第2話 異世界転生してたみたい

崖から転げ落ちる俺。


生まれてから今までの事が走馬灯の様に甦る。

生まれてから・・・。

記憶に無いはずだけどな。


日本で生まれて近所の幼稚園、小学校、中学校に通って、平均的な高校、大学を卒業。

コンピュータのソフトウェア開発の会社に入社して・・・?


何だこの記憶。


深夜残業の帰り道。

歩行者信号は青。

疲れ果てて、とぼとぼ横断歩道を歩いている。

赤信号を居眠り運転で進むトラック。

跳ねられた。


その後、この世界のスラムで生まれて・・・。


俺って異世界転生者だ。


今の今まで転生前の記憶は無かったが、こんな時に記憶が甦るとは。


記憶が甦ってすぐ死ぬのだろうか?


下を見る。


スローモーションの様に転がり落ちていく。


下にはぷよぷよとした何か。


スライム!


転生前の記憶でも、転生後の記憶でもあれはスライムと認識された。


ちょっと大きめのスライム。


スライムのぷよぷよがクッションとなって、どうやら助かったらしい。


ついでにスライムの方はダメージを吸収する限界ギリギリだったみたい。


勿論、限界でアウト。


レベルアップのメッセージが流れた。


転がったので、あちこち怪我をしているが、ひとまず命は助かった。


スライムの核が壊れて小さい魔石が見えたので拾って置く。


しかし、俺ショータは可哀想だ。

もしこんな生活が日本であったら、間違いなくアウトでしょう。


良く今まで死なずに頑張ったよ。


魔法が使えないくらい何だ!


俺が何とかしてやる。

まあ、自分のことだけど。

どうにか出来るのか?


幸い、ゲームとまんがとアニメは得意だ。それにつけて異世界ファンタジーの小説も読み込んでいる。


魔法の練習は孤児院で陰から見てた。

具体的なイメージが大事らしい。


俺に魔法の素質が無いのは分かってる。


さあ、どうする。


・・・。


どうも出来ないな。

諦めて取り敢えず町を目指そう。


崖の下に来たのは生まれて初めて。

町へのルートが分からない。

サバイバルだなぁ。

先ず、水が必要か。

川だな。


耳を澄ます。

川のせせらぎの音が聞こえる。


怪我した身体を起こし立ち上がる。

痛みに堪えながら歩き出した。


びびりで臆病なショータの記憶も受け継いでる。

いくら転生前の記憶があっても、全身怪我の状態で歩くのは極限状態。

この山には魔物がいることが分かってる。

警戒しながら一歩一歩川のせせらぎの音に向かって歩く。


厭な気配が後ろから・・・。

後ろを振り向く。


ゴブリン!


小さな悪魔。

緑っぽい身体。上半身裸。

魔物の腰巻。裸足。

手には木の棍棒。

ギョロッとした目。

鋭い牙、爪。

2本の角。

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