SCP-001-JP『二者択一』って、結局何なの?

          一つを助ければ、一つは助からず。



どうも、今回はSCP-001-JP『chuukunnの提言‐二者択一』です。

『初心者殺し』として有名なSCP-001系統ですが、二者択一に関してはまだわかりやすい方ですししまいっ! とかに比べれば

OCオブジェクトクラスは未定。前回も定まっていなかったような気が……。


【新着メールが5件届いています。必ず確認してください】


おっと、メールが5件も来たらしいですね。この内容が、今回解説するSCPの内容となっています。早速ですが、1件ずつ確認していきましょうか。最初は【先日の会議の最終決定について君は、「確保、収容、保護」という財団の理念を覚えているか?】ですね。どうやら……


【先日のO5会議においてSCP-001-JPのオブジェクトクラスが決定されなかったため、O5評議会内における多数決で決定されることになりました。

O5-13である貴方様には投票権があります。

以下の4件のメールに目を通してください】


どういう事かって? そう、今回はO5-13、【第4の壁】的にいうと、にはこのSCPのOCを決定出来る投票権があります。

わざわざ投票で決めるとは、それ程OCを決めづらいのでしょう。さすがSCP-001-JP。

それでは、行きましょう。


☆SCP-001の異常性


このSCP自体は████枚の付箋ふせんです。なんだ、付箋かよって思ったかもしれません。でも、このSCPに名前を書くと―――例えばKakuyo・Mooreカクヨ・ムーアとでも書きましょうか―――。更に、その人が死亡・生存しているかは全く関係ありません。取りあえず出来上がるのです。複製された人物、SCP-001-Aには付箋に記入される直前の記憶が有り、。例えばあなたの名前が書かれたら、どうなるんでしょうか?

今のところ命令に背いた記録も無く、マジのガチで忠誠を誓いまくってます。これだけなら勿論Thaumielです。

し・か・し。ここまで来るとSCP財団も流石に怪しいと思ったのか(正しい)、一応このSCPに対して『任務遂行能力調査』と称して、念の為ガサ入れをしてみた訳です。そうするとなんと……。


1.SCPの探知/発見/管理能力の異常発達

2.安全を重視して行われた収容違反時に対する迅速な対応と再収容

3.自身がほぼ死亡すると確定している実験への参加

4.元の人物を基調とし、攻撃性など財団の業務を妨げる性格の飛躍的改善

5.元の人物の知識を完全に所有し、それを用いた業務が可能

6.元の人物と出会った際、即座の「自分が偽物である」という発言


あらま、中々素晴らしい能力が盛りだくさん、という事が分かりました。何かのSCPが収容違反した時や、要注意団体が攻めてきた時には全力で対抗する。6番目も割と重要ですしね。突然出会ってどうやらSCP財団は、対SCPや対要注意団体として、超優秀なモノを見つけてしまったらしいです。

まあ、まだまだ普通に怪しいですよね。そこで、このSCPがどこから来たのかも一緒に調査しました。すると、まあやっぱりと言うべきか、ウラが見つかりました。

そのというのは、、という事です。

……あー、まあ、そういう事ですね。日本生類総研というのは、知ってますよね。

あの異常性を持った生物を作って売ったりしているあいつ等です。

更に追い打ちをかけるように、このSCPに対しての『来歴・詳細調査結果』にはこう書かれています。


7.日本生類創研内部でSCP-001-JPを使用していた痕跡

8.当該施設は現在廃墟となっており、内部は酷く荒らされた状態である

9.日本生類創研はSCP-001-JPの製造に関わっていない

10.SCP-001-JP-A同士での会話における未知の言語の使用

11.実際の人間との差異が見られず、本人の証言以外での区別が不可能である

12.生成時に元の人物が死亡していたSCP-001-JP-Aの攻撃性の増加


あらまー……。これは、死にましたね。いつもの安全と思わせての、って奴です。まあ使わなければいいので、このままだとSafeクラスオブジェクトですね。誰ださっきThaumielなんて言った奴は! 

