SCP-2999-JP『アノマリー・ハラスメント』って、結局何なの?

        どうかお願いだから、私たちをいじめないで。


2020年02月15日。この日、SCP財団日本支部職員全員が待ち受けていたであろう、SCP-2000-JPが決定されました。これから繁栄していくだろうSCP-2000-JP以降は大体███個ぐらい削除記事でるんだろうなー、とか思いながら今回解説するSCPは、SCP-2000-JPコンテストに参加した中で見事に2位の栄冠を手にしたSCP-2999-JP『アノマリー・ハラスメント』(1位も書くのはちょっと……面倒くさいかな……)。

灯が人気になってた中、僕が最初に読んだSCP-2000-JPコンテスト参加作品です。

それでは、行ってみましょう。


OCオブジェクトクラスと特別収容プロトコル


OCは堂々のKeter。まあ、SCP-2000-JPコンテストに参加している上にKeterなので、中々に癖がありそうだな、と思ったそこのあなた? おめでとうございます、その通り。

このSCP-2999-JPは、今まで雇用されてきたSCP財団職員の全員が対象と成りえます。そして、財団職員として雇用された人たちには、財団で仕事する時に大変重要なである職務遂行能力と、SCP財団に対する絶対的な忠誠を全員が理解しなけれななりません。

SCP財団が職員を雇用する際には、例えば人種、国籍、 年齢、思想、歴史、文化、宗教、配偶者の有無、身体的特徴、生物分類学的階級、基礎ヒューム値、潜在的ミーム素養、生死等の諸々を理由に面接で落としたり、肉体的および精神的攻撃、疎外、過大または過小な要求、プライバシーの過度な侵害などの行為(イジメとか)はしてはならない、と決められています。

まあ要するに、くだらない理由(生死はそれに入るのでしょうか?)で差別したり、人権無視などはしてはいけませんよ、という事です。もしそれに違反している人を発見した場合、匿名で倫理委員会に連絡が入り、適切ながとられます。

倫理委員会とは、SCP財団において、それが果たして倫理的に大丈夫かどうかを判断するところ(結構無視されがち)です。

ちなみに、全ての財団職員は死亡後に焼却処分という、親の仇でも取るのかよ、と思うぐらいの処置をとられます。もしこれが無理なら、SCP-2999-JPを任されている人が直接どうにかしたり―――例えば破壊だとか遠隔処理だとか―――をする必要があります。

そんな事をする際にも倫理委員会は口煩くちうるさく登場してきて、これらの調査をするのには倫理委員3名以上の同意を受けてからでないと実行できません。倫理は大事だからね、うん。


☆説明


そんな結構厳格な処置を受けるSCP-2999-JP。一体何なのかというと……一旦、人事の話をしなければなりません。

SCP財団における人事というのは、いわゆるバスケットボール宇喜田博士だったり唐揚げ虎屋博士に見えたりカワウソ川瀬丸従業員だったりお馬さんエージェント・馬頭琴だったり【人外】が多いわけです。あなた、SCPの人事ファイルを見て最初はこう思いませんでした?


SCP


このSCP-2999-JPはそこに注目しました。まあ、SCP-2999-JP書いた人虎屋博士自体が唐揚げに見える異常性を有しているので、多分その人もSCP-2999-JPなんじゃないでしょうか?(すっとぼけ)

それで、SCP-2999-JPが最初にSCP-2999-JPとして認知されたのは19██年から発生したSCP財団の異常雇用現象群の総称……つまりカワウソを雇ったり、バスケットボールを雇ったりしてしまう事全体を指している訳です。なので、例えばカワウソを雇っていたら、そのカワウソはSCP-2999-JP-███という書き方で指定されます。

最初のSCP-2999-JP、つまりSCP-2999-JP-1は19██年の7月に確認されました。そいつは財団で仕事をする能力も無ければコミュニケーション能力も無い、しかして同僚や上司にはキチンと『いやぁ、今日も仕事頑張るねぇ!』なんて認識されていた、生物学的には異常の無いただの犬です。何でイッヌがそんな事になっていたのかは分かりませんでしたが、他にも探せば色々出て来てしまいました。やれ爬虫類エージェント・カナヘビだとか、やれ頭足類相良研究員(タコやイカの類)だとか、挙句の果てには宇宙人濃霧院博士まで雇っていました。

