第3話 たかさき君とは関わりたくねー。

「事件の概要がいようは……ニュースと同じ内容か。小学校低学年の女子児童が、帰宅途中の公園で刺されて死亡。そもそも、誰が殺されたか分かんないよ。被害者のプライバシーで報道規制もされてるしさ。低学年って、どこまでの事を言うのさ?」

「仕方ねえだろ。大々的に発表したら遺族も大変だしよ。無用な混乱は避けたい。一般人には、もやっとした情報で十分だろ。ああん? 学年か? 別にいいじゃねーか?」


 ……気まずそうに口ごもったか。


 なるほどね。可能性が高いのは――


「殺される前に。性的暴行でも?」

「ちっ! 相変わらず、勘が良すぎて気持ち悪い奴だな。エスパーでも使えるのかよ?」


 どいつもこいつも超能力だの。


 だだの演繹法えんえきほうもどきだろ。


 知らんけど。


「……で、殺害方法は心臓を一突き。刃物の長さはナイフぐらいだろうと鑑識が言ってたな」

「ふーん。被害者に防御創ぼうぎょそうは特に見受けられずか。ま、抵抗なんて中々難しいからね。犯人の遺留物は……あるんだ。前科者とのDNA検査は……やってる途中ね」


 それからめぼしい情報は。


 目撃者や不審者情報も無し。


 うわー、詰んだ。


 この情報から犯人を見つけるのは、ほぼ不可能だな。


 今の所は。


「このままだと未解決事件にノミネートされちゃうぜ? 目撃者が居ないし。犯人像もさっぱり。生殖機能を有してる男性が犯人なのは分かったけど」

「……だよなあー。犯行時間帯は夕方にも関わらず、誰も犯人を目撃してねーしよ。とにかく、粘り強く聞き込みするしかねーか! アナログ捜査も馬鹿になんねーからよ!」


 なるほど。情報不足を補うために。


 たかさき君まで巻き込んだのか。


 勝手に捜査する愚か者だもんね。お疲れちゃん!


 あの黒タイツ弁護士ちょろいなー。


 何が極秘情報だ。


 今となっては、俺の方が情報持ってるじゃないか。


 やーい、ざまあ!


 うん? 待て待て!? タイムを要求する!? 


 落ち着こう、俺!?


「被害者が犯人に暴行された事実は、知ってるよね!? 今日のたかさき君は凄くまともだったから!? 冷静沈着クールビューティーでさ!? 悲惨な事件内容なのに、きっと精神修行でもしたのかな!? お寺にでも修行したのかも!? なむあみだぶつ!?」


 そ、そうさ! 修行の成果って奴さ! 


 力をコントロール出来るようになったんだ!?


「……言ってねーよ。なんせあの咲嬢さきじょうだからな。知れば捜査の陣頭指揮でもやり始めるだろうな。警察署内でも信者が多くてよ。あれで彼氏も居ねえみてーだから、なおさらな」


 ふざけんな!? どこが魅力的なんだよ!?


 暴君だよ!


「だから、あいつ弁護士だからね!? 監察制度機能してますか!? 警察署が乗っ取られてますよ!? 絶対、自分から事件に関わろうとするよ!? 暴走モード確定じゃん! 関わりたくねー!」

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