そして、10番は割とヤバいです。財団はこの言語を認知出来ない上に、『ただの会話だ』と言われたら止める事も出来ません。いやまあ、普通に7番と8番がぶっちぎりでヤバいですけどね。

まあ要するに、このSCP使ったら、施設が廃墟になったと。

もしかしたら他の生き物のせいかもしれませんが、ここまで来たらこのSCPのせいですよね。他の生き物でも十分ヤバいんですが。だってこの対SCPで防げなかったんですよ? 

さらーに悪い事に、こんな事実も判明しました。


13.SCP-001-JP-Aが最も忠誠を誓うのは元となった人物である(命令の優先も同様)

14.SCP-001-JPを用いた自己繁殖が可能であり、実験中のSCP-001-JP-Aが自己繁殖に対し喜ぶような様子を見せた

15.SCP-001-JP-A同士の殺害およびSCP-001-JPの破棄を拒否


そう、このSCP、結局は『財団』に忠誠を誓うのでは無く、あくまで『元の人物』なのです。だからもし、財団職員が別の組織に寝返ったら? その上で14番の自己繁殖を使われたら? そして、SCP同士の殺し合いも出来ないと来ました。

14番単体で見ても、こいつ自体相当強化されたSCPだからそんなもの増やされたら普通にサイトが崩壊しますね。

しかし、まだまだ財団のガサ入れは終わりません。何とかこのSCPを使おうと調査を必死で続けました。すると、何と朗報が舞い込んで来ました。ヤッタネ!


16.当該施設内部および周辺でSCP-001-JP-Aが発見されていない

17.SCP-001-JPの使用は週に1回程度であり、重大な事故に至る可能性は極めて低い

18.SCP-001-JP-Aの監視記録より、積極的にSCP-001-JP-A同士で会話をする様子が見られない


うーん、何か今までの異常性に比べて反論は少し弱い気もしますけどね。後、ここでいう『当該施設』は、当然日本生類総研です。そこで発見されてないなら、多分このSCPのせいで廃墟になったという訳ではなさそうですな。

まあでも、このSCPは基本的に使用頻度も低く、今まで対SCPとか素晴らしい身体能力とか言ってきましたが、会話して情報交換して無かったらマジで意味がないんです。そして、このSCPは『元の人物』に忠誠を誓うのなら、『元の人物』が所属しているSCP財団に対して反乱を起こす訳有りません。

Thaumilは、SCP財団にとってどこまでも実用的でどこまでも有用的なのです。例えば人類を一からやり直させたり。

そんなこんなで、O5達は『これをThumielにすべきだ』『いやSafeにすべきだ』と大喧嘩して、結局決まらなかったのです。

取りあえず、ここまでの調査はなんとかなりました。まあゴタゴタ言ってますがね、インタビューしたら新たな真実が出てくるかも知れないじゃないですか、という事で記憶処理させたDクラスを元に、以下がSCP-001-JP-Aを作りインタビューを行った結果です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

対象: SCP-001-JP-A-1


インタビュアー: ██博士、███博士


付記: SCP-001-JP-A-1は事前にEクラス記憶処理記憶抹消剤を施したDクラス職員を元にしている。


<録音開始>


██博士: それでは、インタビューを開始します。まずは███博士からですね。


███博士: では、SCP-001-JP-A-1。まず、あなたの来歴について述べてください。


SCP-001-JP-A-1: はい。私はあの付箋紙から生まれました。██ ██様によって捲られたのが先週のことです。


███博士: なるほど。他の付箋紙との関係はあるのですか?


SCP-001-JP-A-1: 関係…ですか?生まれる前には意識などはなかったので、他の付箋紙との意思疎通は図れていませんでした。


【どうやら、付箋から人間の複製になってから初めて他の個体との意思疎通が可能になるらしいですね。まあ、人間で言うとまだ生まれる前なんで、当たり前といえばそうなんですけど】


███博士: そうですか。では、現在他のSCP-001-JP-A個体と何を話しているのかを教えてください。


SCP-001-JP-A-1: そ、それは……黙秘、は出来ませんよね。


███博士: 貴方には話す義務があります。


SCP-001-JP-A-1: は、はい。あれは、危険因子の排除のために行なっているのです。私たちの中には稀に危険な思想を持つものが存在するため、早い段階で考え方を修正していくのです。


【いくら安全と言っても、普通に危険思想を持った奴はどこにでもいるんですね。考えを修正とは、どうするんでしょうか?】


███博士: ……もし、話し合いができなかった場合は、どうなりますか?