もちろん、これらは直ぐにO5(SCP財団で一番偉い人たち)に報告され、人事データベースと照らし合わせた結果、本部はもちろん、フランス、日本、韓国、中国、ロシアなどなど、色んなところに人外がいた、という事が分かりました。しかも、原因は何なのかというのも今のところ分かっておらず、19██年1月、SCP財団はこの異常現象に対し、これらをSCP-2999-JPにして管理する事を決定しました。てぇへんだ、てぇへんだ! という事で、取りあえずは『人間だけを雇用してね』という旨が追加されました。え、でもそれ当たり前じゃない?


☆インタビュー記録 19██/1/██

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

対象: サイト-8181管理官

インタビュアー: 倫理委員(████)

<録音開始>

倫理委員: あなたの管理サイトでSCP-2999-JP-█を雇用した際、それが不適切な事案であるとは気がつかなかったのですか?

サイト-8181管理官: いえ…たしかに見た目には難があるとは感じていましたが、職務遂行においては瑣末な問題であると考えていたため、選考事由には含めていませんでした。


【どう考えても犬猫には仕事出来ないと思いますけどね。瑣末ではないと思うのは僕だけでしょうか?】


倫理委員: イカやサンショウウオ、カワウソなどが、職務を遅滞なく遂行できると思ったのですか?

サイト-8181管理官: あまりはっきりと記憶しているわけではありませんが、おそらく、その時はそう思いました。実際に彼ら…それらがいる部署では、職務上の問題は発生していませんでした。

倫理委員: それは他の職員が共同で作業していたためでしょう。あれらが単独で職務を遂行した事実は、一件も記録されていません。

サイト-8181管理官: 記録を見返すとその通りです。しかし、意図してそのようなシフトを組んだことはありません。

倫理委員: では、彼らは雇用から現在に至るまで、何ら職務に携わっていないにも関わらず、偶然にもまったく問題なく職務は全うされ、それを誰も問題視しなかったと。

サイト-8181管理官: そうです。

倫理委員: わかりました。では他に何か、職務上で気になることなどはありませんでしたか?

サイト-8181管理官: 特には…いや…強いてあげればですが…

倫理委員: 何でしょう。

サイト-8181管理官: か…それらは、職場の士気向上という点においては、他の財団職員より有能でクールでした。


でした、ねぇ……。まあ確かに、イカやサンショウウオは別として、カワウソが職場に居たらさぞ可愛いでしょう。士気向上はしますね】


倫理委員: 記録しておきます。

<録音終了>

終了報告書: インタビュー中の監視記録の分析の結果、サイト-8181管理官に精神変容やミーム汚染の痕跡は認められなかった。その後のカウンセリングにおいても、精神失調およびその他の異常性は認められていない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まあ、ミーム汚染で無かったという事は、単純に―――今回で言えばサイト管理官の―――頭がおかしかっただけで片づけられますが、この現象はSCP財団以外では全く発生していないらしいです。例えば東弊重工とか日本生類総研とかの要注意団体にこの現象が発生していない事を鑑みると、SCP-2999-JPはSCP財団オンリーらしいです。


☆追記 19██年3月██日


さて。ここまでは【人外】がメインでしたが、19██年3月██日。この日、なんと人型のSCPが雇用されているのも確認されました。つまり、今までカワウソとかだけだったのに、とうとう人が指定され始めたのです。まあ例えばミーム媒介者、現実改変者、クラス4変態能力者などのガチSCPが雇用されていたらしいです。SCP財団は直ぐO5に連絡し、またしても人事データベースにガサ入れした結果、多くの異常存在が雇用されている事実が確認されました。てぇへんだ、てぇへんだ! という訳でまたしても雇用条件が変わり、『SCPみが深いのも雇用しないでね』となりました。あ~あ。え、でもそれ当たり前じゃない?


