィザード)とは魔法使いの一種でヨーカイと呼ばれる幻獣を使徒したり、その力を借りて魔法を使ったりする。

妖術使い(イヅナウィザード)の他にも陰陽師(オンミョーウィザード)という大陸由来の魔法使いや、仙人(センウィザード)という不老不死の魔法使いもいたというものだから驚きだ。


師であるロイは魔法、呪術、神聖術、法術、星占術、陰陽術、黒魔術、妖術、霊術、白魔術、仙術、氣、降魔術とありとあらゆる魔法を使うことが出来たが、仙人に達して仙術をマスターしてわかったことだが、仙術による不老不死は不完全なものであった。

あくまで仙術による不老不死の不死の部分は仙術のための空間、仙郷があることを前提とし死後、仙郷にて復活をする。

不老にしても、一見不老にしか見えないような速度でしか、歳をとらないというだけで確実に歳をとっていた。


ゆえに師であるロイは爺さんとなり、私と会うたびに若干シワが増えていた。



仙術で海面に立ちながら水面(みなも)に移る自らの姿を眺める。

フリルの沢山ついた黒いドレスに身を包み、対照的に肌と髪は白い。

目は魔法的に青く光り、背は低くかった。

不老不死になった当時より若くなっている。なった当時は30代、今の容姿的な年齢は12、3歳程度。

吸血鬼っていうだけで怖がる人間もいるからこれくらいの方が丁度いいのだ。

吸血鬼は怖いが、子供だし大丈夫だろうと、人間は単純で楽だ。


それに比べて魔法使いは魂とか精神そういうスピリチュアルな眼を持つものだから、私が少女の姿だろうがボディービルダーとかコミックのヒーローのようにゴリムキマッチョだろうが同じように恐れて逃げる。失礼なやつらだ。

本気で避けられてたらな泣くが、悪ふざけで逃げているようなので、まあ許す!


いやあ、1000年近く生きている吸血鬼の器は違うなあ!



いつまでもこうしてボーとしながら考え事をしていたいような気もするがいかんせんなんセンスだ。

遠くに見える人工物の集合体。地上にあるから多分人間の町だろうが、そこに行きたい。

しかし、仙術で海面浮き立ちながら走るというのは、優雅ではない。

伝承の吸血鬼の真似してほかの吸血鬼たちと『我ら吸血鬼、夜の貴族なり』とか悪ふざけをして仲ではあったが、自分を貴族だとか思って言っているわけではない。


魔法使いたるもの、優雅であれ。

と師が言っていたので、それに習っているだけだ。


一番は吸血鬼固有の魔法で瞬間移動をするのがいいが、あれは夜の力を借りたものであったし、夜が明けなかった以前は気にもしなかったが今は日が照っている中、不確定要素が多いから違う方法を選びたい。


と、なればスマートでインパクトがあるコレしかないな。


私は相棒の黒い槍を振り返って吸血鬼の怪力を持って全力で島に向かって投げた。


音速に達した槍はソニックブームを撒き散らして爆音と水飛沫を上げながら飛んでいった。





久しぶりの日光に感動、吸血鬼になってからは初めての太陽の光に当たって見るものだが、悪くない。

吸血鬼っていうものだから、光に弱いとかなかった。

だけど、悪くないであってよくもない。

やはり月に繋がった異界の力を使っている所為なのか食い過ぎで胃もたれしているような気持ち悪さがある。


月を封印しても夜が明けなかったというのに、今はこうもなっているのを見るに相当な年月が経過しているのではないだろうか。

もしかして魔法使いはもういないとか、吸血鬼の存在が忘れ去られているとか、あるんじゃないか?


そうだとしたら……。

仕方がないよね。体から噴き出す黒い瘴気をみてまあ、普通の人間というのは無理かも知れないけど、と呟いて隠居するしかないかぁ……と口に出さず、落胆した。



さっきの潜水服の人物をみて心配になったのだ、人間に超能力という魔法でも仙術でもないような法則を持たない概念の力が目覚めた当初、"超"能力の名前にふさわしく強大な力を持っていた。


液体を操る能力の持ち主は、必要もない杖を掲げ『俺モーゼwww』と言いながら海を割り、狭間を操る能力を持つ人間とは殺し合いに発展して軽く3桁は殺された。

そんな人間がごろごろいたもので、潜水服なんて着ずとも海底の調査くらいできるはずだ。

そもそも水の中を行動する能力を持たずとも魔法使いに便利な魔法の道具(魔法具)を借りるなりすればいい、それをあんな人間しかいなかった時代に使っていたようなものを着て調査にくるなんて…………。



ーードンッ!



槍が島に着くまでの間考え事をしていたが、どうやら無事着弾したらしい。


「よし、あとは!《仙術:避来"槍"》」


一種で景色が入れ替わりクレーターを作って地面に突き刺ささっていた。音速でクソ重い槍なんか投げたとしたらし下手すると地中に沈んでしまっていたかも知れないが、そこは魔法の出番だ。

常時発動の障壁の魔法は強い衝撃を受けると発動する。常時発動とは言ってもこちらの意思でオン、オフ設定は出来るが。


優しく突き刺さり展開された球体状の障壁の魔法により地面が吹き飛んでクレーターができてしまったが、インパクトも重要なのでこれくらいやってもいいだろう。


仙術の力で槍の隣に転移すると、遠巻きに建物の陰に隠れながらこちらを見ている人間と、遠くから空を飛びながら駆けつけてくる陰が見えた。

空飛んでルゥ!あれは超能力者!やったね!