SCP-001-JP-A-1: ………しょ、しょぶ……[嗚咽]


【こういう事です】


███博士: 分かりました。それでは、続きの質問は██博士が担当します。


██博士: はい。まず、あなた方が財団に忠誠を誓う理由を教えてください。


SCP-001-JP-A-1: は…はい。私たちは、元となった存在が最も忠誠を誓っていたもののために行動します。ですので、会社員であれば会社に、教師であれば学校に、そして財団職員であれば財団に対して忠誠を誓うのです。


██博士: そうですか。では、それに反するような行動は起こさないのですね?


SCP-001-JP-A-1: はい!私共は、たとえ火の中水の中、誠心誠意、財団のために行動することを誓います!


【元気いっぱいですね。財団に対する忠誠度は依然として高いままですが、でもさっき危険思想持ってる奴もいるって言ってましたよね?】


██博士: 良い元気ですね。忠誠心が見られます。では次に、日本生類創研について知っている事を述べてください。


SCP-001-JP-A-1: は、はい……あれは、確か、研究員の一人が、特殊な、ほ、芳香を放つ植物の研究中に、じ、事故が起きて、それで…


【あら、何か重要そうな事知ってますね。なんだ、それのせいで廃墟になっただけかと。いやーよかったよかった、あいつらバカだなーと。


██博士: 落ち着いてください。分かりました。それではあれはあなたたちのせいではないということでよろし…


███博士: [遮って]待ってください。なぜ、あなたは日本生類創研について知っているのですか?先ほどの質問で、他の個体と意思疎通は図れていないと述べていたはずですが。


【そう。███博士のファインプレーのおかげで判明しましたが、このSCPは先ほど、付箋の時には他の個体と意思疎通出来てないと、そう言ってましたよね。じゃあなんで知ってるんでしょう?】


SCP-001-JP-A-1: え、あれ、な、何ででしょう?なんというか、日本生類創研という名前を聞いたら、自然にその事件が思い浮かんできたんです。


███博士: どうにも不自然ですね。追加調査を要求します。


<録音終了>


終了報告書: 追加調査の結果、インタビュー後に生成された個体を含め、全SCP-001-JP-Aが同様の記憶を持つことが判明しました。SCP-001-JP-A個体は、少しのことであれば一般的な情報伝達手段を用いず互いに意思の疎通が可能であるようです。 - ███博士

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

……ハハッ。もう笑うしかありませんね。あーあ。悪い事ならばいくらでも考えられます。しかもこのSCPが実はウソを吐いていて、『実は俺たちテレパシー出来るんすよwww それで個体同士で情報交換しまくってまーすwww』なんて事が起こっていたら目も当てられません。

このSCPは、本当は忠誠を誓うをしているだけでは? 本当は日本生類総研をぶっ壊したのは自分たちなのでは? 本当は……と、疑い始めたらキリがありません。こんなオブジェクト、Thaumielとして運用なんて出来る訳ありません。

ああ、折角Thaumielで実用可能だと思ったのに。


なんて、


確かに、このSCPを叩いたら無限にホコリが出て来そうですが、危険思想を持った個体は早急に処分されるそうですし、何よりさっきの考えにはがありません。この法治国家日本に置いて『疑わしきは罰せず』なのです。

そう、全ては財団の妄想に過ぎません。

SCP-001-JPは、本当に【有能】なのか。

SCP-001-JPは、本当に【危険】なのか。


……と、ここまでが2通目のメールとなっています。そして、3通目がこちら。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

☆SCP-001-JPについての提言 - ██博士

私は、このSCPを使用するべきであると進言します。

思い出してください。私たち財団が、今まで異常物品の「確保、収容、保護」のために犠牲となった人々の事です。

Safeクラスオブジェクトの異常性の調査のため、何人の命が犠牲となったのでしょうか。

Euclidクラスオブジェクトの回収のため、何組の回収部隊が犠牲となったのでしょうか。

Keterクラスオブジェクトの収容違反のため、いくつのサイトと人命が奪われたのでしょうか。

当然、SCP-001-JP-Aを財団の業務すべてに利用することはできません。しかし、小規模な、例えばインタビューやSCPの観察、Dクラス職員としての使用であれば、財団は危険性を即座に認知し、収容違反を未然に防ぐことが可能です。もしSCP-001-JP-Aが組織的な収容違反を起こし、Kクラスシナリオを引き起こす引き金となる可能性があれば、即座に使用を停止します。SCP-001-JP-Aは支配者にはなれません。