☆収容記録 19██年3月██日


この日、SCP-2999-JP-██が収容違反し、以下はそれらを文字に起こしたものです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<録音開始>

機動部隊チャンネル: 突入3秒前、2、1、GO!

監視カメラ映像: [悲鳴]

【ちなみに、SCP-2999-JP-██が監視カメラ映像に化けて悲鳴を上げている訳ではありません。一応、念のために】


機動部隊チャンネル: 全員その場に伏せて!我々は…

監視カメラ映像: [悲鳴]

機動部隊チャンネル: [罵倒][銃声]伏せて!容疑者逮捕の妨害をした者も拘束します!

監視カメラ映像: 撃つな!投降する!

機動部隊チャンネル: SC…[罵倒]、おい、スキップ!その場に伏せて頭の上で手を組め!


【SCPと直接言うのは気が引けるのか、SCiPスキップ(SCPの愛称……と言って良いものか)と呼んでいますね】


監視カメラ映像: こうか?これでいいか?

機動部隊チャンネル: 伏せろと言っているんだ!

監視カメラ映像: やっているぞ!

監視カメラ映像: [皿が割れる音]

機動部隊チャンネル: [銃声]

監視カメラ映像: [悲鳴]


【監視カメラ君は悲鳴あげてばっかですね】


機動部隊チャンネル: [銃声]撃ち方やめ!やめろ!くそ、散らばっちまってどれかわからん。ありったけ回収しろ。本部、掃除屋をよこしてくれ。

<録音終了>


終了報告書: 同店で回収された料理の中から、SCP-2999-JP-██(████博士)の一部が発見された。発見された部分の質量と構成から考えて、SCP-2999-JP-██は知覚できない状態ですでに死亡しているものと判断された。また通報により駆け付けた一般の警官により、偶然店内に居合わせた指名手配中の████容疑者が逮捕された。目撃者には記憶処理が施され、公的にはカバーストーリー"テロリストの逮捕劇"が流布された。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

なんとびっくり、テロ犯が偶然居合わせたおかげでカバーストーリーが楽になりましたね。SCP-2999-JP-██も殺せて一石二鳥だ!

はい、そんな呑気な事を言ってられる余裕も無く。今回は偶々運が良かっただけで、財団ではこんな事が普通に起こってしまっている訳です。もしテロ犯が居合わせてなかったら、それはそれは、ねぇ?


☆追記 19██年4月██日


人外、SCP、じゃあ次は何かというと、皮膚が緑色だったり、筋肉モリモリマッチョマンの変態だったり、人型の異常存在です。ていうか、今までと比べて見た目が違うだけで、『なんだそんなものか』と思うかもしれませんが、皮膚が緑色の人がそこらへん普通に歩いてたらどうします? 僕は通報します。

こいつ等も今までと同じく直ぐにO5に連絡され、またもや人事にガサ入れをすると、先ほどの人型SCPと同じく普通に同僚として認識されていました。てぇへんだ、てぇへんだ! という訳で、『今まで見たことない程変な奴も雇わないでね』という雇用条件になりました。え、でもそれ当たり前じゃない?


☆インタビュー記録 19██/4/██

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

対象: SCP-2999-JP-███


インタビュアー: 倫理委員(████)


<録音開始>

倫理委員: インタビューを始めます。エージェント・エディ・マ…いえ、SCP-2999-JP-███。あなたのその身体的異常、具体的には皮膚の色素異常は、いつ、どのようにして獲得したものか、お答えいただけますか?

SCP-2999-JP-███: これは生まれつきです。サイト管理官も、あなたも把握していましたよね。

倫理委員: 生まれつき、異常性を有していたということですね。ご両親や、親戚はどうです?

