第5話 メイド、危険視される

「・・・・・・遠山くん」

「・・・・・・はい、遊李さん」


 とあるVR空間内にて。テレビ大の画面が複数ある中、その一つを〝終わった〟顔をしながら見ている男二人がいた。椅子に座っていた彼らは、何かの間違いなのではないかと繰り返し見る。

 画面に映っているのは、薫子──メイドリスだ。


「遠山くん。これは想像できたかな?」

「できるわけがないでしょう」


 二人は、驚いていた。なにせ、本来絶対に出てこないであろう裏種族をメイドリスはランダム選択で出したのだ。しかも、


「え・・・・・・なに、あの種族は」

「ええ・・・・・・。ランダム選択の代償として、初期に貰う500SPがすべてなくなるという仕様にしていますが、1000SPもあげちゃうなんて。それに、SP1ポイントでSTRが10も上がるなんて」

「確か、この種族の設定したのって、宮本だったよな」

「ええ、先月、お母さんが入院するからと長期休暇を取りましたよね」

「うちの会社、社員に対して緩すぎるからなぁ。休みたければ休めるんだよな。後で仕事が増えるし、有給使わなきゃ給料入ってこないけど」


 と話ながらも画面を見ている。


「あれ、チュートリアルがないんだけど」

「ほんとですね、ちょっと聞いてみます」


 遠山は手元にある薄い青色をしたパネルを操作する。


「あ、遠山です。今、P1《ピーワン》に映っているメイドリスのキャラメイクでチュートリアルがなかったので確認してください」


 そう一方的に言う。彼は今、喋ってメールを打ち、リアルで待機している社員に送ったのだ。


「遠山くん」

「なんですか──って、バグですか」

「想定外の種族選んだからだろう。転移場所がずれたんだな」

「これは、こちらからアイテムを贈って処理しましょう」

「それがいいな」

「ファンウルフに会ったようですね」

「レベル5だな。ルーキーにはキツイだろうよ──」

「・・・・・・倒しましたよ。しかもワンパンで」

「ちょっとステータス見てみるか」

「そっすね」

「・・・・・・遠山くん」

「ええ、これはどういうことでしょうか」

「いや、STRがめちゃくちゃあがったんだから当たり前だよな」

「只人の初期STRが50なので、それにポイントをふってもここまでにはなりませんよ」

「当たり前だ。中か上級プレイヤーのステータスだと思う」

「あ、メール来ました。『宮本さんに確認したところ、そういう仕様です。とのことでした。あと、ステータスの上がり具合が異様に早いから。とのことでした。』ですって」

「宮本ぉぉぉおおお!!」

「メイドリスは危険ですね」

「ああ、危険だ」


 宮本のせいなのにもかかわらず、危険視されたメイドリスであった。

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