最凶の魔法使い、魔術の世界へ転生する! ~古代語魔法に不可能はなし!?~

海川山男

序章

プロローグ

 銀の弾丸によって、召喚した多数の悪魔が消滅していく。


「王国め、これが"銃"という新兵器か。やっかいだな。儀式を急がねば」


 ゲルイド・シンフォニーは王家公認魔法使いだ。

 いや、"だった"と言うべきか。


 長き人生による英知により王に助言したり、古代語を操り魔法を使い問題を解決したり、時には召喚した悪魔の軍勢を率いて敵国と戦ったりしてきた。

 だが、それも今は昔の話。

 不老の魔法により幾代もの王を見てきたが、今代の王は愚王だった。

 臣の話を聞かず、民を蔑ろにし戦争に明け暮れる。ゲルイドも進言したが聞き入られなかった。


 だがしかし、別にゲルイド自身は特別正義感が強い訳でもなく、魔法使いにありがちな自分本位な人間だったため、王が距離をとるならそれはそれで魔法の研究の時間が取れると喜んだ。


 しかしそれが過ちだった。

 傲慢な王は場合によっては一騎当千の力を持つ魔法使いを疎ましく思っており、そして内心では恐れていて、魔法使い狩りを兵に命じた。


 まずは力のない研究一筋の魔法使いたちが処刑された。

 次いで野良の魔法使いたちが不意打ち同然に各個撃破されていった。


 しかしその頃には残った魔法使いたちが憤り、合流し、悪魔の軍勢を召喚し、王国と魔法使いの戦争に発展していった。

 悪魔の力は凄まじく、王国の兵では最弱の悪魔一体に対してでも五人でやっとという有様で、そこに魔法使いによる魔法が飛んできて王国の兵は数を減らしていった。


 しかし王国側の人間は魔法使い側に比べて、悪魔の軍勢を入れても圧倒的に数が多く、このまま戦争は長引くと思われた頃、"銃"という新兵器が登場した。


 それは海を渡った遠い国からもたらせられた物であり、その存在が王を魔法使い狩りという凶行に走らせたものでもある。

 その"銃"の解析が終わり、王国中の鍛冶師による生産が開始されたのだ。


 "銃"とは弓よりも遠く飛び、剣よりも強く鎧を貫通する、戦争の在り方を変える、魔法ではない魔法の兵器。

 弾丸は一般用の鉛玉の他に、対悪魔用に魔法使いの弱点とされる銀を使用したものまで。

 これには魔法使いたちも参った。

 なにせ鉛玉程度では魔法使い本人はまだしも、前線の悪魔には大して効果がないと思っていたら、銀の弾丸数発によって悪魔は打ち取られ、勢いそのままに魔法使いもハチの巣にされたのだ。


 そして魔法使いたちは一人、また一人と倒れていき、今では我関せずと僻地で一人研究を進めていた、元王家公認魔法使い、"最凶の魔人"と呼ばれたゲルイド・シンフォニーだけとなった。

 そのゲルイドの元にも銃を手に持った王国軍の魔の手がせまり、多数の強大な悪魔を召喚し、時間稼ぎをしている今に至るという訳だ。

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