SCP-2999-JP-███: 両親も祖父もいとこも同じです。

倫理委員: つまり遺伝性の異常性であるわけですね。

SCP-2999-JP-███: 遺伝性ではあるでしょうけど、私はこれが異常だとは思いません。私の家族も、異常だなどと思ったことはないでしょう。肌の色なんて、人種や住んでいる地域、個人でさえそれぞれ違うものですし、私とあなたでさえ、すこし個人差があるだけだと、私は考えます。

倫理委員: 自覚のない異常性と記録します。

SCP-2999-JP-███: ですから、異常ではないんです!これが自然なんです!

倫理委員: わかりました、あなたがそのように主張したことを記録しておきます。

SCP-2999-JP-███: だから!もう、なんなんだ!いったいこれはなんだ!?今までうまくやってきたじゃないか!なんで今になって、俺のキャリアや人間性まで、たかが肌の色を理由に全否定されなきゃいけないんだ!?おまえみたいな青っ白い肌が正常で、俺みたいなのは異常だなんて、だれが決めたんだ!!


【確かにその通りですね。これは流石に人種差別問題ですかね】


倫理委員: 落ち着いてください、SCP-2999-JP-███。

SCP-2999-JP-███: そんな風に呼ぶな!俺は財団のフィールドエージェントだ!おかしいだろこんな!これじゃまるで、スペインの異端審問だ!


【スペインの異端審問というより魔女裁判に近い感じがしますけど】


<録音終了>


終了報告書: 対象が異常な興奮状態を示したため、インタビューは中断された。SCP-2999-JP-███は保安部員により沈静化されるまでの2分間、大声を上げながら全身を。SCP-2999-JP-C実例は身体のみならず精神構造についても通常の人間と異なる可能性があるため、より詳細な調査計画を検討する。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

いやー、流石に全身を緑色に発光させ続けるのはどうかと思いますけどね。これは人種差別とかでは無く普通に怖いでしょう。しかも遺伝。シェル・ザ・ノーリミットかよ。


☆追記 19██年5月3日


あれ、この日だけちゃんと日付書いてありますね。それはそれとして、この日はSCP-2999-JP実体が全財団職員の1.2%を超えたデーらしいです。笑えないし祝えない。

現段階でSCP-2999-JPは、財団の理念である『確保、収容、保護』に基づき全個体収容されています。しかし、まだまだ増え続けるおそれのあるSCP-2999-JP実体に対し、保護し続けるのは限界がある、という事でSCP-2999-JP実体を終了コロシする事が提案されていますが、倫理委員会を交えた意見が進められています。また、SCP-2999-JPの血縁に関しては『あいつもやべえぞ』と監視が続けられています。遺伝の関係もあるかもしれませんし、そうなるとその人もSCP-2999-JP実例ですからね。


☆事案記録2999-JP-█


とうとう事案記録が出ました。

19██年6月██日、サイト-81██に所属する相葉博士が、SCP-2999-JP-1761(!)を終了させました。これは倫理委員会の許可も取らずに勝手にやってしまった事で、相葉博士も即時に精神調査を受けましたが、SCP-2999-JP実例と成り得る証拠はありませんでした。彼はその後罰せられる予定でしたが、健康上の理由で取りやめとなりました。以下は相葉博士が事案を起こす前にスマホに残したボイスメッセージです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

19██年6月██日、私、相葉██は、娘である██、いまやSCP-2999-JP-1761となったモノを処分することにした。誓って言うが、私や、アレの母は、普通だった。アレの姉妹も、私の両親も、みんな普通だ。アレだけが、ああだったのだ。きっとこの記録は倫理委員会に提出されるだろう。だからここに記録しておく。どうか、私の家族に、これ以上干渉することをやめていただきたい。あの娘にもだ。SCP-2999-JP-1761? [罵倒]…いまのは不適切だった。撤回する。しかし、頼む。もうおしまいにしてくれ。あの娘をもう許してやってくれ。だが、これを見ている君たちにそれができないことは、よく知っている。彼女は二度と自由には戻れない。君たちは正しい。財団職員としての私も、それが適切だと考えている。だから、父親としての私が、ケリをつける。もうこれ以上、 彼女の尊厳を冒さないでやってくれ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そう。実は、このSCP-2999-JP-1761と相葉博士はだったのです。相葉博士は、自分の娘が何の謂れもない罪を被せられ、魔女裁判や異端審問もかくやというモノに掛けられ、SCPとして記録されてしまう事に耐えられなかったのです。ならば、自分でをつけたかったのでしょう。こうして、相葉博士はSCP-2999-JP-1761と名付けられた自分の娘を、自らの手で【終了】させました。ああなんて事か。財団とは、冷酷ではあるが、残酷では無いはずなのに。


