第3話「見物」

 その町は外来の一時滞在者を何かと優遇してくれるから、バウチャーでも見せびらかして歩くがよいと教わったが、混雑するメインストリートに辿り着いたものの、勝手がわからない。

「こちらへどうぞ。前売り券をお持ちですか?」

「いいえ」

 係員はミシン目に爪を立て、割り印を押したチケットを切って寄越した。思いのほか、料金は高い。案内されたのは白壁の塔。螺旋階段を上ってバルコニーへ。巡行が始まった。

 不協和音、空砲、悲鳴、拍手、紙吹雪。山車だしを牽く人、群がる人、少し離れて見守る人。放水、しかし、それはすぐに蒸発して、高みの見物を決め込む我々をも熱風に巻き込んだ。

 先導者のかねの合図を待っていた数人が沿道から飛び込む。巨大な山車に跳ね飛ばされて宙に舞う者、あるいは血飛沫を上げて轢死する者……。

 怒号、落花、歓声、硝煙、狂喜乱舞。




*雰囲気画⇒https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/hu3mgp86

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