君と話すのに何が必要なんだろう

電話、メール、SNSと、コミュニケーションのツールは質量ともに進化を続けている。

でも、チャットの手段が増えるほど、テレビ電話の解像度が上がるほど、「伝わらなさ」への苛立ちや寂しさは募るばかりだ。私達は有史以来、最も孤独な人類なのかもしれない。

本作に登場するのは<ウィスパー>と<エコー>という「ヒト」ではない二人であり、彼(または彼女)らが持ち合わせているコミュニケーション手段は、我々から見れば不自由極まりないものだ。

しかし、彼らはそれを嘆くことはない。自分の思いが届くこと、相手の気持ちがわかること。その事実に純粋な驚きと喜びを感じている。その姿は、私の目からは羨ましいものに見えた。
もしかすると、私達が求める最高のコミュニケーションには高度な道具も、高尚な表現技法も必要ないのかもしれない。

本作の登場人物たちと同じく、宇宙に浮かぶ孤独な存在である私達が、他の誰かとつながる喜びを再認識できるかもしれない一作。

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