☆事案記録2999-JP-█


さて、SCP-2999-JPの本当に恐ろしい所はここからです。

SCP-2999-JP-1761もただでは死なないようで、SCP-2999-JP-1761を冷凍保存中、いきなり目や耳から血とか髄液垂れ流しながら『アメイジング・グレイス素晴らしき恩寵』を歌い始め、歌い終わりと同時に急速に腐敗してしまいました。今回の事案を受け、『他にもやってみるべ』とSCP-2999-JP-7、SCP-2999-JP-26、SCP-2999-JP-199で実験をしたところ、どれもSCP-2999-JP-1761のように『アメイジング・グレイス』を歌い始めました。その実験結果により、SCP-2999-JP実体は『アメイジング・グレイス』を歌い終わるか、強制終了させると急速な腐敗を開始させます。今のところ、人型SCPとか動物を除けば、SCP-2999-JP実体と普通の研究員は見分けがつきません。つまり、対処の仕様が無いという事です。

アメリカでは葬式の時に流す『アメイジング・グレイス』とSCP-2999-JP実体に、何か関係はあるのでしょうか。


☆事案記録2999-JP-█


19██年6月██日。████研究員が殉職し、その死体を搬送中にいきなり『アメイジング・グレイス』を歌い始めました。柩を思いっきり跳ね除けて出てきた為、付添いの職員が軽いけがをしてしまいました精神的にも負ってそう。████研究員の遺体はその場で強制終了させましたが、████研究員とSCP-2999-JPとの関係性は全く分かっていません。まあどうやら████研究員は変な性的嗜好を持っていたらしいですが、それがSCP-2999-JPと関係が有るのかは分かっていません。


☆事案記録2999-JP-██


事案が多すぎると思ったそこのあなた! もうこれで事案は終わりです。

19██年7月██日。サイト-██管理官であったJ・ステイサム管理官(どっかで聞いたことあるな……)が死んだ時もまた『アメイジング・グレイス』を歌いましたが、J・ステイサム管理官はサイト██内で嫌われていたようで、今回の事案でも葬式の参列者には一種のジョーク(流石に悪質すぎるだろ)と受け取られたらしく、『バカやってんじゃねー!』と大ブーイングを受けてしまいました。

後日、ステイサム管理官の遺品整理の際、虹色の光沢加工がしてある紙に『確かにCoolだけど、ここまでやるかフツー?』と書かれたメモが発見されました(このメモは、J・ステイサム管理官とマーガレット・テイラー博士[サイト-██勤務]を主人公とした恋愛小説の原稿にテープで貼り付けられていました。筆跡鑑定行った結果、小説はステイサム管理官の直筆と判明しましたが、メモの筆者は判明していません)。Cool、ねえ。

☆追記 19██年7月█日


事案終わりました。今度は追記です。

この日、████研究員が無許可でSCP-2999-JP-1687、1057、1888を終了させ、更には4体目まで終了させようとして、逆に機動部隊に終了し返されました。この████研究員は常日頃同僚に『お前はSCP-2999-JP実体じゃないよな!?』と猜疑心の塊みたいな感じになってて、最近は常に怯えたり警戒していたらしいです。例えばあなたの職場にSCPがいたり、ましてや自分がSCPに成りえると考えたら……気が狂いそうになるのも分かりますよね。ちなみに、████研究助手の遺書には、自分がSCP-2999-JPなのでは無いのか? と考え続けてしまい、かといって他人に相談すると通報されてしまうので、自己の完全な死をもって自身が人間であることを証明する、という主張がされていました(この部分とJ・ステイサム氏の小説バレの部分は普通は見えないようにんですよね……虎屋博士も人が悪い)。