突き刺さった槍を引き抜いてその場で霧状にし、体に取り込んだ。

簡単な話、魔法で怪物の体を材料に作った槍だが、これを妖術で式神化しているのだ。式神化することで簡単に出し入れできたり、複製して召喚も出来る。

ニホンがあった時代に生きていれば本物の式神召喚が見れたというのに。


自分の足元をみて、そういえばドレス以外来ていなかったと思い出した。

別にいらないが形式美というやつで靴と靴下、帽子に手袋を瘴気から生み出し纏う。

背中から翼を生み出して空に舞い上がると向かってきた超能力者に向かって飛んだ。顔が見える距離までくると向こうは驚いて空中に止まっていた。

細縁のメガネにネクタイとシャツ、なんだが会社員のようだ。懐かしいなぁ。

メガネが作れるような時代になったか、豊かになってものだ。

おっと感動している場合ではなかった何か言ってやらないと。

魔法使いとは違って超能力者を含めて人間は直接口に出さないと会話が出来ないんだった。


「これはこれは、私に何かようかな?」



全く白々しいというか、自分でやっておいてひどくなめている態度だが、ほかになんて言えばいいかわからないからこれでいいや。


「き、君ぃ!何を考えているのかね!許可のない超能力の使用は禁止されているってわかっているのか!?」


なぁーにそれ


「知らんなぁ」


「知らないわけ無かろう!ここを何処だと思っている!」


「知らんなぁ」

だって知らないんだもん!ああああああああああああ!


「馬鹿にしてるのか!はっ、まあいいついてこい」


「おっ、歓迎してくれるの?」

飯でも食わせてくれるのだろうか?


「あ?いいからついてこい(歓迎だと?なんて好戦的なやつだ……)」


なんだ、やっぱ違ったか。途中で私のことを気づいて目覚めたお祝いでもしてくれるのかと思ったが。

あ、そうだ、ついてこいとか言ってたしせっかくだからついて行ってやろう。

つまらなそうだったら暴れて逃げればいいか。


「私、ルナ。あんたは?」


「は?」


「名前だよ、な・ま・え。名前がないとか言わないよね?」


「アイザック(何処までもふざけた奴だなんなんだこいつは……)」


「アイザックニュートン?」


「誰だそいつは(ニュートン?こいつの知り合いの名前か?)」


「天才科学者だと思う……たぶん」


「なんだその曖昧な答えは(たぶんって……はあ、あーあ、さよなら俺の有給休暇)」


「ごめんね?」

有給休暇?懐かしいなぁ!ええ!社畜じゃねえか、おい!

かぁー、またこんな世界が来るなんてなあ、魔法使いと超能力者がいれば働かなくていいってのに、どんな世界でも働くんだな人間は。


「何を謝ってるんだ、今更環境破壊した件を悪いと思ったか?」


「いや、有給休暇だったんでしょう?」


「んんッ!?はっ……いや、そんな馬鹿な(おかしい、いや本音が漏れていたのか?)」


「本音が漏れていたんじゃないの〜?」


心を読みながらカラカラと笑って隣を飛ぶ。

目の前で手を叩かれた時の猫のような顔をしたアイザックはわたしから距離をとって構えた。


「何者だ………………。(心を読む能力者はたまにいるが、目の前の女はなんだ?!それだけじゃない空を飛ぶ能力、黒いもやを放つ謎の能力、あと、武器を出し入れする能力もあったか?)」


「魔法使い、って言ったら……どうする?」


「魔法使い?それはあれか、 箒で空を飛んだり鉛から金を作ったりするあの……」


「箒では空を飛ばないけどね、あ、金を作るのは錬金師だよ。」


「……(魔法使いだと?魔法使いなんていう名前が使われていたのはめちゃくちゃ昔の話だぞ、1000年とか800年とかそこらだろ。教科書で習ったくらいじゃないか)」


え?そうなの!?魔法使いって今言わないの?何名前変えてんだよ。


「あー、アイザック。聞いてるかアイザックニュートンくん」


「俺はそのニュートンじゃないぞ」


「ここでゆっくり立ち話もいいけど、君の家に呼んでくれてご飯をご馳走してくれてもいいんだよ?」


「何故だ」


「ニュートンくんがなんであの場に駆けつけたのか知らないけど私についてこいっていったでしょ、それに今ちょっと疲れてるんだよね。だからさ、ゆっくり出来るところでお話しようや、へへへへ」


「ニュートンっていうな(……なんかスケベ親父みたいな笑い方だな)



おかしなことをするんじゃねえぞ、出来るっていうんなら家に呼んでやってもいい」



「やったー!」

ダメ元だったけど、ついてるな!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る