私の同僚であり、親友であった██ █という職員をご存知でしょうか。彼は、ようやく研究員という地位に就き、これからの業務を何よりも楽しみにしていました。世界を救うために活動できることの喜びを噛み締めていたのです。

彼は、亡くなりました。SCP-███-JPとの接触中に発生した収容違反によって。

彼がSCP-███-JPのインタビューをしている最中に、何か事件があったのでしょう。

SCP-███-JPは発狂し、彼を引き裂きながら収容室を出て、警備員2名を殺害し、そのままエージェント・██、█博士など数十名を殺害したのです。彼らの命と引き換えに得られたものは、たった180秒の会話ログです。どう見ても釣り合わないでしょう。

もし、この実験をSCP-001-JP-Aが実行したとしたらどうでしょうか。SCP-001-JP-Aならば、オブジェクトの危険性に素早く気づき、実験の即時中止を要求し、このような事態を避けることができたでしょう。また、たとえ失敗したとしても殺されるのはSCP-001-JP-Aです。私たちのたった一つの命は守られるのです。これは「リスク」ではなく「進歩」なのです。

即刻、SCP-001-JPの業務上使用許可を申請します。 - ██博士

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

██博士は、本当にSCP財団という組織を愛していますね。これからのSCPの収容違反に対し、SCP-001-JPの特性の一つ、【SCPの探知/発見/管理能力の異常発達】を使えば全てを回避出来る、と。親友の死とDクラスの死を前に、██博士は、このSCPを【使用】するべきであると考えたのです。

そして、こちらは4通目。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

☆SCP-001-JPについての提言 - ███博士

私は、このSCPを使用するべきでないと進言します。

SCP-001-JP-Aの危険性は未知数であり、全員が同時に反乱を起こしても不思議ではありません。「SCP-001-JP-A」と「元となった人物」の判別法は存在せず、何らかの理由で入れ替わる危険性があります。さらに、SCP-001-JP-AがSCP-001-JPの異常性を認知していることより、自己増殖によるSK-クラス:支配シフトシナリオ(所謂、人間から動物が支配者になったりした場合。この場ではSCP-001-JPが人間に代わり新しい支配者になるのでは無いか、という事)の危険性が存在します。探検など限定的な場合のみ使用するとしても、そのリスクは見過ごせるものではありません。

よく考えてください。我々は世界のために異常物質を確保し、収容し、保護しているのです。

決して、個人の命が軽いと言っているわけではありません。しかし、世界の価値と比べれば、数十人、数百人の命のためにそのリスクを受け入れるのはあまりにも非合理的です。

我々は、個人の命よりも、何よりも、世界の安全のために活動しているのです。

リスクを受け入れる必要はありません。これだけで十分な理由たり得ます。

即刻SCP-001-JP-A個体を処分し、Safeクラスオブジェクトとして収容するべきです。 - ███博士

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

███博士もまた、SCP財団という組織を愛していますね。███博士は財団の理念である確保、収容、保護を、たかだかちょっとの人間を守る為に無視するのはありえないと言いました。だからこそSCP-001-JPはキチンとSafeクラスとして【収容】されるべきだと。そう、我々は、世界の安全の為に日々異常存在と闘っているのだから、今まで通り研究を続ければいいじゃないかと、言いたい訳です。


もちろん、2人のどちらの意見が正しいかと言うのは、あなた……O5-13の、考え次第です。

あなたがSafeに投票した場合、このSCPはもう日の目を見る事なく、ずっと金庫の中にしまわれます。

あなたがThaumielに投票した場合、このSCPはしばらくの実用期間を要しますが、それさえ終われば、財団の人物やDクラスの複製など、実用化が可能となります。

あなたはどちらに、投票しますか?


CCクリエイティブコモンズライセンスに準拠。


SCP-001-JP chuukunnの提言 - 二者択一

by chuukunn

http://ja.scp-wiki.net/chuukunn-s-proposal

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