SCP-2999-JP-1687と1888は身体に異常こそあれど『アメイジング・グレイス』を歌わなかった事から、『普通』の人間であった事が考えられます。まあ████研究員は歌ったんですけど。あ~あ。


☆追記 19██年8月█日


またもやSCP-2999-JPに成りたくないと願い続けてる人が死にました。

████研究助手が勤務中のサイト-██で中庭に火を点け自己終了したのです。直ぐに機動部隊が呼ばれたものの、もう既に遺体はボロボロだったので蘇生はしませんでした。あくまで、████研究助手がSCP-2999-JPじゃなかったから蘇生しなかった、とは言いません。

以下は████研究助手のデスクから発見された、遺書と思しきものです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

私は人間です。私は間違いなく人間です。私は、腐りかけた血液や糞尿を垂れ流しながら歌ったりしません。したくありません。私は、綺麗に死ぬと思っていました。たとえ理不尽であっても、死は尊厳あるものと思っていました。あれは、私たちに許された最後の神聖さを踏みにじるものです。私はあれになることを認めません。もし私が焼け残っていたら、すぐにもう一度火葬してください。私は人間であり続けたいのです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

████研究助手はSCP-2999-JP実体だったのか、そうでは無かったのか、と言うのは記述されていません。しかし、おかしいとは思いませんか?

SCP財団という、異常存在を『確保』『収容』『保護』するのが目的の施設が様々な異常存在の雇用を容認していたり。

今までこんな事は無かったのに、急に起こり始めたSCP-2999-JP実体の異常行動が散見されたり。

そして、サイト-██管理官であるステイサム氏やサイト-8181管理官に関連している『Cool』の4文字……。

思わず、Are We Cool Yet?俺たちはクールだったろ?と問いかけてしまいそうですが、まだまだ書くべきことはたくさんあります。なので、それらは後述します。


追記 19██年8月█日


未だにSCP-2999-JPと普通の人間の見分け方は確立されていませんが、とうとう財団側もおかしくなり始めました。

なんと、複数のサイトで自分の同僚や上司をSCP-2999-JP実体だ、として通報する事案が発生し始めたのです。しかも『あいつ頭おかしいっすよ!』という理由で通報が入る割には、精神病理学(そのまま、精神病を解析する学問)上全く問題が無く、ほとんどは『単なる人間』として判断されました。また、財団の雇用条件に『倫理的にヤバい奴はちょっと……』という旨のモノも上がっていますが、これらは倫理委員会によって全て棄却されています。例えば、


1.肉食を極端に拒否する

2.子供向けのテレビアニメに欲情する

3.同性の身体的特徴に執着する

4.休日中に10時間程度連続でコンピューターゲームを行う


等はSCP-2999-JP実体に成り得ません。1はベジタリアンだったりヴィーガンだったりしますし、2はまあ……ね? 3もLGBT上の問題で、4も僕がいつもやってる奴なんで、これ等は大丈夫です。つまり僕はSCP-2999-JP実体では無い可能性が高いです。ヤッタ!


☆追記 19██年9月█日


SCP-2999-JP実体について『早く全員収容しろ!』とサイト-███で集会を開くための講堂利用が申請されましたが、勿論却下。理由としては、集会自体には異常性こそないものの、SCP-2999-JP実体を全員排斥はいせきさせる運動や、この集会に出ない事自体がSCP-2999-JPだと疑われる事からです。これじゃあ承認出来ませんね。

『おい倫理! お前らがSCP-2999-JP実体なんじゃないのか!?』と疑いも掛けられましたが『は?(倫理ビームピチューン。一人死ぬ)』で終わりました。委員会なのになー。


☆追記 19██年10月█日


未だにSCP-2999-JP実体とその他の見分けがついていません。普通の人をSCP-2999-JP実体として倫理委員会以外が通報するのは、例え非公式でも許可されていません。


☆追記 19██年12月█日


何と、何と何と。この日、財団は何を思ったかSCP-2999-JP。何故そうしたのかというのは詳しく書かれていませんが、倫理委員会、SCP-2999-JP調査委員会、O5の共同声明のお蔭らしいです。多分、数が多すぎたんでしょうね。コストもかかり過ぎたんです。

また、財団はSCP-2999-JPのアフターケアもしっかりさせます。まず、昇格や昇給の際『そういえばお前SCP-2999-JP実体だったよなぁ? はいダメー』とするのは違反対象となり、更にはイジメなども許されません。

しかし、全ての職員は死んだ後すぐさま火葬されなければならない規則を見ると、SCP-2999-JPがExplainedやNeutralized指定された訳でもありません。なら、一体何故、指定が解除されたのでしょうか?


☆以下、考察につき。


と、その前に。アメリカ本部の要注意団体であるAWCYAre We Cool Yet?の説明をしなければなりません。この団体は主に美術系のSCPを作成しますが、こいつがSCPを作った後のお披露目方法は、所謂【ゲリラアート】と似たような感じで、いきなりポンッ! と出現します。ここでもし認識災害でもばら撒かれたら……もうお分かりですよね?

そんな奴らが関わっているのです。僕が考えられる可能性としては2つ。1つは、


・SCP財団がSCPだと思っているのはあくまで『異常存在の雇用』である。しかし、AWCYはSCP-2999-JP実体をアートとして作った。


という事です。カワウソを喋れるようにしたり、筋肉モリモリマッチョマンの変態を作り上げるのは、あいつ等なら容易にできます。AWCYは昔から財団と因縁の中にあり、今回もその因縁の一例だと思われます。しかし、AWCYも自ら作ったアートが死後体液を垂れ流しながら『アメイジング・グレイス』を歌う事までは予測出来ませんでした。だからこそ『確かにCoolだけど、ここまでやるかフツー?』とメモを残したのだと思われます。

しかし、財団はAWCYの意図に気づかず勘違いしたまま指定を解除してしまった、という訳です。裏付けに、SCP-2999-JPはミーム汚染とも現実改変とも認識災害とも書かれていません。これはAWCYがいちいち作ったんでしょう。非現実的ですが。

もう1つとしては、


・特に深い理由は無い。『いやだって、サイコーにクールじゃん?』としか思ってない。


僕としてはこっちの方が有力ですけどね。クレイジーサイコなあいつ等なら普通にありえます。

また、今回のSCP-2999-JPの失態は『財団が疑心暗鬼になりすぎた』というのもあります。そのせいで████人が収容され、████人が死んだことか……。


☆締め


さて、ここら辺で締めましょうか。1万文字超えたのは多分初めてじゃなかろうかと思いますけどね。でも、あなたはよくここまで読み進めました。その努力は素晴らしいと思います。

そして、覚えていますか? このSCPのタイトルは―――



        SCP-2999-JP『アノマリー・ハラスメント』



まあ……例え異常性だろうが人権はある、って事でしょうか?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

CCクリエイティブコモンズライセンスに準拠。


http://ja.scp-wiki.net/scp-2999-jp『アノマリー・ハラスメント』

著者:dr_toraya


http://ja.scp-wiki.net/author:ukit『宇喜田博士の人事ファイル』

著者:ukit


http://ja.scp-wiki.net/author:dr-toraya『虎屋博士の人事ファイル』

著者:dr_toraya


http://ja.scp-wiki.net/author:tenten-518『川獺丸かわうそまる従業員の人事ファイル》』

著者:tenten-518


http://ja.scp-wiki.net/author:kuronohanahana『エージェント・馬頭琴ばとうきんの人事ファイル』

著者:kuronohanahana←SCP-1286-JPでもお世話になった人。あざす!


http://ja.scp-wiki.net/author:tokage-otoko『エージェント・カナヘビの人事ファイル』

著者:tokage-otoko


http://ja.scp-wiki.net/author:hyoroika09『相良研究員の人事ファイル』

著者:hyoroika09


http://ja.scp-wiki.net/author:kankan『濃霧院のうむいん博士の人事ファイル』

著者:kankan

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る